【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり
Vol.63 釜山国際映画祭からお届け!『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ
第63回
 
                        (左から)柴咲コウ、伊藤さとり
映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。
新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?
今回は、9月に開催された釜山国際映画祭のOPEN CINEMA部門に正式出品された『兄を持ち運べるサイズに』から主演の柴咲コウさんが登場! 映画祭の感想や撮影秘話などを語って頂きました。
映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。
亡き兄に思いを馳せる家族の4日間
 
    本作は、作家・村井理子氏が実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイ『兄の終い』を、柴咲コウ主演で映画化した人間ドラマ。何年も会っていない兄の死を、警察の電話で知らされた妹が、兄の家族たちとゴミ屋敷と化したアパートを片づけながら、家族について思い返していく。監督は、『湯を沸かすほどの熱い愛』『浅田家!』の中野量太。共演はオダギリジョー、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大ら。
理子(柴咲コウ)のもとに警察から、兄(オダギリジョー)と一緒に東北で暮らしていた息子の良一によって兄が遺体で発見されたという連絡が入る。東北へ向かった理子は、警察署で元妻の加奈子(満島ひかり)、娘の満里奈と7年ぶりに再会する。兄のアパートの片づけを始めた3人は、壁に貼られた家族写真を見つけ……。
自分自身もいろんな発見がある“気づきの旅”のようでした
 
    ── 釜山国際映画祭『兄を持ち運べるサイズに』のOPEN CINEMA部門正式出品、おめでとうございます。
柴咲コウ(以下、柴咲) ありがとうございます。
── レッドカーペットはいかがでしたか?
柴咲 初めての釜山国際映画祭の参加で煌びやかでちょっと尻込みしてしまいましたが、とても華やかで素敵でした。
── 『兄を持ち運べるサイズに』がこうやって釜山で上映されるのはどういう思いですか?
柴咲 やはり国や地域によって家族のあり方は様々だと思うんですけれども、家族を思う気持ちや、その中でもすれ違いがあったりするなど、いろいろな感情が湧き起こるのが家族かなとも思います。
そして、なかなか友達や周りの人にあまり共有できない部分も実はあったり、閉ざされてる部分もあったりすると思います。そういった内面を丁寧に描いている作品なので、これが日本以外の国でも「素敵な映画だな」っていう風に伝わるといいなと思っています。
── 家族愛って言ってもいろんな形があって、憎んでもいいし、そしてまた愛してもいいしって、そういう物語でしたよね。
柴咲 そうですね。なかなか押し付けられないですよね。家族だからこうあるべきというのは言えなくて、色々な家族がいて当たり前で、でもやっぱりそれをどこか共感して欲しい気持ちや、誰かに共有したいという想いってあると思うんですよね。
だから、こういった映画を通じて、実は自分は家族に深い部分ではこういう風な想いを抱いていたんだっていう“自分への気づき”にもなりますし、はたまた、いつも普段はそういう自分のことや家族のことを話さないタイプだったとしても、周りの人とこの映画を共有することによって、自分のそういった深い部分を共有するきっかけにもなるかなと思っていますね。
 
    ── そして、オダギリジョーさんがお兄ちゃん役で滑稽なシーンもたくさんありましたけども、共演されてどうでしたか?
柴咲 やっぱりこれはオダギリさんにしかできない役かなって思います(笑)。監督が「兄ちゃんはオダギリさんしかいない」と思ってオファーしたというのを聞いたんですが、その佇まいや空気感を目の当たりにして、私もその通りだなと思いました。
── 思わず笑っちゃったとかはなかったんですか?
柴咲 そうですね。オダギリさんのあの独特な空気感の中でちょっと滑稽な兄の、例えば柔道着を着て自転車を漕いで車と並走していたり、あの何とも言えない表情だったりとか(笑)。でも、やっぱり後半になるにつれて、真に迫ってくるというか、そういう感じもあってさすがだなと思いました。
── オダギリさん演じるお兄ちゃんの元嫁が満島ひかりさんで、共演シーンも非常に多かったですけれども、役を通してどんなことが印象に残っていますか?
柴咲 本当に久しぶりに再会するシーンから始まって「今日から撮影よろしくお願いします」っていう感じで「あぁ、久しぶり!」って言うシーンから撮ったんですが、私の立場(理子)からすると、兄と距離が近いわけではなかったことと、(満島さん扮する加奈子が)その奥さんで、しかも、兄とは離婚しているっていうところでちょっと疎遠になっているはずなんです。でも、やっぱり一度そういう形を持って近づいたという独特な空気感がひかりちゃんとだと醸し出すことが自然にできました。
だからこそ、近づいた時にふっと自分たちの本音が出て、ぶつかり合うっていうシーンもあるんですけど、そういったこともすごく自然に演じられたなっていう感じがしました。謝るでもなくてなんとなく仲直りしてるみたいな(笑)。それもある意味、家族のあり方だなとも思いました。
 
    ── 出来上がった作品で興奮したシーンや好きなシーンはどこですか?
柴咲 後半にそれぞれが兄と対峙するようなシーンがあるんですけど、そもそも脚本を読んだ時点であそこは書いてあるものを読んだだけで自分以外のシーンで泣いちゃってたんですよ。
実際それが映像になった時に、特に子供たちのお芝居が作ろうと意気込んでやったというよりは、それは中野監督の器量なのかなとも思うんですけれども、本当に自然にお芝居をしていて、その子供たちの純粋な目というか、空気感というか、佇まいで、そのセリフを聞いてグッときましたね。
── 撮影も結構地方でずっとロケだったと伺っています。何か印象残っていることはありますか?
柴咲 これも中野監督のこだわりで、本当のモデルとなったお兄さんが暮らしていた宮城の場所で撮りたいという想いが強くあって、割と長い間そこでロケをすることができたんですけど、やっぱり実在のお兄様がそこにいたんだという、そういうことってやっぱり心理的にも結構大きいなと思っています。実際にお兄さんと喋った職員さんのお話とかも聞きながら「お兄さんがここで本当にこういう役所でこの方とお話をしていたんだ」と感じながらお芝居することができたので、それはすごく大きかったなと思いますね。
 
    ── 実在する原作者の村井理子さんを演じることはなかなか難しかったと思うんですけど、1番難しかったところはどこですか?
柴咲 でも、私自身が村井理子さんと共感する部分が結構あって、どこかドライなところがあるんですよね(笑)。家族に対しても、1番近い人にほど意外と本音が言えてないみたいなのがあって。
私は今回、この役を演じて自分の性格に気づいたんですけど、多分周りの方が私のことを知っているかもしれないってぐらい触れてこなかった部分というか、家族との向き合い方は結構不器用だなっていうのに気づいたというか。
「愛してる」みたいなこととか直接なかなか言えないですし、「気にかけてるよ」っていうのもなかなか言葉にして言えないし。そういうことに気づかされたので、あまり難しいっていう風には思わなかったですね。
── 本当に気持ちが分かる方が多かったのかもしれないっていうことですか?
柴咲 本当に“気づきの旅”のような、自分自身もいろんな発見があって、まだ自分の知らない部分があるなって気づかされた作品だったなと思います。
いろんな他人がいるところでこの家族の物語を観た時に、劇場に集っているそれぞれの人に家族があるんだなって思ったら、不思議な気持ちになりそうだなっていうことを監督が仰っていて、私も劇場でちゃんと観たいなと思います。
『兄を持ち運べるサイズに』
11月28日(金)公開
(C)2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
データ
  YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
  https://www.youtube.com/channel/UCVYlon8lP0rOJoFamEjsklA
 
               
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