Swagcky/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

「It has always been you」という曲ができたことで音楽をやっていく決意が固まった

特集連載

第65回

櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介するJ-WAVE『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。

今回登場するのは、湘南出身のシンガーソングライター・Swagcky(スワッキー)。大学に入って本格的に音楽を始めたという彼のキャリアはまだ3年ほどに過ぎない。しかし、11月2日にリリースされた1st EP『TOMOSHIBI』を聴けば、その豊かな才能に思わず唸ってしまうはずだ。R&Bやジャズなどの洋楽をベースにしたリズム&メロディ感に、わかりやすい言葉で気持ちを伝える歌詞が乗った楽曲は、今までになかったタイプのハイブリッド感覚を味わえる音楽となっている。いかにして彼は音楽にたどり着いたのか。そしてSwagckyが目指す音楽とは?

自分の好きなことって何だってなると結局音楽だったんですよね

── 幼少期を海外で過ごされているんですね。

そうなんですよ。父の仕事の都合で。本当に記憶にないくらい小さい頃の話なので、英語がネイティブのように喋れるようになったとかそんなことはなかったんですけど、でもその経験があったので英語を一生懸命勉強しようと思えました。不思議なもので小さい頃に聞いていた英語が無意識に残っていて、発音に関しては海外の人からもいいねって言われますね。言語能力としてはもちろん日本語の方が高いんですけど、音の出し方としては英語の方が気持ちよく出せるんですよ。

── 音楽的なバックボーンで両親からの影響はうけていたりしますか?

両親が好きだった音楽というのがスティーヴィー・ワンダーとかジョン・コルトレーン、あとはサックスのケニー・Gだったりマイケル・ジャクソンだったり、家のスピーカーから1日中何がしかの音楽が流れている家でした。それを聴きながらよく踊ってましたね(笑)。

── ナチュラルに英才教育が施されていたんですね(笑)。

まったくの無意識でしたけどね(笑)。でも、自分で実際に音楽をやり始めてから、あの小さい頃の体験がすごくベースになっているなっていうのは感じます。

── 自分の聴いているものが洋楽だという認識はあったんですか? 小さい頃は。

最初はなかったですね。小学校に入ったくらいからだと思います。給食の時間とかにかかる音楽が僕には全然わからなくて。で、何がきっかけかは憶えてないんですけど、たぶんテレビかラジオで聴いて好きになったんでしょうね、最初に買ったCDは槇原敬之さんでした。そのときに、自分がこれまで聴いてきた音楽って、いわゆる洋楽だったんだなって思いました。

── 小1でマッキーを好きになるっていうのもかなり耳が早熟ですよね。それくらいの年齢だと、アニメソングとかアイドルソングとかですよ、普通は。

ああ。そこも僕の育った環境かもしれません。僕は一人っ子で、周りには両親や祖父母という大人しかいませんでしたから。自然と彼らの好きなものを好きになっていったので、あんまりアニメとか観れてなかったんですよね、、、勿論今ははめちゃアニメみてますよ(笑)。

── 自分で音楽をやろうと思ったきっかけは何ですか?

中学生くらいの時に一回、歌手を目指すのもいいかなって思ったんですよ。友達とかとカラオケに行って歌ったりすると、「うまいね、歌手になったらいいじゃん」みたいにお世辞かもだけど言われることがあって。僕も音楽が好きだったし、いいなとは思ったんですけど、でもそこですごく現実的な考え方をしてしまったんですよね。というのも、想像がつかなくて。自分がステージに立って歌っている姿っていうのが、どうしても。そうするとどんどん冷静になっていって、僕より歌が上手い人なんてたくさんいるだろうし、僕が目指すものではないかもな……って。それで大学に入ってから、自分のやりたいことを探そうっていう期間があって、その中で、自分の好きなことって何だってなると結局音楽だったんです。その頃は、エド・シーランをめちゃくちゃ聴いている時期で、本当にいいなって思っていたんですよ。で、ギターを始めて、歌い出したっていう感じです。

── え、そうするとじゃあ、中学生の頃に一瞬歌手っていいなって思っただけで、そこから大学でギターを始めるまで、一度もバンドを組んだり、自分で曲を作ったりっていうことはなかったんですか?

一度もないですね。音楽は好きでずっと聴いてはいましたけど。でも自分でやるっていうのはお風呂の中で歌ったり(笑)、月に一回くらい友達とカラオケに行ったりする程度のものでした。自分でやることはなかったんですけど、ひたすらひとりで音楽をディグることはやってたんですよね。誰も知らないようなかっこいい音楽を見つけ出しては、俺が世の中で一番いい音楽を聴いているわ、みたいな自己満足に浸ってました(笑)。

もっと自由な生き方がしたいと思ったことがそのまま音楽をやりたいという自分の欲求につながっていきました

── 大学に入るまでに夢中になったことって何だったんですか?

本当はサッカー選手になりたかったんです。でも怪我しちゃって諦めなきゃいけなくなったんで、普通に大学受験をして入学したんですけど、勉強が全然身が入らなくて。入ったのが法律学科だったんですけど、六法全書を前に自分はいったい何がやりたいんだろう?って思うようになったんです。それで将来的なことを考えた時に、自分にとって好きなものとか極力ストレスにならないものを仕事にしていこうって思ったんです。

── それが音楽だった。

そうです。なので今思えば、中学生の時に一瞬歌手を目指そうかなって思ったタイミングで音楽を始めていればなって思うこともなきにしもあらずなんですけど、でも今こうやって音楽をやれていてすごく幸せなので、これはこれでよかったのかなって思います。

── 音楽を始めて、まずどのような活動をしたのですか?

とりあえずコードを覚えて、ギターを弾けるようになって、弾きながら歌えるようになって、そこから何をしたかというと、業界のリサーチを始めたんですよね。結構遅い段階でプロを目指す自分がどれだけ早く目標に到達できるかは、いかに一流の人たちとつながって、自分が成長できるかというのがポイントだなと思ったので、いろんなところに顔を出して人伝でつながりを増やしていきました。その中で、ライブ配信を始めたんですよ。そこでつながった男の子にめちゃくちゃ弾き語りがうまい子がいて、その子に教えてもらいながらオリジナルを作るようになっていきました。そこの段階で、だいたい3カ月くらいですね。音楽を始めて。そこでできたのが、「It has always been you」でした。

── マジですか!? この曲が本当に最初にできたオリジナルなんですか。

そうです。よし曲を作ってみようって作った最初の曲です。気づいたらできてた、みたいな感じでしたね。

── いきなり人生を変える曲ができたんですね。

本当にそうなんですよ。その曲が僕の人生を変えてくれたんですよ。

── 「It has always been you」ができて、それがどのようにSwagckyさんの人生を切り開いていったんですか?

どんどん曲を作るっていうふうにその時は思わなくて、とにかく「It has always been you」を歌って目立っていこうとSNSをがんばってたら、『ONE in a Billion』(通称ワンビリ)っていうソニーのオーディションから「参加してみませんか?」っていうDMをいただいたんです。なんかその時点で、自分の中に光が見えたというか。「It has always been you」という曲ができたこと、その曲のおかげでオーディションから誘いがあったことで、自分は音楽をやっていくんだっていう決意が固まりました。オーディションに出て、特別賞をいただく時点で音楽を始めてから8カ月くらいのことです。

── 今から約2年前ですね。8カ月だけを切り取れば、ものすごくスピード感があるんですけど、やはり幼い頃に無意識で聴いていた洋楽とか10代でマニアックな音楽を漁って聴いていた経験とか、そういうもの全部が手繰り寄せた結果ですよね。

そうですね。今思えばですけど、そういうことすべてが生かされて「It has always been you」という曲になったのかもしれないですね。

自分にとっても自分の音楽が光になったらいいなって思っています

── 曲作りで苦労することはありますか?

洋楽とJ-POPとの違いにぶつかって、今もそこは難しいなと思っていますね。僕にとってナチュラルなのは洋楽で、でもそれって日本の音楽シーンではなかなか受け入れられにくいことが多いなと感じていて、メロディなんかも結構自由というか、洋楽は型がない感じがするんですよね。一方でAメロ〜Bメロ〜サビっていう展開とか、歌詞が圧倒的に重要視されるっていうところとか、そういう部分はJ-POPならではだと感じます。もともとビートとサウンドで聴くっていうのが僕にとって音楽を聴くことだったので、日本語の歌詞を当てはめるとどうしても自分の思っているリズムやメロディにうまく乗って聴こえてこなかったりするんですよ。そこは今でも難しいですね。

── 11月2日にリリースしたEP『TOMOSHIBI』の4曲目に収録されている「Like a strawberry」なんかを聴くと、洋楽的リズムと日本語がうまく噛み合っているなと思いました。

まさにこの曲は、自分の思った通りにすべてがハマったっていう感じでした。洋楽が日本語でできたっていう感触ですね。それもどうやって作ったか忘れちゃったっていうくらい、さーってできちゃったんですけど。

── 一方で2曲目の「夕立」はJ-POPをより意識した曲なのかなと思いました。

そうですね。やるからには当たり前ですけど、日本で売れたいですしね。僕の名前はSwagckyっていって、「Swag」(かっこいい)という言葉と「Tacky」(ダサい)という言葉の造語で、日本語にすると「ダサかっこいい」っていう意味になるんですよ。自分の目指す音楽も、「イケてる音楽」っていうのと「かわいい音楽」の融合なんですよね。「かわいい音楽」っていうのは、僕の中で言ってしまえばダサいっていうことなんです。誰もやらないことがかっこいいっていう考え方が小さい頃から染み付いているので、ダサかっこいい音楽っていうのを追求していきたいんですよね。それがテーマです。例えばサウンドはめちゃくちゃ洋楽でかっこいいんだけど、聴き心地は日本人向け、みたいな。すごく難しいなって思ってるんですけど、曲作りをする中でそこができた時の楽しさや達成感はあるんで、やりがいはありますね。

── 1曲目に収録されているのが「HATE」で、今回J-WAVEのSONAR TRAXにもなっている楽曲なんですが、これは今おっしゃった「ダサかっこいい音楽」の最前線に位置するものと言えるのではないでしょうか。

ものによってはどっちか寄りっていう感じになるんですけど、そのバランスが一番いい曲なんじゃないかなと思っています。

── 曲の展開はそれほどあるわけではないけれど、言葉が詰め込まれていて、かつ1テーマで言いたいことを押し切る、というのはまさに洋楽とJ-POPのいいとこ取りですよね。

はい。やりたいことをこの曲ではできたかなと思います。

── テーマがはっきりしていますよね。怒りというか、モヤモヤした感じを吐き出すというか。

それこそ大学生の時とかに、何がやりたいんだろうって悩んで、結果音楽があったのでそれで突き抜けようってなったんですけど、でもまあ思い通りには進まないんですよね。音楽を始めたのとコロナが広まっていった時期とが一緒で、世の中的にも自由が奪われたようなムードになって、せっかくやりたいことが見つかったのに、それを自由にできない歯痒さというか。でも狭まった世界の中でもどうにか光を見つけ出してポジティブにがんばって行かなきゃいけないし。裏のメッセージとしてはそういう、ポジティブにがんばっていこうっていうのがあって。うまくそこを伝えられた曲になったんじゃないかなと思います。

── 怒りっていうのは、まあネガティブな感情だと思うんですけど、そこを表現の出発点にするというので難しさはありませんでしたか?

制作をシンガーソングライターのHiplinさんと一緒にやらせていただいているんですけど、彼とやる中でも自分に嘘をついているなって思うことがあって。ネガティブを隠してポジティブに見せている瞬間っていうのを感じるんですよ、自分自身に。でもそれって、べつにカッコよくないなって思ったんですよね。人間は誰しもネガティブな部分を持っているのが当たり前で、そこを見せたってべつにいいじゃんって思うんですよ。だから、自分をさらけ出すじゃないですけど、最初のEPの1曲目で自分をちゃんと知ってもらうという意味でもネガティブなところから始まるっていうのは逆に良かったんじゃないかなと思います。

── EPのタイトルが『TOMOSHIBI』なんですが、そこにはどんな思いが込められているんですか?

自分が今まで生きてきた中で、生きづらいなって思うことが結構あって。人によってはいじめられたり、何か辛い目にあったりとかって、大なり小なりみんなあると思うんですよね。でも当たり前ですけど人生ってそういうことばかりじゃないし、楽しく生きていきたいって思うじゃないですか。そんな人たちの心に光を灯せたらなっていう思いを込めてタイトルはつけました。それは自分にとっても自分の音楽が光になったらいいなって思っています。

── これからの目標があれば教えてください。

音楽を始めたばかりの頃は、とにかく大きくなりたいって思ってて、例えばドームや武道館でやりたい!とか、もちろんそういう思いは今でも変わらずあるんですけど。ただ、自分の作品をひとつずつ積み重ねていって、その先にそういう風景が待っていたらいいなっていうふうに今は思っています。僕の音楽を聴いて、この曲に出会えて本当に良かったって心から思ってもらえるような音楽をミュージシャンとしてやっていきたいと思っています。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

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リリース情報

1stEP『TOMOSHIBI』
配信リリース
https://ssm.lnk.to/TOMOSHIBI_S

収録曲
1. HATE
2. 夕立ち
3. イタズラなKiss
4. Like a strawberry
5. Dive in my soul
6. It has always been you

「HATE」

「夕立ち」

「イタズラなKiss」

「Like a strawberry」

「Dive in my soul」

「It has always been you」

ライブ情報

2022年12月3日(土) 17:30開場、18:00開演
会場:東京・Time Out Cafe & Diner
チケット代:オールスタンディング 3,000円

プロフィール

湘南出身のシンガーソングライター・Swagcky(スワッキー)。 幼少の頃をシンガポールと香港で過ごしその後帰国。2020年大阪の実力派シンガーソングライターHiplinに見いだされMASAZYN(マサゼイン)名義で楽曲制作を開始。2020年ソニーミュージック主催のオーディション「ONE in a Billion」(ワン・イン・ア・ビリオン = ワンビリ)にて特別賞を受賞。オーディション中に歌唱したオリジナル曲「It has always been you」が、TikTokで公開したところ瞬く間に広がり話題に。2022年ステージネームをSwagckyに改名し同年5月、シングル「夕立ち」をでデビュー。その後、「Dive in my soul」、「Like a strawberry」「イタズラなkiss」を連続リリース。11月2日には初のEPとなる『TOMOSHIBI』をリリースした。12月3日(土)には初のワンマンライブ"TOMOSHIBI"を開催。

関連リンク

OFFICIAL HP:https://lit.link/swagcky

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW