【全力特集】みんながフラワーカンパニーズに惹かれる理由
Novel Coreがフラカンに惹かれる理由。 「まるで今の僕を見てくれてるみたいだなあ、っていう感覚にすごくなった」
第3回
ニュー・アルバム『ネイキッド!』リリース&9月23日(金・祝)日比谷野外大音楽堂ワンマン&11月5日水戸ライトハウスから、30本以上に及ぶ『ネイキッド!』のリリース・ツアー『いつだってネイキッド’22&’23』がスタート。というタイミングでぴあがお届けするフラカン強化シーズン企画、ライターや後輩ミュージシャンがフラカンの魅力を語るインタビュー、第二弾はラッパー / シンガーソングライターのNovel Core(ノベル コア)。
2020年10月にSKY-HI主宰のマネジメント/レーベル「BMSG」の第一弾アーティストとなる。2022年11月からの全国ツアーは各地Zepp/PIT規模──と、大ブレイクへの階段を全速力で駆け上がっている弱冠21歳の彼が、2021年12月にリリースしたアルバム『A GREAT FOOL』収録の「PERIOD.」という曲に「フラカンの深夜高速聴いて 涙が溢れた深夜4時半」というリリックがある、ならばフラカン好きなのでは?とオファーしたところ快諾、話をきかせてくれた。で、こちらの期待をはるかに上回るガチだったことが判明した。
フラカンを好きな者として、彼の言葉に共感できる、というだけでなく、「クリエイターという同じ立場同士だと、フラカンをこう聴いて、こう解釈するのか」ということがわかるテキストにもなっています。ではどうぞ!
自分自身の命綱になる音楽、という感覚で、「深夜高速」が自分にフィットした
── そもそもの音楽のルーツや、音楽を始めた頃のことについて、教えていただけますか。
僕は、母親が学生時代にバンドをやっていたりして、音楽自体がすごく近くにある家庭で育って。で、中学生の時に、学校で合唱コンクールがあって、指揮者に立候補したのをきっかけに、音楽の表情を自分が作っていくことが、すごく楽しくなって。それでクラシック音楽にのめり込むようになったので、音楽大学に通って、ウィーンとかでオーケストラの指揮者になりたいと思ってたんです。だけど、学力と進学のおカネがなくて。家族と「これは無理じゃないか」という話になった時に、ヒップホップと出会って。楽器が弾けなくても、楽譜が読めなくても、自分の声さえあればできる音楽なので、そこからのめり込んで、始めたのがきっかけですね。
── 始めたのは15歳ぐらい?
そうです。

── じゃあほんとにスタートダッシュだったんですね。『BAZOOKA!!!』の「高校生RAP選手権」で準優勝したのって、16歳でしょ。
その時が、最初に注目を浴びたタイミングだったんです。それまで、渋谷の路上でパフォーマンスしたり、MCバトルに出たりしていました。今思いだすと、15、16ぐらいの時は、けっこうしんどかった時期でもありますね。
── と言うと?
まあ、思春期真っ只中なので。学校も高校1年生でやめて、音楽の道に専念するんですけど、『高校生RAP選手権』で、急激に1万人2万人規模の人から耳目を集めて、あることないこと言われながら生きていく、っていうのが、当時の自分からすると……全部を真に受けてしまう自分がいて。
── そうか、路上からいきなりその規模になっちゃって、中間がなかったわけですね。
そうなんです。MCバトルとか路上ライブしかやったことがないのに、不特定多数の人の前に急に放り出される、みたいな感覚で。当時は、いろんな人からいろんなことを言われるのが、こんなに怖いことなんだ、っていうのを、ずっと感じていました。
── 「PERIOD.」を聴くと、一回持ち上げられた後に叩き落された、その時に「深夜高速」を聴いていた、ということになるんですかね。
そうですね。
── フラワーカンパニーズを知ったのは?
僕、最初は高円寺でサイファーをやってたんですけど、その頃ラップを一緒にやってた友達が、バンドのおすすめをいっぱい教えてくれたんです。その中にフラワーカンパニーズの音楽があって、YouTubeでライブの映像とかを観るようになりました。『高校生RAP選手権』で、急に人気が上がったけど、急にハシゴを外される、みたいな瞬間があって。全員手のひら返しで、誰も自分のラップに反応してくれなくなって、すごいしんどかった時期に、「深夜高速」を聴いていた、っていう感じです。

── あの曲が刺さったのは、なぜだったんでしょうね。
それこそ、自分がフラワーカンパニーズを好きな理由でもあるんですけど、自分に向けて歌われてる、っていう感じがすごくするっていうか。リリックが本当にストレートに、素直に綴られていないと、そういう感情って、絶対に得られないと思うんですけど。この人たちは僕のことなんか知りもしないけど、まるで今の僕を見てくれてるみたいだなあ、っていう感覚にすごくなった。人を信じること自体が、めっちゃ怖くなっていた時期だったんですよね。自分に近寄って来た人たちが、急激に離れていくのを感じる中で。信じたら裏切られるんじゃないか、何を信じて、何を自分の信条にして生きていけばいいのかわかんない、みたいな。思春期もかぶっていたのもあって、アーティストとしての悩み云々の前に、そもそも精神状態が不安定だったので。

── ああ、まあその年齢ならねえ。
夜中に急に家を飛び出したりとか、家で暴れて……母親、すごく仲いいんですけど、ペットボトルを投げつけてケガさせてしまったりとか。自分のことが怖くなって、自分で交番に連絡して、家に警察官に来てもらったりとか。自分がふたりいる、みたいな感じで、自分でも制御できない自分がいて、自分でもそいつのことをめっちゃ嫌いだし。そういう二面性、自分がどんどん本当の自分と離れていく、みたいな感じを味わっていた時期で。まさに「真暗な道を走る」感じで、明日がマジわかんない、みたいな時だったので、「深夜高速」が刺さったのかな、と思います。
── ただ、基本的に、聴いている我々って、ほとんどの人が、ハイエースで深夜に高速を走ってないじゃないですか。
(笑)そうですよね。でも、先の見えない真暗な道を、ずーっと走行しているというのが、人生とかかっている。それはたぶん、誰しも共通する部分だと思ったし。すごい元気に明るく人と接していても、心のどこかに、孤独とか、自分が自分自身から離れられないやましさを、ずっと背負いながら生きている人たちって、世の中にたくさんいると思っていて。特に音楽に助けを求める人たちって、そういう人たちだと思ってるんですけど。そこで自分は当時、自分自身の命綱になる音楽、という感覚で、「深夜高速」が自分にフィットした、っていう感じですね。
「時給960円の夢」は、「六畳一間のロックンロール」へのオマージュです

── 他にも、自分にとってそういう作用をしてくれたフラカンの曲ってありました?
あ、僕、「感情七号線」も当時大好きで。あれも、ずっとぐるぐる回っていく、終わりのないものを……感情と環状をかけてる曲じゃないですか。あれはラジオで初めて聴いたのかなあ。「六畳一間のロックンロールがお似合いなんだろ」って歌詞があるじゃないですか。僕はそれがすごく好きで、自分のメジャー・デビュー・シングルの「SOBER ROCK」に「時給960円の夢」っていうフレーズを入れてるんですけど、それはそのオマージュで。僕、高校に入った時、池袋のそば屋でバイトしてて。時給960円で、音楽の道で成功したいし、そっちに絞りたいけど、家族に迷惑かけられないし、みたいなので、バイトをしながら沸々とフラストレーションと戦ってた日々のことを思い出して。僕は「六畳一間のロックンロール」ではないけど、「時給960円の夢」を持ったラッパーなんだな、と思って歌詞に入れるぐらい、いろんなところでインスピレーションをもらっていますね。
── ほかにもそんなふうに、当時の自分に刺さったアーティスト、いたでしょ?
いっぱいいたんですけど、フラカンほど、自分に向けて歌われてるっていう感覚に陥るバンドは、いなかったかもしれないですね……あ、そうだ、玉置浩二さんの「田園」、めちゃめちゃ聴いてました。ほんと精神が不安定だった時に、助けを求めるものとしての音楽……「田園」も、玉置浩二さんが、精神がすごく不安定になった時期に、病院から見えた景色とかをふまえて書いている歌詞だったりするじゃないですか。自分がほんとにしんどかった時とか、苦しくなった時に、心の奥底からなんの意図もなくパッと出てきた言葉を歌詞にした曲が、自分的にはすごくグッと刺さるというか。人を救おうと思って書いているとか、ヒットしたらいいなと思って書いているとか、じゃない気がしていて。フラワーカンパニーズは結成33年ですよね? この時代、いろんな意図が音楽業界にあるし、ビジネスとしての観点も必要とされている中で、本当に純度しか感じない音楽というか。変な意図を一切感じない、自分たちの心の奥底から出る叫びを、音楽にし続けている人たち。自分はそういう人たちに強く惹かれる、っていうのはありますね。

── そうか、「深夜高速」と「感情七号線」。
というか、そもそもフラワーカンパニーズ自体から、完全にインスピレーションを受けてます。歌詞を書く時に、脚色しないとか、遠回りせずにストレートに表現するとか、そういうのを常に意識していて。他の誰かを想像するよりも、まずは自分自身と向き合って、自己の中で音楽を作る。それはフラワーカンパニーズの音楽を聴いて、自分もそういうスタイルにしたいと思ったので。本当に素直じゃないですか、全部の曲が。「アイム・オールライト」の「わからない事ばかり 年とともに増えてく」とか、「いや、そうだよな」みたいに、聴いてハッとするというか。そういう素直さって、自分と向き合っていないと出てこないんだろうな、と思うし。

僕の「私に流れる69」を作るとしたら、「フラワーカンパニーズ」が100パー入る
── ニュー・アルバムの『ネイキッド!』は、聴きました?
はい。もう本当に、変わらずいてくれている、というか。ずっと純度100%の状態のまま、芯がまったくぶれない感じが、ファンとしてめっちゃうれしかったですね。
── 気に入った曲とかありました?
いっぱいありました……(曲名を見る)……「借りもの競走」とか。今まで自分がやってきたこと、感じてきたこと、もしかして全部借りものだった?みたいな。答えを出すんじゃなくて、「え、もしかして?……」っていうところで曲が終わる感じは、さっき話した、素直さみたいなところに直結していると思ったし。あと、「絶賛公開中」に関しては、すごいシンパシーを感じて。自分の人生を、映画にたとえて、主演も監督も脚本も全部自分だ、という……自分自身が、「THANKS,ALL MY TEARS」っていう曲や、それ以外もいろんな曲の中で、自分の人生をひとつの映画として見立てて……イヤなこと、つらいことがあった時に、「今は挫折のシーンを撮っている最中で、これがないとエンディングが感動的にならないから」みたいなふうに受け入れたら、どんなにつらいことがあっても、乗り越えられるだろう、っていう。自分の心がポッキリ折れないための術を身に着けた生き方で、それと通ずるものがあるというか。自分の人生と主観と俯瞰とで分けていく感じも、フラカンに影響を受けましたし。あと、「私に流れる69」は、僕の「私に流れる69」を作るとしたら、「フラワーカンパニーズ」が100パー入るな、と思いました(笑)。僕、Spotifyを自分のスマホにインストールした直後のとこまでさかのぼったら、自分のオフラインの方に保存しているの、フラカンのアルバムだらけなので。

Text:兵庫慎司 Photo:石原敦志(Novel Core)、CHIYORI (フラワーカンパニーズ)
プロフィール
Novel Core
東京都出身、21歳。ラッパー、シンガーソングライター。
SKY-HI主宰のマネジメント / レーベル "BMSG" に第一弾アーティストとして所属。
メジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』とメジャー2ndアルバム『No Pressure』が2作連続、各チャートで日本1位を獲得。全国ツアーやZepp単独公演を全公演即ソールドアウトで成功させるなど、その存在感を確かなものにする一方で、トップメゾンのモデルに起用されるなど、ファッション業界からも注目を集める新世代アーティスト。
公式サイト:https://novelcore.jp/