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Furui Riho/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

シンガーソングライター・Furui Rihoの“いま”「やっぱり、テーマは“愛”なんですよね」

特集連載

第79回

櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介するJ-WAVE『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。

今回登場するのは、リリースする楽曲が各種サブスクリプション・サービスで続々プレイリストインするなど、その存在が注目を集めているシンガーソングライター・Furui Riho(フルイ リホ)。ルーツであるゴスペルにR&B、ヒップホップなどの要素を織り混ぜ、独自のポップソングをつくり上げるセンスは抜群だ。5月10日にリリースした最新シングル『Super Star』でもその手腕はいかんなく発揮されている。リリース直前に行ったLIQUIDROOMでのワンマンライブ(ソールドアウト!)の感想も含め、今のFurui Rihoを語ってもらった。

飽きのこさせない展開や工夫っていうのは毎回毎回曲を作るときにすごく考えますね

── まずは、5月7日にLIQUIDROOMで行われたワンマンライブについて伺います。素晴らしいライブでした。満員のオーディエンスの前でのパフォーマンス、いかがでしたか?

最高でしたね。暗転してSEが鳴ってステージに出て行って、1曲目「I'm free」のイントロを聴きながら見たフロアの光景は、なんて言うんでしょう、「ここまで来たんだな」って思えましたね。今までやってきた過程を考えるとグッとくるものがありました。実は前の日まですっごい緊張してて。

── そうなんですか。

今までで一番緊張してたんじゃないですかね。こと音楽に関しては、私は自分にすごく厳しいので、常に100%の自分でいなければいけないって思っていたんです。でも、こんなに緊張するまで自分を追い込むのはよくないなって思って、明日(ライブ当日)は80%の私でいいやって思うようにしたんですよ。そしたらすっと緊張がなくなって、ステージに立つ瞬間まで、間違っても失敗してもいい、むしろ、そういう自分を見せるからこそ、みんながポジティブになれるし、これでいいんだって思ってもらえるって考えるようにしたんです。その結果、すごく自然体でライブができたんですよね。

── そういうメンタルでライブに臨めたのは初めてですか?

初めてです。今までは、絶対に間違えないぞ、とか、MCも一言一句まで突き詰めて……みたいな感じでした(笑)。ここでこういうふうに煽るぞ、みたいな(笑)。ほんと細かいとこまで根つめて考えてリハもしてって感じだったんですよ。

── じゃあ、LIQUIDROOMのワンマンは実は今までで一番ライブっぽいライブができたということが言えるのかもしれませんね。

まさにそうですね。すごい楽しかったです。一番違ったのは、終わってからも冷静な自分がちゃんといたことですね。今までは、ステージに上がって、これもやらなきゃあれもやらなきゃとか、みんな楽しんでくれたかな? 私はちゃんとできたかな?っていうことばかり考えていたんですよ。それって、自分のパフォーマンスや目の前のことに必死であまり周りが見えていないっていうことなんですよね。でもリキッドでのライブは、お客さん一人ひとりの顔がはっきり見えたり、ひとつひとつのシーンを忘れないでおこうって思っている自分がいたり、ステージを下りてからも、楽しかったなぁって素直に思えたんですよね。どうだったかな?ではなくて。

── そういうメンタルになれた要因は何だと思いますか?

やっぱり私を支えてくれているスタッフの皆さんへの信頼が大きいですね。それとバンドが素晴らしいので、そこに対しては絶対的な安心感がありますね。

『Furui Riho Oneman Live 2023 -Introduction-』@ LIQUIDROOM Photo:tatsuki nakata

── 丸ごとバンドサウンドではなくて、そこに打ち込みの同期があるというのがまたFuruiさんの音楽を表現する上ではいいなと思いました。

ああ、そうですね。私もそこを追求してやりたいとは思っていて。バンドサウンドにシーケンスの同期を使った形っていうのを。ただ、次のライブでは生のベースを入れてみたいですね。

── そこのバランスは面白いチャレンジになっていきそうですね。アンコールでは、今回リリースする新曲「Super Star」を初披露しました。感触としてはいかがでしたか?

やっぱり初めてだったので、もちろん練習はしたんですけど、まだどうやったらいいか手探りな部分は結構あったのですごく不安だったんですよ。でも歌い終わったら、スタッフのみんなが、「すごくよかった」って言ってくれたので安心しました。

── 「Super Star」のパフォーマンスを観ながら感じたのは、やっぱりFuruiさんの楽曲はどれもサビの説得力がものすごくあるなっていうことなんですよね。特に「Super Star」はわかりやすいじゃないですか、構造的にもメロディとしても。だから、あの時点であの会場にいたオーディエンスは全く知らない曲ではあったけど、もう定番曲かっていうくらいのノリでしたからね(笑)。

うれしい。私の中で大切にしているのは、1回聴いて惚れさせたいっていうのがあるんですよね。もちろん、何回も聴いてやっとその良さがわかるっていう曲の素晴らしさもあるんですけど、でも、なかなか今の時代って難しいじゃないですか。ストリーミングでどんどん曲を飛ばしながら聴けてしまえるので。だから、パーツとしてのパンチ力と全体として飽きのこさせない展開や工夫っていうのは毎回毎回曲をつくるときにすごく考えますね。

「私はこうなんだけど、どう?」っていう方が、音楽としても自分の生き方としてもクリーンな気がしますね

── それでは、新曲「Super Star」についてお聞きしていきます。この曲に至るまでに前作の「ピンクの髪」(2/15リリース)がひとつ重要な成果としてあると思います。「ピンクの髪」で掴んだ自信というのはどういうものでしたか?

いつも曲をつくるときに、「私らしさってなんだろう?」っていうのをテーマにしていて、これかな? これはいいけどちょっと違ったかな? みたいな試行錯誤をずっと繰り返しているんです。で、これかな?っていうのが、これだ! になったのが「ピンクの髪」だったんですよ。曲のイメージとしては、インディ・ポップの要素を含ませて、キャッチーに無邪気に、真面目だけどシュール、みたいな自分っぽいエッセンスをうまくブレンドできたんですよね。そこのブレンド感というか方向性みたいなものを次にもつなげていきたいなって思えました。自分のパーソナリティをきちんと落とし込んだ上で、それを客観的に好きだと思えるところまで表現できたのが「ピンクの髪」でした。

── ポップな表現ってすごく難しいですよね。つまり、リスナーやオーディエンスといった自分以外の存在を意識することがポップであること、というふうに考えてしまいがちじゃないですか。そうすると、とたんに表現としては薄味なものになるというか、自分からどんどん離れたものになっていきますよね。そうではなくて、多くの人に届けるために、自分自身をしっかり通したものじゃないといけない、それがポップであるということの絶対条件であるとすれば、今Furuiさんがおっしゃったことっていうのは、まさにポップであるということそのものなのかなという気がしました。

実は「ピンクの髪」のときに、そっちに行きそうになってたんですよ。

── 「そっち」というのは、言葉を選ばずに言えば、大衆に迎合する方向に、ということですね。

はい。スタッフもたくさん増えてきて、責任も大きくなって、みんなを幸せにするにはたくさんの人に聴いてもらわなきゃっていうところから、売れる音楽ってなんだろう? みんなが好きな音楽ってなんだろう?って、どうしても意識しちゃったんですよね。でも結局、そこに答えはないんですよね。自分がいいと思うもの、自分が信じたもの、それがある意味ブランドになって浸透していく──もうそれしかないんですよね。人にすり寄っていくんじゃなくて、「私はこうなんだけど、どう?」っていう方が、音楽としても自分の生き方としてもクリーンな気がしますね。

── そうした「ピンクの髪」で改めて得た確信とそこで得られた自信を、次の作品ではさらに発展させていこうと思ったのか、それとももっと深掘りしていこうと思ったのか、どちらですか?

どっちかなぁ……どっちもあるなぁ。ひとつは、「ピンクの髪」で見つけた“自分らしさ”を引き継いでみて、みんなの反応を見たかった。

── うんうん。

というのもあるし、もうひとつは、本当にこれでいいのか?っていうのを確かめたかったっていうのもあるんですよね。だからどっちかって言うと、深掘りの方になるのかもしれませんね。だから「Super Star」に対するみんなの反応がすごく楽しみなんですよ。

── でも、この曲は、やっぱり普通にポップって割り切れるものではないなと思いました。もちろんいい意味で。イントロの音色もそうだし、ヴァースのメロや歌い方も含めて、かなり細やかなチューニングが施されていて、いわゆるJ-POPの文脈にはないものですよね。そこからあのパッと開けるようなサビに至るという。なんか難しいことをそうとは思わせずにさらっとやってのけているなっていうふうに思います。

なんか、私のやろうとしたことが伝わっていてうれしいです(笑)。

本当に愛に溢れた人生だったなって最後に思えることが人生の最終目標なんです

── Furui Rihoの作曲における最も根幹となる作法は何ですか?

いいメロディが思いついたときって涙が出そうになるんですよ。そのときめきを何よりも大事にしています。何も心が動かなかったら、それは全部捨てています。どんなに時間をかけて作ったものでも、最終的にときめかなかったら違うって。少しでもときめきのあるものをつないでいってようやくFurui Rihoの曲になるんです。だから中でもサビって、最高にときめいたメロディなので、なかなか出てこないんですよ(笑)。私はいつもAメロから作っていって、そこから導き出されるようにBメロ、サビっていうふうにつながっていくんですけど、サビに行くときは緊張します(笑)。

── 高い山を登るような(笑)。

そうそう、深呼吸して(笑)。でも「Super Star」は比較的早く出てきた方ですね。

── で、そこから作詞という新たなる高い山があるわけですよね。

そうなんですよー(笑)。そこは今回一番悩みましたね。曲も含めてトータルで2週間しかなかったので。結構追い込まれました。

── すごくあけすけに、バカなフリしてあえて言いますけど(笑)、とくにこの「Super Star」のサビに対する言葉は、いや、これしかハマりようがないじゃんって思ってしまったんです。なんだったら言葉の中にこのメロディとリズムが含まれているようにさえ感じられる。なんでそんなに追い込まれたの?って(笑)。

あはは! や、そうですよね。私もできてからいつもそんなふうに思うんですよ。これしかなかったじゃんって。

── 答えを知って言ってるから、ズルもいいとこなんですけど(笑)。ゼロをイチにする人からしたら腹立つよね(笑)。

いやでも、うれしいですよ(笑)。そんなふうに感じてもらえてるってことは、メロと言葉が正解だったってことだから。でも確かに、このサビは言葉と同時に出てきたんですよね。だから時間的に追い詰められてはいたけど、サビに関しては言葉も含めてすでにあったっていう感じでした。

── この曲のサビの歌詞の中心は英語なんですけど、もはや何語にも聴こえるというか。言葉が音楽そのものになっているというか。そこがFuruiさんの才能でありセンスだなと思いますね。

ありがとうございます。英語って子音があって、そこがグルーヴになっていくんですよね。でも日本語って全部母音で終わっちゃうので、それをいかにグルーヴィに聴かせるかとなると、例えば「タ」を「ツァ」っていうふうに発音したり、そういうふうな工夫が必要になってくるんですよね。でもそういう作り方ばかりになると、今度は聞き取りづらくなるんですよ。だからその型というか、そこに頼らずに声とノリでグルーヴを作っていかに聞きやすくするかっていうのはずっとある課題ですね。だからそこはこの曲に関してもすごく悩んだところでした。

── そこは日本のポップスやロックが続けてきた試行錯誤そのものでもありますよね。Furuiさんの楽曲に出てくる特徴的なメロラップ──話すように歌う独特のヴァースは、まさにそうしたトライの賜物と言えるんですかね。

そうですね。なのであえてレイドバックした歌い方をしてグルーヴィにさせるっていうことをしています。

── 今、Furui Rihoはどういうプロセスにあると思っていますか?

LIQUIDROOMのライブのタイトルにもあった通り、“Introduction”じゃないでしょうか。事務所もできましたし、今回からレーベルの力も借りることができることになって、いよいよ「いくぞ!」って準備が整いましたね。チームFurui Rihoアベンジャーズが横並びでいます(笑)。すごい楽しみです。忙しくなって大変なこともあると思うんですけど、これがやりたかったので。

── では、記念すべきスタートのタイミングで、こんなことを伺わせてください。Furuiさんが音楽をやっている意味は何ですか?

やっぱり、テーマは“愛”なんですよね。ずっと。私は自分が死ぬときのことを考えるんです。たくさん愛したな、たくさん愛されたな、本当に愛に溢れた人生だったなって最後に思えることが人生の最終目標なんです。人を愛するって簡単なことじゃないと思うんですよ。嫌なことをしてしまうこともあるだろうし、されることもあるだろうし。受け入れられないこともたくさんあるだろうし。そういうことを超えたところにある究極の愛を持てるかどうかはわからないけど、そこに死ぬときに近づきたいってずっと思ってるんです。要するに、少しでもいい人間になりたいっていうことです。それを叶えるために私は今音楽をやっていて、そこで出会った人たち──もちろんリスナーも含めて──に対していかに自分が愛を与えることができるか、そして愛されることができるか、それをずっと人生の目標としてやっているんです。だからこの音楽も全部、そこをベースとしてやれていれば正解なんですよね。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

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リリース情報

デジタルシングル「Super Star」
配信中:https://lnk.to/super_star

ライブ情報

『SUMMER SONIC 2023』
2023年8月20日(日)ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
※チケットSOLDOUT
詳細はこちら

プロフィール

Furui Riho
幼少期から続けたゴスペルクワイアでの活動をルーツに作詞・作曲のみならず、時には編曲にも携わる北海道出身のシンガーソングライター。ユーモアに富んだリアルな歌詞、細部までこだわったグルーヴで人気を集める。大学時代よりソロとしての活動を行っていたが、2019年にリリースされた初の配信シングル「Rebirth」が現在の活動に繋がる。2022年には「Rebirth」以降の活動の集大成となる1stアルバム『Green Light』をリリースし、アーティストとしてのポテンシャルと、自己プロデュース能力の高さを印象付けた。2023年、Spotify「RADAR: Early Noise 2023」に選出されるなど、今最も注目されるアーティストのひとり。また、aoをはじめアーティストへの楽曲提供も行うなど、作曲家/プロデューサーとしての顔も持ち合わせている。

関連リンク

公式サイト:https://www.riho-music.com/
Twitter :https://twitter.com/furui_riho/
Instagram:https://www.instagram.com/furui_riho/
YouTube: https://www.youtube.com/@Furui_Riho/

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW