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monje/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

藝大生3人組のクリエイティブグループ・monjeインタビュー「身の回りのものからよくしていくという価値観が3人の中に共通してある」

特集連載

第73回

櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介するJ-WAVE『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。

今回登場するのは、現役の東京藝術大学生3人によるクリエイティブ・チーム、monje(読み:モンジュ)。楽曲制作を担当する森山瞬、作詞とボーカルを担当する小牧果南、ビジュアルアートと衣装を担当する中川琉那の3人が生み出す音楽は、多様性に基づいた芸術的背景や今の時代を生きる者の実感としての価値観が作品に昇華されている。monjeの中で3人それぞれが担う役割の真ん中にあるものとは何か? その成り立ちから、一連のEP3部作『衣』『食』『住』のテーマの奥にあるものについて、森山瞬と小牧果南に聞いた。

monjeでそれぞれが出している力っていうのは、monjeでしか出していない力なんですよ(森山)

── 3人がどんなきっかけで集まって、どのように始まったのか、そこから伺わせてください。

小牧 私たちは大学の同級生で、出会ったきっかけは学園祭でした。私と中川さんは美術学部で、森山くんは音楽学部で、学部が違うと普段交わることはあまりないんですよ。それで東京藝大の学園祭には神輿を作るっていう特殊な行事があって(笑)、その中で私がダンスの振り付けを担当していて、森山くんが音楽を、そして中川さんが全員で着るクラTみたいな法被のデザインを担当していたんです。

── へー。じゃあ最初からmonjeの役割分担の原型があったんですね。

小牧 そうなんですよ。

小牧果南

── それにしても、すごい文化祭ですね(笑)。

小牧 藝大の文化祭って1年生のための祭典みたいなところがあって、音楽学部と美術学部の全1年生が基本4グループに分けられて、そのグループごとにみんなでひとつの神輿を作っていくんです。そこでみんなの絆がめっちゃ深まります(笑)。

森山 神輿という名の巨大彫刻ですね。

小牧 そうそう。神輿と言っても皆さんが想像するような神聖なものでは全然なくて(笑)、去年なんかは動くパチンコ台とかあったしね。私たちは地獄をモチーフにした牛頭馬頭っていうのを作ったんですけど、うちらのグループには彫刻科がいるから超有利でした(笑)。

森山 彼らはすぐ筋肉を彫りたがる(笑)。

── (笑)。文化祭をきっかけに3人が出会って、すぐに音楽をやろうっていう話になったんですか?

小牧 いえ、出会ったのが1年生の夏で、そこからしばらくは普通に友達だったよね。

森山 うん。

小牧 一回だけ3人一緒にライブに行って、ムラ・マサの。その時私はムラ・マサを知らなかったんですけど、でも中川さんと森山くんは好きで聴いてるっていう話になって、そしたらちょうどその年の冬に来日公演があったので、じゃ行く?って(笑)。そこから3人で遊ぶようになったよね。3人ともお酒好きだし(笑)。

森山 でも僕の目からすると、美術学部の中ではふたりともすごく音楽好きだったので、それも仲良くなった大きな要因のひとつだと思いますね。

小牧 だからもともと、これっていう共通点は(3人のあいだに)ないけど、音楽好きだよねっていう感覚はみんな持ってたよね。

森山 そうだね。言ったことはないけど。

森山瞬

── 音楽好きの友達からどうやって音楽をやっていくようになるわけですか?

小牧 それは本当になりゆきで、1年生の頃はまだコロナ前だったんですよ。で、2年生の4月からコロナ禍になって、学期のスタートが5月からにずれ、で、授業も全部オンラインになったんです。あるとき映像の課題提出があって、でもずっとひとりで家にいたし、もうひとりで作るのつまらないなと思って、中川さんに声をかけて共同制作で出そうぜって話したんです。それでミュージックビデオでも作ろうかっていうことになって、最初は既存の音楽に映像をつけようと思ったんですけど、なんかそれもちょっとなって思うようになって、それで森山くんに曲を作ってもらおうって話になったんです。だから森山くんは他人の課題に巻き込まれたんです(笑)。そこではじめて私も作詞をしたんですよね。

── それはどんな曲だったんですか?

小牧 それが「Heya」という曲で、まさにコロナが始まって2、3カ月くらいの頃だったので、私の部屋の中だけで完結するMVを作ろうっていうコンセプトをまず立てて制作をはじめました。もともと私は出かけたりするのが好きなタイプで。だからずっと部屋にこもってっていうのが身体感覚的にも初めての経験だったんですよね。その不思議な感覚と苦しみみたいなものを曲にのせられたらいいねっていうことで映像も曲も作りました。

── 森山さんはそれまでトラックメイキングや曲作りというのはやっていたんですか?

森山 その時はまだそこまで経験として深いものではなくて。僕が所属しているのは音楽環境創造科なんですけど、その中に「音響」「創作」「アートプロデュース」の3つの専攻があって、僕は「創作」に入ったんですけど、そこは音楽を直接作るというよりは、音楽を使ってもっと新しい表現ができるよね、とか、音楽に限らず音というものを美術の中で使うにはどうしたらいいか、ということを考える専攻で、どちらかと言うと美術表現寄りの創作活動をしていたんです。

だから曲作りっていうのはそこまで本格的にやっていたわけではないので、そういう意味では“歌もの”を作ったのは、「Heya」が最初と言ってもいいと思います。みんなそうなんですけど、monjeでそれぞれが出している力っていうのは、monjeでしか出していない力なんですよ。僕もひとりで曲を作って発表するとかはしていないですし。

小牧 私も普段は石鹸で彫刻っぽい立体を作ってる人だし(笑)。

森山 中川も普段からデザインばっかりやってるわけじゃないもんね。

小牧 そう。それぞれが違うことを普段はやっているけど、monjeとして集まった時は音楽を作るってことをやっている。

── そういう意味では、monjeというのは3人にとってかなり大切な場所だということですよね。

小牧 そうですね。私にとってもそれは驚きで、意図してできたものではなかったけど、案外自分にとって歌うということが大事だったんだなって逆に気づかせてもらいました。大学に入るまでは、高校の時は軽音楽部にいてボーカルをやっていたり、それこそ子供の時からずっと歌うことが好きだったんです。歌でストレスを発散している面というのが結構あったりして。それで、再びそういう場が自分の手元に戻ってきて改めて「もう離さないぞ!」って思ってるところはありますね(笑)。

── しかも発表したら反応があるわけじゃないですか。

小牧 それは本当に初めてで、今まで歌ってきたのって高校の学園祭のステージで同級生とか後輩が見てくれているとか、カラオケで歌ったりとか、それくらいしか経験がなかったので、monjeで曲を発表して出会ったこともない人たちが私の歌を聴いてくれるっていうのはすごく不思議な感覚としていまだにありますね。

コミュニケーションにおいて身体が曖昧になっていく感覚っていうのが私にとっては自然なんです(小牧)

── monjeの中での役割がはっきりと3人それぞれにある中で、共通して持っている感覚というか、これはmonjeっぽいよねっていう部分というのはどういうところになるんですか?

森山 確実にあるんでしょうけど、きちんと言語化はできていないですね。

小牧 それこそ最初は死ぬほど手探りだったよね?

森山 そうだね。

小牧 「Heya」を作った時なんかはなんとなくイメージを持ち寄ってみたいな感じで、そこからEPを何枚か作って、ようやく何かがある、みたいな感じかな。

── 変にオリジナリティを意識しすぎるっていうことはない?

森山 僕は大学で美術を作るっていうことをやっていて、その感覚がまだmonjeの中でも抜けきっていないと思っているんです。だから、社会の中でこの音楽がどういう新しい価値を持つのだろうかっていうことはすごく考えますね。オリジナリティというよりは、この音楽の何が、古き良きみたいなところを踏襲しつつも、そこに自分が何を付け加えるかによって新しい響きとして届くのかっていうことは考えていますね。

小牧 「Pluto」っていう曲があるんですけど、その曲は最初、3人でいろいろしゃべりながら作るっていうところから始まっていて、「3人ともSFが好きっていう共通点あるよね」とかって言いながら。そこから近未来っていうモチーフを共通で持って楽曲を作ろうぜってなったんですよね。私はそのモチーフで歌詞を書いたし、中川さんもキャラクターを考えたし。そこで森山くんが「近未来は5拍子だ」って言い出して、実際に曲ができたんですけど、それがありがたいことにいろいろなところのプレイリストに入れてもらって、「5拍子の曲がSpotifyのプレイリストに載っただけでも満足だ」って森山くんが言っていたのがすごく印象に残ってる(笑)。

── そうやって3人の真ん中にあるものをその時々で探りながら、かつ、新しいことへチャレンジしていく場としてmonjeがあるというのがよくわかります。

森山 そうですね。常に開かれたプラットフォームとしてある、という感じですね。

── 今回、3月10日(水)にリリースされるEP『衣』もそうですけど、その前にリリースされたEPが『食』『住』となっています。人間が生きていくために必要な3つの要素をEPの作品タイトルにして連続でリリースしていくというのは最初からデザインされていたことだと思うのですが、そこにはどのような意図が込められているのですか? というのも、そこに3人の感性や価値観の重なる部分があるのかなと思ったんですよね。

森山 いろんな理由があるんですけど、僕の中で大事だったのは、手に届くテーマだったということが大きくて。テーマについて考えていた時もコロナ禍だったので、視界がどうしても狭くなるから、テーマ的に遠くのものを無理して見ようとしたっていいものできない気がしたんですよね。だからとにかく身の回りにあるものにフォーカスして、それを構成している最小単位である「衣食住」をテーマにすることが今は一番いいんじゃないかなと思いました。やっぱり普段より近くが解像度高く見えていますからね。

小牧 そう、すごいしっくりきたんですよね。私たち3人ってやっぱり不思議な関係値で、普通誰かと深く関わる時っていうのは共通の何かがすごく好きとか、ある一点の明確なポイントがあると思うんですけど、私たちの場合は何を共有しているのかあまり言語化できないけど、何をしても何を作ってもどこに行っても、基本的なフィーリングは合うよねっていうところはあるんです。例えば3人で出かけていても、いい椅子とか、いい食器とかを見るのが好きなんですよね。その感じがすごい大事だなと思っていて、そういう身の回りのものからよくしていくっていう価値観が3人の中に共通してあるものなんだって気づかされたんです。これは私個人の感じ方なんですけど、アート――特に現代アートってちょっと触れづらいものになってしまったり、あるところではすごく高尚なものとして扱われたりとか、そこに対して私はちょっと違うんじゃないかなっていう感覚があるんです。もっと身近なものとか手の届くものに大切さを感じているという価値観があって、そこがなんとなく私たち3人にはあるような気がしています。

── 小牧さんの書く歌詞には、あらゆる境界線が曖昧になっていく感覚が描かれることが多いのですが、そこにはmonjeの3人の価値観の独特の共有の仕方が影響されているのでしょうか?

小牧 歌詞は、かなりかなり個人的に進めていることで……でもどうなんだろう? 今指摘されて初めてそういうこともあるのかなと思ったんですけど、でもおっしゃったような、私が歌詞で書く感覚というのはもともと私が持っているものなんですよね。私は藝大に入る前にスペインの大学に行っていて、高校の時もブラジルに1年留学してたりして、これは藝大で自分の作品を作っている時も大事にしている感覚で、そこは意外とmonjeと地続きなんですけど、身体を使って他者とコミュニケーションをとっているという意識が私の中にはずっとあるんです。子供の頃に10年くらいクラシックバレエをやっていたということも関係していると思うんですけど。コミュニケーションにおいて身体が曖昧になっていく感覚っていうのが私にとっては自然なんですけど、でもそれは他の人とは少し違う感覚なんだなっていうのを藝大に入って感じ始めて、だからすごく個人的なテーマとしてあるものなんですよね。曖昧さっていうのは社会的にはネガティブに捉えられることが多いと思うんですけど、私の中ではポジティブなんです。境界の無さっていうのは。

森山 人間関係においてもってことだよね。

小牧 そう。国境とか言語とか、私もいろんな言語を話すっていうのがあって、そういう曖昧さも込みで、性別だったり国籍だったり、いろんなものが流動的なものとして私の中にはあるんですよね。

テーマが「衣食住」になって、それが私たちの最初の作品としてあることの大切さっていうのは必ずあると思います(小牧)

── 今回J-WAVEのSONAR TRAXに選出されたのがEP『衣』に収録されている「madobe」ですが、どのようなプロセスを経て出来上がった曲なのでしょうか?

森山 最初に歌詞がつるっとあったよね。

小牧 『衣』『食』『住』のEPの中で、この曲だけが詞先なんですよ。

森山 それ以外は、曲先だったり同時だったりなんですけど。これは完全に歌詞が先にあって、ベースとなるトラックは同時進行していた気がするんですけど、メロディと曲の構成は歌詞があったからこそできたものですね。ここで小牧が改行してるからBメロにしてやろうって(笑)。

小牧 私は音楽の歌詞として書いているつもりは全くなくて、普段からボーッとしている時とか電車に乗っている時に言葉が浮かんだらiPhoneのメモに書き留めておくんです。だから別に作詞してるっていう感覚でもない羅列だったから、これって曲の構造にしたらどうなるんだろうっていう感じはありました。

森山 AメロBメロはわかりやすくあるんですけど、サビの前に謎のパートがあって、あそこは歌詞が先にあったからそうなっているという感じです。

── 曲を作る側からすると詞先はやりやすいですか? それともやりにくさがあったりしますか?

森山 詞先は楽ですね。構成のことも考えなくていいし、メロディのリズムについても考えなくていい。言葉があるならそれに従うしかないから。

小牧 逆に私にとっても新鮮で、それまでは森山くんが作った音楽に乗っているボーカルラインに言葉を当てはめてやっていたんですけど、何の縛りもない状態でわーっと書いたものが曲になったので、すごい不思議な感覚がありました。

森山 だから一体感はよりあるなって思うよね。歌詞の内容と曲の構成とかリズムとか。

小牧 出来上がった時に不思議だったよね。ふたりで、へー、みたいな(笑)。

森山 この「madobe」が『衣』『食』『住』の中で最後に制作した曲なんですけど、そこに来て「いいじゃん!」っていう曲ができたっていう実感はありますね。気に入ってます。

── 先に言葉をもらったら、そこからイメージを膨らませていくと思うんですけど、最初にイメージしたことは何だったんですか?

森山 狭い空間から広い世界を見ているっていう印象があったんですよ、詞の情景描写的に。なのでそこをうまく音楽で書き分けられたらなって思いました。

── サウンド的にも国境の無い感じというか、独特のエキゾチシズムがありますよね。

小牧 国境の無さっていうのは私にとっての音楽がまさにそういうものとしてありますね。アニソンとかJ-ROCKばかり聴いていた頃もありましたし、ブラジルに留学してラテンのポップスの面白さを知ったり、そこからレゲトンとかサルサとか、それに両親が聴いていた古い日本のポップスも私の中にはあるし、本当に境目がないんですよね。

── ここまでお話を伺って感じたのは、monjeの成り立ちもそうですし、今回の『衣』『食』『住』のテーマもそうですし、コロナというものが結構大きな影響としてあったのかなと思いました。

森山 全員が等しくコロナ禍の世界で生きていくことになって、それは誰かがなんとかしてくれるっていうことでもないというか、自分がそれをどう捉えるかっていうことでしかないので、そこで僕たちはたまたまmonjeというグループを作って音楽を作っているということで、なんというか、うまく折り合いみたいなのをつけることができたのかもしれないし。

── いきなり外の世界に飛び出してっていうことではなく、窓辺から外を見ているという感覚から始めなければいけなかったというのがすごくリアリティありますね。

小牧 大学の4年のうちの3年がコロナだったっていうのはすごく悲しかったし、振り返ってみても、失われたものはたくさんあったんだろうなって思ってしまうんですよ、どうしても。それでもその中でこのグループができたのは逆に言えば、コロナ禍でなかったら3人で「Heya」を作ることはなかったし、その一点だけでも私の中では覆るくらい大きな意味を持っているんですよね。テーマが「衣食住」になって、それが私たちの最初の作品としてあることの大切さっていうのは必ずあると思います。

── だからこそ、これからどんな世界に踏み出していくのかがすごく楽しみです。

小牧 そうですね。どう開けていくのか、自分たちでも想像がついていないところではあるんですけど(笑)。

森山 楽しみだよね。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

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リリース情報

デジタルEP『衣』
2023年3月10日(水)配信開始
1 rush
2 mi
3 madobe

プロフィール

monje
現役藝大生の森山瞬、小牧果南、中川琉那の3人で構成されるクリエイティブチームmonje《読み:モンジュ》
2022年8月に「Sangria」でデビュー。共同制作された音楽やアートワークには、メンバーそれぞれの持つ多様な芸術的背景が反映されている。
主に森山が作曲、小牧が作詞・歌唱、中川がMVやジャケット、衣装等を含めたアートディレクションを担当している。

関連リンク

Twitter:https://twitter.com/monjeejnom
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番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW