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BREIMEN/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

BREIMEN・高木祥太インタビュー「『yonaki』の音楽的なテーマは“人力サンプリングトラック”」

特集連載

第78回

櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介するJ-WAVE『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。

今回登場するのは、5人組オルタナティブファンクバンド・BREIMEN(ブレイメン)。3月に行われたイベント『Live! ロックちゃん2023』でも圧倒的なステージで会場を沸かせた彼らの新曲が到着した。ドラマタイアップとしてすでに話題となっている「yonaki」はいかにして出来上がったのか──。ベース&ボーカルの高木祥太を迎えて、昨年7月にリリースした3rdアルバム『FICTION』から、この新曲までの流れを聞いた。

すでにあるものに対して殴り込みに行くわけでもないし、ただただそことは距離を置いて違う新たな道を作りたい

── 久しぶりのリリースですね。

そう言われてみれば確かにですね。この前はアルバム(『FICTION』)か。

── アルバムが昨年の7月でしたから。

てことは、リリースの2、3カ月前に完パケてるから、まる1年ですね。いやでも全然そんなに空いてるっていう体感はなかったですね。

── ここまで空いた理由は何かあるんですか? 忙しかったのはもちろんあるんでしょうけど。

カラカラになっちゃったんですよ。ま、アルバムの後はいつもそうなるんですけど、でも今回は特にカラカラでしたね。内容的にも、自分の中にあるもろもろを一回全部空にしようっていう感じだったので余計にそうなっちゃんたんですよね。で、ライブで曲をやっていって、曲が成長していくのが楽しいっていう感覚はあったんですけど、そこから新たに曲を作るっていうのが本当になかなかできなくて。ただいつまでもそうは言ってられないので、今年に入ってすぐくらいのタイミングで、バンドメンバー全員で一回スタジオに入って何か作ってみる?っていうのをやったんですよ。それはリリースとかタイアップとか関係なく。

── ああ、なるほど。

いや待てよ、去年もそういうのが一回あったな。アルバムの後しばらくしてちょっとスタジオ入ってみようっていうのが。でもその時はマジで何もできなくて。このままだと無意味な時間になっちゃうからセッションしようって言って、それで始まったのがYouTubeの生配信セッションなんですよ。そんなことをやりながら曲を作ることから逃げ続け(笑)。ってわけでもないんだけど、でもできないから。ストックもないし。ていうところから今年の頭に合宿したんですよ。そしたらそこで1曲できたんですよね。今回のシングルとは別のやつなんですけど。そこでちょっとエンジンがかかった感じっていうのがあって、タイアップ(ドラマ『月読みくんの禁断お夜食』主題歌)の話が来たっていう流れだったんですよ。

── まず、アルバムを経てのサウンド面での積み上げというのは確実にあったんですよね?

それはめちゃくちゃありましたね。ミックスとかも含めて、次はこういう音像にチャレンジしたいよねとか、そういうのはメンバー全員の中で確実にあったんですよ。そう、だから、音楽的な面だけで言っちゃえばすぐに作れたんです。でも俺はテーマとか歌詞がないと曲ができないんですよね。それがないとなんでもよくなっちゃうというか。もしかしたら2年後とかには違う作り方もできるのかなとは思うんですけど、現状はオケから作るっていうのがなかなかできないっていうか。理由がないと作れない、みたいな。

── 言葉なりテーマがないと音の正解の基準がわからないっていうこと?

そこまで突き詰めたA型じゃないんですけど(笑)、ゼロイチとレスポンスがあるとして、曲作りってその両方が入り乱れている状態だと思うんですよ。例えば、ドラムがこうだからっていうのがもし仮にあったら、じゃあベースはこうなるよねっていうことなんですけど、その前にドラムがこうなるっていうことのゼロイチがあるはずなんですよね。ざっくり歌詞がこうだからこういうテンポとか。ただまあ、さっきも言ったみたいにそこらへんも入り乱れてはいるんですよ。その、1月に合宿して最初にできた曲で言うと、オケが先ではあったんですけど、そのタイミングで絶妙に俺が言いたいことっていうのが生まれ始めたんですよね。そうじゃなくて、オケはあるけど歌詞は何にも思いつかないわっていう状態の時は普通にオケごとボツになる。だから基準とか整合性の問題というよりも、単純に前に進めないんですよね、気持ち悪くて。

── もしかしたら言葉が早い段階であるということがBREIMENを単に上手いだけのバンドにしていないという側面はあるのかも。

そうなんですよね。たぶん俺らって、個々が選択肢をたくさん持てるプレイヤーだと思うんですよ。だからこそ、いい感じのオケを作って、そこにいい感じの歌詞を乗っけるっていうことになると、ただ普通にいい感じの音楽になっちゃうんですよね。そこは結構最初の方から俺は認識していて、だから歌詞やテーマのあるものに対して音楽的なアプローチをしていくっていうことにしないと、普通に上手いねで終わっちゃうっていう危惧が常にあるんですよ。

── それっぽいものになっちゃうと。

それがめちゃくちゃ嫌いなんで、だからいかにいい感じじゃなくするかと(笑)。

── じゃあ歌詞やテーマというのは、いい意味での制約としてバンドの中で機能しているんですね。

もう俺の中でのカルマですね。思うんですけど、ある程度技術力の高いプレイヤーって一生パンクにはなれないじゃないですか。本当の意味で。楽器が上手いか下手かっていうベクトルにしたら、はっきりとあると思うんですけど、音楽としていいか悪いかっていうベクトルは極論すれば存在しないと思うんですよ。優劣とか上下っていうのは。だって俺は一生シド・ヴィシャスにはなれないですもん。ある程度弾けるっていう自負があるからこそ、上手くなりたくないな、みたいなのはあって。それよりも面白くなりたいとか、そっちの方が強いですね。そこがプレイヤーとしてもあるし、曲を作る人としてもあります。昔、自分たちのことを“ミクスチャーファンクバンド”って言ってたんですけど、それを“オルタナティブファンクバンド”にしたんですよ。別になんでもいいんですけど、オルタナティブってすでにあるものへの対抗としてあるものっていうロック的な感じではなくて、別のものとしてただあるっていう感じの意味なんですよ。あ、俺ってそんな感じだなって思ったんですよ。すでにあるものに対して殴り込みに行くわけでもないし、ただただそことは距離を置いて違う新たな道を作りたいっていうか。

── そういう意味で言うと、特にサックスの林さんのプレーが最近はオルタナティブ感満載ですね。

そうなんですよ。『FICTION』のときにサポートを入れないで5人の音だけでっていう制約の下でやったので、ホーンセクションではなく林さんはひとりでいろいろとやらなければいけなかったんですよ。そこでパッカーンと開いたんでしょうね(笑)。俺が思うに、日本のサックスプレイヤーの中で林さんが一番上手いじゃなくて、変だと思います(笑)。一番新しいことをやっている気がしてて、誰よりも。

── きっと、5人が5人ともそういう感じのアベンジャーズなんですね、BREIMENは。

強くないけど、変、かつ、みんなバラバラの方向を向いているっていうね(笑)。

自分の中で変にハードルを上げすぎて、俺はもう修羅の道を行くしかないって思ってたので(笑)

── 「yonaki」はドラマの主題歌になっていますが、タイアップは?

初めてなんですよ。

── カラカラのタイミングで(笑)。

結果論ですけど、あ、俺って絞り出して曲書けるんだって思いました(笑)。曲作りのアプローチに関してもいい経験になったというか。

── それは?

今までは基本的には全部実体験で書いてたんですけど、このままそこばっかでやっていったら破滅しちゃうだろうなって思ってたんですよ。やっぱり俺は天邪鬼で、ほかの人が歌っていることを俺は歌いたくないなっていうところがあって。自分の実体験の面白い部分をベースに歌詞にしてたりしたんですけど、最近は、例えば“愛”みたいな普遍的なテーマもそうだし、そういうものでも今の俺が普通に言葉にしたらほかの人と被らないなって思えるんですよね。それまで、ここでこんなこと言わないだろとか、語感重視で言葉を選んだりしてきたことが、ようやく身についたんでしょうね。ベースプレイと同じで、自分はこういうプレイヤーになりたいっていう目標に向かって練習してたのと同じように、歌詞も、ここまで3枚のオリジナルアルバムを出して、自分の書きたい感じの歌詞を念頭に置きながら書いてった結果、今は普遍的なテーマでも自分なりに面白く書けるなって思ったんですよ。そこらへんの変化を感じながら「yonaki」の歌詞は書きました。

── 奇しくも自分ごととして“FICTION”を作れるようになってきたっていうことですね。

ああ、そうですね。実体験として、という部分もありつつ、より普遍的なものを相手にして書いたっていう感じはしますね。なんていうか、人間のいろんな感情って名前がついているけど、でもそれだけじゃないものって絶対にあるじゃないですか。なんで泣いてんだろ、みたいな。そういう名付けようのない感情のことを書いてみたいなと思いました。

── 実体験を創作のパースペクティブまでグッと広げていける感覚というのがあったんですね。

その感じはありましたね。広げていくっていうことに対して自然と着手できる感じが今は自分の中にありますし、そこを──あくまで自分的にですけど──嫌味なくできる感じがあるというか。

── そこが職業作詞家さんみたいになっていくとまた違うという。

そう。そこの塩梅が難しいから、自分的に曲を書くのが遅いんです。多作に振り切ってやってしまったら、絶対にそっちに行っちゃうと思うんですよ。そうしないで、自分なりのハードルを高く設けることで1年書けなかったけど、自分的にはだからこそ納得いくものが作れているのかなと思いますね。

── この「yonaki」の歌詞って、もちろんこの曲としての世界観というのはあるんだけど、祥太くんの創作としては地続きだなというのがよくわかるというか。アルバム『FICTION』に収録されていた「MUSICA」と共鳴しているような内容なんですよね。君と僕の話でもあるし、僕と音楽の関係でもあったりするという。そこを別角度から、今度はより物語として捉えているような気がします。

トピックとしては今までにないものではあるんだけど、そうですね、それ、まさに最近思ったことなんですよね。忌野清志郎のインタビューをまとめた雑誌を読む機会があったんですよ。アルバムを3枚出して、また歌ったことのないことを探して歌わないといけないのか!って思ってて。このまま1回海外に亡命しないともう書けないんじゃないかとか、結構どうしようって感じだったんです。でも清志郎もそうだし、ほかの人も結構、同じテーマを違う言い回しで歌ってたことを知って、そういう攻め方あるんだっていうことを真に受けることができたんですよ。もちろん、そういうやり方があるっていうのは気づいてはいたけど、でも実は気づいてなかった、みたいな感じだったんですよね。だから俺のなかのアティチュードみたいなものを別の角度で見せていけば、それがBREIMENの音楽としてより多角的に理解してもらえるのかなって思ったんですよね。清志郎の歌も、根幹は同じですよね。

── そうですね。大きな括りで言うと“愛”ですよね。「スローバラード」も「雨上がりの夜空に」も。

そう。それでいいんだって思えたというか。自分の中で変にハードルを上げすぎて、俺はもう修羅の道を行くしかないって思ってたので(笑)。そう考えるとやっぱり3枚アルバム出したっていうことが大きかった。否応なしにこの3枚が自分だから。2枚だとちょっと足りなくて、3枚出すと客観的に自分を見ることができてて、自分の歌とは? とか、自分の歌いたいこととは? みたいなことを冷静に考えることができるようになったんですよね。『FICTION』を出した2022年後半はライブはやってたけど、曲ができないから創作的な面ではちょっと落ちてたんです。だけど、年明けくらいからはいろんな肩の荷がちょっとおりた感じがするというか。

── きっと『FICTION』である面での一区切りがついたんでしょうね。

第一章が終わったんだっていうのは思いますね。このインタビュー、次のアルバムの時にやりたかったですね(笑)。

── そこはそこでよろしくお願いします(笑)。

そうですね(笑)。俺は結構アルバム単位で物事を考えているので、だからこの「yonaki」もアルバムの1曲なんですよ。

往年のサンプリングミュージックを自分たちの素材だけでやってる感じ

── 「yonaki」のサウンドアプローチについて聞きたいんですけど、まずはこちらの勝手なイメージを言うと、もちろん基本はセッションから始まって、そこでできていったものを素材として打ち込みの音と並列にした上で再構成した、という感じがするんですけど、いかがですか?

あ、でも、基本的にはあってるかもしれないですね。この曲の音楽的なテーマは「人力サンプリングトラック」なんですよ。大枠の進行とかサウンドとかメロディーとかは、それこそ一回仮で組んだんですよ。大きく言ったら、今あるものはversion.2の方で、version.1は全然違うアレンジのものがあったんですよ。v.1からv.2を作るときに、いろいろこねくり回しちゃってたので、1回シンプルに流れだけ録って、そこから再構築していこうっていう。そうしたときに、前のバージョン含めてプロジェクト・ファイルが膨大になってたんですよ。だから自然に、この時のスネアの音よかったよね? みたいな感じでやってたら、なんかこれ人力セルフサンプリングだなって。往年のサンプリングミュージックを自分たちの素材だけでやってる感じというか。そこはやるまで自覚的じゃなかったんですけど、だんだん音楽的なテーマというか制約になっていったんですよね。

── 不思議な鳴り方をしていますもんね。

それぞれの音を不自然に短くしたり、切ったりとか、音が鳴っていな無音の部分を、普通はエアー感として残したりするんですけど、そこを全部切ったりとか。

── ハイハットの音も奇妙な入り乱れ感がありますよね。

そうそう。あれはSo(Kanno)ちゃんの買ったサンプラーになるのかな、その音と生の音が両方鳴ったりしてますね。あとは、『FICTION』で5人だけっていう制約を設けた反動もあって、初めてストリングスを入れたんですよ。これまで基本、BREIMENでは生のストリングスは禁止してたんですよ。それをとうとう解禁しようかなと。でも、ストリングス・カルテットとかじゃなくて、チェロで多重録音したんですよ。だから響きがちょっと暗いし重いし、みたいな。かつ、録ったものをサンプリング素材として書き出して、切ってみたいなことをして。俺、結構このチェロの感じは自分的にもすごく納得感あるんですよね。

── なんか、あのチェロがあることによって、いわゆるシティポップとは一線を画した音楽になっているというか、どっちかと言えば、90年代のR&Bを想起させるんですよね。

わかりますし、すごくうれしいです。あそこでたぶん普通にバイオリンとかが入ってきちゃったら、もっとJ-POPになっちゃうんです。だから、タイアップ上は流れないんだけど(笑)、俺的なこの曲の推しポイントはラスサビなんですよね。

── あそこで描き出される間が絶妙ですよね。

そこに初めて空間があったんだっていうね。

── 音像として、いい意味で奇妙な感じというのは嗅ぎとれたんだけど、今言葉として「人力サンプリングトラック」のことを聞いて、より深く曲の全体像が理解できた感じがします。ひとりの人間やその生活、感情、その一瞬をモンタージュして表現しているような感じがして、いやぁ、さすがに深いなと。

モンタージュっていいですね。音楽的な話ですけど、コード進行も実はこれまで禁じてたものなんですよ。すごいコアな話をすると、コードネームに番号があって、Ⅳ(F)-Ⅲ(Em)-Ⅵ(Am)っていう進行があって、これ、めちゃくちゃよく使われる進行なんですよ。この間たまたま、『Live! ロックちゃん2023』の打ち上げでくるりの岸田さんと話したんですけど、くるりの「琥珀色の街、上海蟹の朝」もそれまで岸田さんがずっと避けてたコード進行を使ったって言ってたんですよ。この曲を作るときに、コード進行もそうだし、いろいろと自分がやったことのないことをやってみようと思って作った曲だったんですって。

── R&Bのリズムもラップもそうですよね。

そう。それで言うとこの「yonaki」も、まさにそういう曲で、さっき言ったコード進行って、ないことはなかったんですけど、なるべくやってない、まずこのテンポ感ではやらないものだったんです。でも、あえてこれにしたことによって、絶対ありがちなものっぽくならないようにしなきゃって脳みそが働いて、ある意味守備範囲の広い曲ができたなって思いますね。

Text:谷岡正浩 Photo:岩佐篤樹

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リリース情報

デジタルシングル「yonaki」
2023年5月17日リリース
配信リンク:https://va.lnk.to/reuSTb

プロフィール

BREIMEN(ブレイメン)
高木祥太(Ba&Vo)、サトウカツシロ(Gt)、いけだゆうた(Key)、ジョージ林(Sax)、So Kanno(Ds)の5人組からなる、オルタナティブファンクバンド“BREIMEN”。バンドを軸としながらも各々が有名アーティストのサポートを行い、その確かな演奏技術と、セッションからなるジャンルに拘らない型破りのサウンドセンスで熱烈なファンを獲得している。2022年5月9日にリリースされた岡野昭仁×井口理「MELODY(prod.by BREIMEN)」ではBa.Vo 高木祥太が作詞・作曲、BREIMENメンバーが編曲・演奏に参加。2022年7月20日には3rdアルバム「FICTION」をリリース。各イベントやフェスでも入場規制がかかるなど2020年代屈指のバンドとして注目を浴びている。

ライブ情報はこちら

関連リンク

BREIMEN オフィシャルサイト:https://www.brei.men/

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW