
透明感のある美しさは、周囲をピンとさせる独特の雰囲気があり、まるで王子様のよう。でもどんな質問にも考えながら言葉を選ぶ姿は、誠実さと年相応の不器用さが垣間見え、なんだかホッとしてしまう。
次世代ダンス&ボーカルグループ・GENICのメンバーであり、俳優としても大活躍の増子敦貴さんの魅力は、そんなアンバランスさにあるのかもしれない。
2022年は、若手俳優の登竜門であるスーパー戦隊シリーズへの出演を無事に終え、作風がガラリと違うラブコメディー『合コンに行ったら女がいなかった話』(大阪・カンテレ/10月20日スタート)に出演。人気・実力共に伸び盛りな彼の、22歳の素顔に迫った。
紳士になろうと意識し始めました!

── まず『合コンに行ったら女がいなかった話』についてお聞かせください。カンテレの深夜ドラマ枠・EDGEで、10月20日から始まるとのことですが(※取材時は9月)超絶イケメンの“男装女子”とのラブコメディーだそうで、すごく斬新! 面白そう。
内容はタイトルのままなんですが、すごく面白いです。冴えない大学生男子が合コンに行きました、でも女がいない……? あれ? みたいな。そしてそこから話が進むかと思いきや、そんなに急展開はないんです。ただその代わり「あの時の合コンのあの人の言動がずっと頭から離れない、これはどうする!?」っていう状態がずっと続いていきます。
── 合コンで出会った男装女子に、恋しちゃうんですね。
男装している、けど女子っていうのは、どっちとも取れるんですよね。「俺は今、男に恋をしているのか? いやそんなワケない」っていう葛藤を抱きつつ、その人自身が本当に好きなんだっていう、発覚に至るまでの物語です。日常系ですね。
── ぶっ飛んだ設定なので、波がある展開と思いきや、実はホンワカしている感じですか?
当の本人たちにとってみれば激動な時間なんでしょうけど、視聴者には見ていてクスッとする場面が多いドラマになっています。
── このような新しいタイプの恋愛ドラマに出ることに、ご自身はどのように感じているのでしょうか。
BLではないけどBLっぽさがあるというのが、この作品のいい所だと思っています。そして男装女子を演じられたお三方は、元宝塚歌劇団の男役の方々なので、撮影以外も本当にカッコいい!「一緒に撮影させていただき、ありがとうございます!」っていう気持ちになりました。本当に華があって、画力もすごいし、見ていて飽きない仕上がりになっています。
── 意外と、男装女子好きな女性は多いですからね。
そうなんですね! でも女性が描く理想を体現していらっしゃるから、当然か……。
── 男装女子イケメンから学んだことは、何かありますか?
女性はやはり、ああいうザ・ジェントルマンが好きなんだなって思いました。それを意識するようにはなったかな? 男装バーでバイトしている蘇芳役の七海ひろきさんだと、サッとドアを開けて「どうぞ」っていうその動作がまずカッコいい。声の質もカッコいいし、眉毛をちょっとクイッと上げての「どうぞ」が、本当に絶妙で。
── 逆に増子さん自身が女装をした場合、どうなるんでしょうね。
やってみたいんですけど、ファンが減らないか心配で。
── 減らないですよ!
なんか多分、可愛くなっちゃうんですよね。美人で。
── きっと美少女になりますね。
だからみんな、「え、可愛すぎる……」って引かないかなと(笑)。
── 喜んでくれると思いますよ(笑)。
女の子はモテのためにぶつかるべし

── ご自身が演じた、イケていないけど合コンに前のめりだった大学生・萩くんですが、どんな役柄でしたか?
「機界戦隊ゼンカイジャー ファイナルライブツアー2022」の時期にクランクインだったんです。ゼンカイジャーでは、世界海賊のゾックス・ゴールドツイカ―役でイケイケキャラ、萩はそれと真逆、本当にひっくり返したような役だったので、振り切れて演じられ、ある意味やりやすかったです。芋っぽさがあって不器用で、でも毎日楽しく過ごしている。笑顔であふれている感情に忙しいキャラクターでした。
── ご自身とぜんぜん違うキャラクターでしたか?
自分自身ともそうですし、自分がやってきた役ともぜんぜん違いますね。ただ僕は芋っぽさを演じるのは不得意じゃないです。自分が上京してきたころを思い出せば、結構すんなりいけます。
── 増子さんが芋っぽかったんですか? 信じられない!
芋っぽかったです(笑)。ドラマでは、結構な芋を演じているのでぜひ見てください!
── 実はカンテレのHPで萩くんの写真を見て、一瞬、増子さんだとわからなかったです。
よく言われます! そもそも髪型が黒マッシュですしね(笑)。あと衣装が絶妙にダサくて、スタイリストさんすごいなって感動しました。でもそんな彼が、恋がしたくて一生懸命になる姿、見ていて応援したくなりますよ!
── 放映が楽しみです。
そうそう、撮影時はアドリブがめちゃくちゃ多くて大変でした。コメディなので、様々な要望を出されることも多くて……。あと萩はセリフがダントツで多いんです。心の声がとにかく多い!
── ダントツで多いセリフ……覚えるのが大変そうです。
セリフを覚えるのに苦労しました。あと撮影と同じくらいナレーション撮りというか、声だけの録音がたくさんありましたね。
── 萩くんの恋の仕方で、共感した部分があれば教えてください。
全くわからないかも。ちょっと手が触れただけでも「え? 何? これってもしかして?」みたいに萩はなっちゃうんですよ。いやいや、お前の勘違いだよって突っ込みたくなる。
── 自意識過剰なんですね。
でも片思いの時期って、ネガティブの感情になりやすい反面、急にポジティブになったりもするじゃないですか。相手の状況によって感情に波があるところは、すごく共感できました。相手からの返信が遅いだけで、すごく不安になったり、みんな覚えがありますよね?
── 確かに! 萩くんはそう考えると、愛すべきキャラクターですね。
現場は、全スタッフから萩は大人気でした。1人余すことなく、推しはオハギ!
── オハギ?
そういうニックネームがもらえる人気者でした(笑)。楽しい現場でしたね。

── ところで、萩くんのようにモテない系男子が、女の子から「いいな」と思われるようになるには、どんなことをやったらいいでしょうか?
う~ん、どういう理由でモテないかによりますよね。でも現状でモテないなら、180度変えてみるっていうのはどうでしょう? 例えば眼鏡をかけている人がコンタクトに変えるとか、短髪なら伸ばしてみるとか、そういうことかな。何か小さなことでもいいから変えてみるのは、みんなが大きく変わる第一歩になりそう。
── 確かに、それがきっかけで自信が持てたりしますね。
あとモテようとし過ぎても、絶対モテない。変な背伸びはせず、自分のいい所を伸ばしていつでもかかってこいや状態、つまりは戦闘モードになる! 迎え撃つ方が勝率高いですからね。
── すごい、カッコいい! では女の子にもアドバイスをお願いします。コロナ禍もあって「出会いがないな~」って悩んでいる女の子っていると思うんです。
出会いがないから彼氏ができないって悩み、最近だと特に多そうですよね。うーん、じゃああれですよ、気になった人がいたら追いかけて、ちょっとぶつかりにいく。
── 知らない人に!?
例えば渋谷を歩いていて、あの人タイプかも、彼氏にしたいと思ったら、こう、行くんです。
── (笑)。
それでトンと転ぶ。まあ転び方次第ですけど、アイスとか持っていたらベストですね。それがグチャっとなっちゃって、「あ、大丈夫ですか?」「アイス、ダメになっちゃいましたね」って声をかけてもらって、そのままアイスを一緒に買いにいく。
── 少女漫画だ!
そして買ってもらうだけかと思いきや、「あの、こういうことあんまりないから、写真撮っていい?」とお願いして写真撮って、それを送りたいから連絡先くださいって形にする。「エアドロ(Airdrop)、私できないんです」という設定で。
── エアドロのやりかたわからないんですね(笑)。
そうなるとLINEの交換にってなりますから、そこからはあなたのお好きにどうぞ!
── ものすごい行動力が必要ですね(笑)。
やっぱりきっかけは、自分で作るしかないです。しかも男子って、結構おバカなところがあるので、こういうので運命を感じやすい人も一定数いるはず。だって、こんな偶然あんまりなくないですか?
── 偶然って言うか、まあないですね(笑)。
だってそんな出会いがあったのって、のび太のお父さんとお母さんくらいじゃないですか?
── のび太のお父さんとお母さんってそういう出会いなんですか?
のび太の両親は、曲がり角でぶつかって、定期券を落としていったお母さんを追いかけていったことが2人の出会いです。だからのび太のお父さん・お母さん方式がいいと思います。
── 取りあえずぶつかれと。
はい、ぶつかり方式です。
── なるほど(笑)。確かにロマンチックですね!
令和によみがえる『東京ラブストーリー』

── ミュージカル『東京ラブストーリー』が11月27日から上演されます。増子さんは三上健一役で出演されますが、90年代のドラマはご存知でしたか?
ドラマ自体は見たことがなかったのですが、曲が有名ですし、タイトルはやっぱり聞いたことがありました。そんな作品に出演するなんて、すごいなと我ながら思います。
── しかも三上くんは超モテ男の設定!
そうなんです、それがすごく不安で。ドラマで演じていた江口洋介さんがすごくカッコいいというか、女性が好きになっちゃう要素をたくさん持っていて……チャラ男じゃないモテ男。危ない感じもあるけど、どこか上品さもあるし、女性が寄っていきやすい雰囲気を出していました。
── 確かに江口さんの三上くんは、演じる上でプレッシャーになりそう。
ただのチャランポランなヤツにはなりたくないなと思いながら、役作りをしています。ただのチャラ男とモテる人って、やっぱ違うじゃないですか。
── 違うと思います。
三上は寂しがりやで、女癖が悪いというよりは、女性が勝手に寄って来てしまうんです。そういうモテる三上、でも品のある三上を作りたいです。
── 『東京ラブストーリー』のドラマが社会現象になったのは、1991年で平成3年です。だいぶ時代が変わった令和の今、ここを進化させたいという希望はありますか?
初めてミュージカルとして上演されますので、やっぱり歌と音楽にあわせた新しい『東京ラブストーリー』の感動をお届けしたいです。当時見ていた人が見たときに、当時にはない魅力を見つけて欲しいです。
── 漫画からドラマ化され、どちらも大ヒットしていますが、確かにミュージカルは今回が初。
今回はテレビ版と同じく漫画を原作としたミュージカル化ですが、ドラマ版を越えるのは、なかなか難しいことだと思うんです。ただ、それと違う面白さを与えることは、できるかもしれない。それがもしかしたら、あの頃以上だと認めてもらえるかもしれないと考えると、舞台ならではの魅力をお届けできるよう精一杯頑張りたいです。
── ドラマと違って1回で見終わるものだから、そのテンポ感も独特ですしね。そして『東京ラブストーリー』と言えば2人のヒロイン、赤名リカと関口さとみですが、増子さんは以前のインタビューで、さとみ派だとおっしゃっていました。
そうですね、さとみの方が好きです。
── さとみのどういうところが?
僕はどちらかと言うと、ガンガン積極性があるタイプより、柔らかそうな雰囲気の女性が好みなんです。まあ、リカみたいなレベルの女性はそんなにいないと思っているんですけどね。
── 逆にさとみの欠点、リカの良い点って挙げられます?
難しいなあ! でもさとみは付き合うと、弱くなりそうなイメージがあります。さとみのことを好きな人がいた場合、その時に見ているさとみ像と、付き合ってからのさとみ像が結構遠くなりそう。付き合ってみないと分からないっていう、典型タイプな気がします。そこは欠点になるかな。
── リカの良い点と言えば?
うーん、更に難しい! でも一緒にいれば笑顔にはなりますよね、一瞬できっと。引っ張ってもらっている感じが、心地いい人も多いと思います。あんなに元気だから、弱みをたまには見せて欲しいなってなるのが、逆にいいのかもしれない。
── 強いゆえに、たまに気持ちがくじけることはないのかなって、思いますよね。
近くにいればいるほど、リカのことを深く知りたくなるんじゃないかな。だってずっと笑顔でいられる人なんて、なかなかいないじゃないですか。
強い子のリカ、弱い子のさとみっていう風に僕はとらえています。
── 主人公のカンチはどうですか?
カンチはずっと、グズグズしている印象です。ミュージカル『東京ラブストーリー』は2チームのキャストで上演されるのですが、僕のチームでは濱田龍臣くんがカンチを演じます。すっごくグズグズの演技が上手なイメージがあるので、僕の三上の演技が大差をつけられないように頑張りたいですね。
── 『東京ラブストーリー』のメインビジュアルをホームページで拝見したんですがとても今っぽさを感じる画でした。
あ、本当ですか? ありがたいです。
── ただミュージカルは稽古が大変そうですよね。
いやあ絶対大変ですよね。今から不安です。
とにかく全力で頑張りますので、どうか劇場までお越しください!


撮影/鬼澤礼門、取材/藤坂美樹、構成/中尾巴