【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり

Vol.68 「すごく身近なことがテーマになってるので、どんな人にも観てもらいたい」『TIGER』野波麻帆

第68回

(左から)野波麻帆、伊藤さとり

映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。

新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?

今回は、昨年9月に開催された釜山国際映画祭の「ビジョン(Vision)」部門にて正式出品され、見事ハイライフ・ビジョンアワード(Hylife Vision Award)を受賞した『TIGER』から野波麻帆さんが登場!

映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。

東京のLGBTQ+コミュニティにおける実体験から着想を得たヒューマンドラマ

本作は、インド出身のアンシュル・チョウハンによる長編4作目で、東京のLGBTQ+コミュニティにおける実体験から着想を得たヒューマンドラマ。35歳のゲイのマッサージ師、大河の物語を通して、年齢を重ねていく同性愛者たちを生々しくも、密に描く。

フリーのマッサージ師をしながら、クラブや出会い系アプリで軽い繋がりを求め孤独な毎日を送る大河。そんな時、姉から父親の癌が悪化したことを知らされ、実家に戻る。そこで、家族の財産分与の話が出てくるが、家族を持たないゲイの弟である大河が平等な遺産を分け与えられる資格がないと思い、彼女が抱える日々の不満が一気に大河にのしかかる。“普通の家族”を求める大河であるが、現実とのギャップに悩み、ある日彼はとんでもない行動をとってしまい……。

「私は最後を知らされてないでずっと撮影をしていて、やっぱり最後を観たときは衝撃的でした」

── 第30回釜山国際映画祭ビジョン(Vision)アジア部門に正式出品された『TIGER』から野波麻帆さんです。よろしくお願いします。

野波麻帆(以下、野波) よろしくお願いします。

── 釜山国際映画祭のレッドカーペットを体験されてどうでしたか?

野波 はい。ちょっと緊張しました。最初、映画祭の中で一番長いレッドカーペットって言われていたのでどんな感じかなと思ったんですけど、歴史あるこの釜山国際映画祭に出席できてすごい楽しかったです。

── 身につまされるようなテーマがいっぱい詰まっていたんですけど、その内容を読まれてみた時はどう思われたんですか?

野波 実は私は最後を知らされてないでずっと撮影をしていて、「麻帆には言わないから、自分の知ってるところまでしか渡さない」って。それがアンシュルのやり方で、最後までどうなるんだろうと思っていて、やっぱり最後を観たときは衝撃的でしたね。

私はあれを観てて、途中から完全に愛の映画、人間愛、家族愛の映画だなと思って。人って結局は生きてる中で男女関係なくもう愛でしかないっていうことを描いてるんだと思って観ていて、すごいだんだん悲しくなってきたりとかもしてたんですけど、でもあの衝撃的な最後があるので、それが私はすごく好きだったんですね。

アンシュル・チョウハン監督

── 野波さん演じるみなみさんが、私もこうだよねって思うくらいの……なんなんですかね?

野波 家族ってあんな感じですよね。姉弟ってあんな感じですよね。きっと。

── どうやって役作りしてたんだろうってくらいに生々しかったです。

野波 本当ですか⁉ 本当にアンシュルはとにかくお芝居っぽくしたくないというのがあるので、「麻帆、演技しないでね」みたいな感じで、その場の空気を感じて、「この本を読んでるからこういう風に芝居をするんじゃないかとか考えてこないで欲しい」って言われていました。なのであまり何も考えず、セリフだけをインプットして現場で高志君と挑みました。

実は1番最初にこの作品に入る前に高志君と会って、「好き嫌い好き嫌い」っていうセリフをふたりで言い合って欲しいっていうのがあって、ふたりでずっと「嫌い」をずっと言ってって言われて、ふたりでずっと目の前で「嫌い」を言い合うんですよね。それで、「嫌い」って言って感情が変わったら「好き」って言っていいよって言われて、それを高志君とやった時に初対面だったんですけどもふたりで泣いちゃって。

だから現場で彼はもう絶対信用できるって信じていたので、本当にどうしようかなって全く考えないでできました。

── すごい!

野波 そうなんです。面白かったです。すごいふたりでぶわーって泣いちゃって。あ、この人だったら絶対弟になるし、私はどんな言葉を発してもこの人を愛することができるなっていうのがあったので、それはお互い感じて「大丈夫だね」って言ってそれで撮影に入りました。

── 川口高志さんが今回初の主演になるわけですよね。このチャレンジングな物語で共演すると知った時はどう思ったんですか?

野波 彼らの日常ってどういうものなのかやっぱり私は知らなくて、現実ってこうなの⁉っていうのをあの映画で私は初めて知って。日本の文化でもある新宿2丁目がこうなっていたっていうのを知って私はすごい衝撃を受けました。それはすごく生々しくて、でもそこは一種の多分品格だと思うんですけど、生々しい中でもリスペクトしてるんですよね。絶対的にそこを。だから、ああいう風に映るというか、それがすごく私はいいなと思って観てました。

── しかも、その大河役の川口高志さんがすごく惹きつけられる方で。あの立ち振る舞いというか独特の表情をお持ちになっていて。

野波 そうですね。本当にいいですよね。一緒にお芝居してて、彼だから私は心を動かされてるなって思う瞬間はたくさんありました。

── 小さい娘役の子が本当に演じてないみたいだったんですけど、どうやってコミュニケーション取ったんですか?

野波 私たちはセリフを言ってるけど、その間に勝手に喋っちゃうじゃないですか。そしたらそれに合わせて私たちも喋らないといけないから(笑)。でも、それがすごく生々しいし、それがリアルだし、そこもすごいやっていて楽しかったです。そんなことはドラマとかでは全然できないから。

── 焼きそば食べてるところもね。

野波 そうです。そうです。本当に。「ダメだよ」とか言って「怒ってるの」みたいなことを言っているあれもアドリブなんです。「怒ってないよ」みたいなあれもアドリブです。

── そうかなと思ったんですよ。あまりにナチュラルだったので。あまりにその返しもナチュラルじゃないですか。ちなみに特に忘れられない撮影シーンをひとつあげるとしたらどこですか?

野波 旦那さんが酔っ払って帰ってきて大河に向かってパンチをしたりするとこあるんですけど、あそこもめっちゃリアルだなっていうか、こういうこと、旦那ってやるよねっていう。

── もう性格がそこで分かるんですね。

野波 そうなんですよね。ああいうところとかもすごい好きで、その後に旦那の話とかしたりとかして、ああいうのも家族じゃないですか。すっごく生々しいなと思って、ああいうのをあんな風に描けるのはやっぱりアンシュルなのかなと思ったりとかします。

── 最後にどんな人に観てもらいたいかというのがあれば教えてください。

野波 男女関係なく観ていただきたいなと思うし、やっぱりLGBTQということ、トランスジェネーターが映画のテーマにもちろんなっていますけど、でもそこが表ではなくて、本当に愛の映画なので、人って愛がないと生きれないっていう、本当に身近なところの映画なんですよ。

LGBTQって遠い存在かと思うんですけど、全然そうじゃなくて。だって家族にもしいたら?っていう話だし、だからすごく身近なことがテーマになっているので、どんな人にも観てもらいたいですね。

Vol.68 『TIGER』野波麻帆

データ

YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
https://www.youtube.com/channel/UCVYlon8lP0rOJoFamEjsklA