
まさに、吸い込まれそうな目力だ。
スーパー戦隊シリーズ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(以下、ドンブラザーズ)で桃井タロウ役を射止めて約半年。最初こそ初々しかった樋口幸平の演技も、回を重ねるごとに馴染んできた。その自信は、ハッキリした目力にも表れている。
見上げるほどの高身長も相まって、対面すると気後れしてしまうほどのルックス。しかし、礼儀と気さくさを兼ね備えた語り口に、誰もが彼のファンになってしまうはず。来年2月に最終回を控えた『ドンブラザーズ』の話題を中心に、初のカレンダー発売イベントの感想や、今後の展望について聞いた。
『ドンブラザーズ』撮影は衝撃の日々

── 演技のお仕事を始められて約2年、『ドンブラザーズ』の撮影で日々お忙しいと思います。こういった取材には慣れましたか?
樋口幸平(以下、樋口) この一年でお話させていただく機会が増えて、だいぶ慣れてきました。もともと一人でいるのが苦手で、みんなでワイワイしていたいタイプ。人と話すのが大好きなんです。それこそ『ドンブラザーズ』のみんなとも、仲が良いんですよ。
── いま放送中の『ドンブラザーズ』、これまでにないタイプの戦隊ものですよね。
樋口 現場でも「なんだこれ?」って思いながら撮影してます。僕が演じている、レッドの桃井タロウが、仲間に対して「虫ケラ」って言ったりしますから(笑)。けっこう大人向けなコメディ要素が多いので、ハマってくれる人が多いと聞くと『ドンブラザーズ』に出られて良かったな、と思います。
個々のキャラクターが成立し、視聴者さんに受け入れてもらわないと、『ドンブラザーズ』のような前代未聞なシーンは出せないはずなので。そういう意味では「またやってるよ〜」って感覚で気軽に見てもらえるようにはなったのかな、と。
── 現在(取材当時11月上旬)35話まで放送中で、ちょうど折り返し地点ですね。撮影は順調ですか?
樋口 もう終盤まで撮り終わっていて、あと少しで最終回になります。僕たちも衝撃の日々を過ごしているので、早く視聴者さんの反応を見てみたいですね。1年間、座長として撮影を頑張ってきたので、寂しいな……って気持ちも強くて。一緒に走ってきたキャストにもスタッフにも、感謝しています。
── 撮影現場で、座長として気をつけていることはありますか?
樋口 最初は、キャストとスタッフを繋げるために現場で動いたり 、最年少の子を引っ張ってあげようと意識したりしてました。でも、最近はもう何も考えてないんですよ。
皆さん実力のある方ばかりなので、信頼してお任せしてます。みんなも僕のことを信頼して、「ドラマのために頑張ろう!」って思ってくれてるのが伝わってきて。だからこそ、僕もみんなのために気合い入れようって思えるんです。
あとは、最終回に向けて走り切るだけ。信頼関係ができてるので、芝居のことだけを考えていればいい。理想的な環境になっていると思います。

初カレンダー発売イベント、ファンに向け「25点だ」!?

── 『ドンブラザーズ』をきっかけに、樋口さんのファンになる方も増えそうです。今日(取材当日11月5日)は、初のカレンダー発売イベントだったんですよね?
樋口 こういう、ファンの方と一対一でお話するイベントは初めてでした。オフライン、オンラインどちらもあったんですけど、やっぱりSNSでは伝わらない熱量を感じられましたね。「桃井タロウ」じゃなく、樋口幸平自身を知ってもらえていることを、生で感じられた貴重な時間でした。『ドンブラザーズ』を頑張ってきて良かったなあ、って気持ちと、今後も頑張っていかなきゃって気持ちも、強くなりました。
── ファンの方とは、主にどんな話を?
樋口 「桃井タロウのセリフを言ってください〜!」ってお願いが多かったです。彼のセリフのひとつに「25点だ」ってセリフがあるんですけど、いきなりそれを言っちゃうと、ただの失礼なヤツになっちゃうじゃないですか。ファンの方は喜んでくれたんですけど、周りで聞いていたお店の方やスタッフさんは、ぽかんとしてました(笑)。
── ご自身の選ぶ、カレンダーのベストショットを教えてください!
樋口 もちろん表紙も好きなんですけど。9〜10月の、バスローブを着ている写真がお気に入りです! もともとカレンダーに入れる予定はなかったんですけど、休憩時間にこのバスローブを着て待っていたら「それいいね!」って言ってもらえて、そのまま採用されました。
── (実際の写真を見せていただく)すごい! 素晴らしい腹筋をお持ちですね、びっくりです! こんなに腹筋って割れるもんなんですね……スラムダンクみたい。
樋口 その例えは、ちょっとわからないですけど……(笑)。
── 失礼しました……! 普段から、腹筋は鍛えてらっしゃるんですか?
樋口 もともとサッカーをやってたので、トレーニングは習慣で続けています。撮影の合間とかに、自重トレーニングなんかも。
── ストイックなんですね。途中でやめちゃう方も多そうな気がします。
樋口 全然ストイックではないんですが、やっぱり表に出る仕事なので。自分でも納得できることであれば頑張れるんですけど、納得できないと続けられないんですよね。たとえ人から提案されたことであっても、腹落ちできるまで持っていかないといけないのに……。今の僕の課題です。

目標は、味と匂いのある役者

── 半年近くスーパー戦隊のレッドを演じてきて、演技に対する意識にどんな変化がありましたか?
樋口 もう、びっくりするくらい変わりました! パイロット監督(特撮シリーズにおいて主に1〜2話を担当する監督)の田﨑竜太さんが、僕に芝居のイロハを叩き込んでくれたんです。ただ「芝居をやれたらいいな〜」と思ってるだけの、何もわからない僕に、芝居で食べていきたいとまで思わせてくれました。楽しくも厳しい環境で、芝居で生きていく覚悟がついたと感じています。
── 樋口さんが憧れの役者さんとしてお名前を挙げている、竹内涼真さんや菅田将暉さんなど、戦隊やライダーシリーズ出身の方が多いですよね。
樋口 そうなんです! 現場にいて漏れ聞こえてくる話から想像するに、戦隊やライダーをやっている間も、ちゃんと次の仕事のことを考えていたんだろうな……と。覚悟を決めて、さらなる上を目指す向上心のある方が、今も残っていらっしゃるはず。
僕も、「ドンブラザーズ」が終わったあとも「桃井タロウの役が抜けない!」では終わらせられないので、自分なりの色を出しながら頑張っていきたいです。
── 次はどんな役を演じてみたいですか?
樋口 いつか、お笑い芸人の役をやってみたいんです。あとは、イケメンな役や誰かの兄弟役、平凡な普通の人の役とかも。求められる限りは、いろいろな役をまっとうしたいな。
「東京ラブストーリー」(2021年リメイク版)で清原翔さんが演じてたようなキャラクターにも、興味あります。

── いわゆる、ヒモキャラというか?
樋口 です! 「愛がなんだ」で成田凌さんが演じていたような。ああいう、人としても役としても“味”がないと演じられないような役をやってみたいです。これまで、そしてこれからの人生経験をとおして、僕にもああいう味が出せるようになれればいいな。
あ、これ、あくまで演じてみたいって話ですからね? 太字・赤文字で書いておいてください(笑)。
── 味がある役者さん、良いですよね。
樋口 鈴木亮平さんとか松坂桃李さんとか、良い意味で匂いの感じられるような役者になりたいんです。クセがあるというか。もちろん、正統派の役者さんもカッコいいし憧れるんですけど、年々、歳を重ねていっても、演技だけでご飯を食べてることが、見てる人にも伝わってほしい。「あの人、役者じゃなかったらどうしてたんだろう?」と思われちゃうような。


Q. 忙しい日が続いていると思いますが、ちゃんとリフレッシュできてますか?
たまに休みの日があると、ジョギングをしたりしてます! サウナに行ったりも。たまに顔バレしちゃって、気まずい時もあります(笑)。
Q. ちゃんとお休みの日もあって、安心しました。映画鑑賞もお好きなんですよね?
昔から大好きで、メモしながら見てます。親がドラマ好きで、その影響で映画もドラマも好きになりました。最近はサスペンスや、お笑いをテーマにした映画にハマってます!『火花』とか『浅草キッド』とか。芸人さんが脚本を書かれている作品は、ほとんどチェックしてると思います。
Q. 一緒に仕事をしてみたい監督はいますか?
『孤狼の血』(2018)の白石和彌監督、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022)の三木孝宏監督、『モテキ』(2011)の大根仁監督など、たくさんいます。20代だからこそできる役柄は、とくにチャレンジしたいです。
Q. 演技の仕事以外でチャレンジしてみたいことはありますか?
お笑いが好きなので、やっぱり漫才とかコントとか、一度本気でやってみたいですね〜! ボケも楽しそうだけど、ツッコミがやりたいかな。
Q. 相方にしたい人は?
まだそこまでは考えてないです(笑)。ジャルジャルさんが大好きなので、ああいう作り込まれたネタをやってみたいですね。
Q. ドンブラザーズのアフレコも、樋口さんがやってるんですよね?
そうです! 自分っぽくないって、よく言われます。桃井タロウとドンモモタロウは、同一人物だけど、変身前後でキャラが変わるんですよ。意識して変えた部分なので、そう言ってもらえて嬉しいです。
Q. 人付き合いで大切にしていることはありますか?
「この人のこと好きだな〜」と思ったら、ちゃんと好き! って気持ちを自分から示すようにしてます。だからこそ、相手も心を開いてくれると思うので。ご飯に誘ったりしますね。
Q. 人見知りはしないタイプ?
いきなり知らない場所にポンッて飛び込んでも溶け込めるタイプだけど、意外と気を遣っちゃう面もあって……、様子を見ちゃう時もあります。それでよく後悔するんです。
Q. これから、どんな経験を積んでいきたい?
主演に限らず、バイプレイヤー的な役回りもどんどんやっていきたいです。良い役を掴むのは、これからの自分次第だと思うので。役の大小は問わず、どんな役柄もまっとうしたいです。
取材・文 北村有