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浦小雪/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

シンガーソングライター、浦小雪インタビュー「できるだけ、聴く人によっていろいろな捉え方ができる歌詞を書きたい」

特集連載

櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介するJ-WAVE『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。

今回登場するのは、長崎県出身のシンガーソングライター、浦小雪(うらこゆき)。Sundae May Club(サンデー・メイ・クラブ)での活動と並行してソロとしてのキャリアでも注目を集める彼女の生み出す楽曲は、とても共感性の高いものとなっている。彼女の個人的な物語から出発したものが、リスナーのいつかどこかで見た風景や感情と合わさる瞬間に発生するロック的ダイナミズムの震源を求めて、浦小雪のルーツ、そして創作方法から探る。

柔らかくいたいなと思っていて、歌をつくる時のスタンスとして

── 音楽に興味を持ち始めたのは何がきっかけだったんですか?

親の影響があって、家の中でずっと音楽が流れているような家庭だったんですよ。ザ・ビートルズとかカーペンターズとかビリー・ジョエルとか。だから自然と音楽に触れる環境がありました。それで、自分から音楽にのめり込むようになったきっかけは、小学校3年生くらいの頃に聴いたアヴリル・ラヴィーンです。彼女の歌が長崎のテレビの天気予報でかかっていたんですよ。そこで知って、初めて自分でCDを買ったのがアヴリルでした。

── まわりの友達でアヴリルを聴いている人はいました?

いえ。ステッカーをランドセルに貼ってたんですけど全然みんな無反応でした(笑)。

── ご両親が音楽をやっていたとかそういうことではなかったんですか?

そういうことではなくて。両親共、楽器はやっていなかったのですが、リスナーとして色々な音楽を聴いていたみたいです。音楽の趣味が合うから結婚したふたりだったので。

── え、すごい。いい話ですね。

ふたりは洋楽が好きで、でもそれぞれのまわりにはふたりが好きな音楽を聴く人がいなくて、それで奇跡的に趣味があって結婚したって言ってました。

── で、アヴリルにはまって、そこからはどんなふうなものを聴くようになったんですか?

また長崎の天気予報になるんですけど、小学校6年生の時にそこでa flood of circleが流れてきて、びっくりして、その時初めてバンドというものに興味が湧きました。

── ちょっと待って(笑)。その天気予報のことがめちゃくちゃ気になるんですけど。アヴリルはともかく、フラッドがかかる天気予報ってだいぶん尖ってますね(笑)。

そうなんですよ(笑)。今考えたら、何でこんなにロックなのがかかってたんだろう?っていうのがいっぱいかかってました。それで中学1年生の時に初めてライブハウスにa flood of circleのライブに行って、かっこいいなーってなって、学校とかでかっこいいバンドがいるって言い続けてたら仲間ができるかなと思って。

── で、仲間ができた。

いえ、できなかったです(笑)。でも、ひとりでずっと聴いてて、楽しかったです。

── 楽器はどうやって始めることになるんですか?

最初は、いやいやピアノを習い始めて。小学校4年生の時に。祖母がピアノの先生で、やっといた方がいいよって言われて、気乗りはしなかったんですけど、まあじゃあやっておくかって感じで近所の先生のところに通い始めました。結局ピアノは2年くらいやったんですけど、ちょうどギターに興味が出てきたというのもあってやめて。それで小さめのアコースティックギターを買ってもらって、そのうちエレキギターもっていう感じでのめり込んでいきました。音楽をやることにすごく協力してくれる家だったので楽器を始めるのに何の抵抗もなかったですね。

── じゃあギターは完全に自分の意志だったんですね。

はい。ギターは完全に独学で、基礎練習から始めるとかではなくて、BUMP OF CHICKENのコードブックとかを見ながら、好きな曲を弾けるようになりたいからその曲をコピーしているうちに自然にコードを覚えていったっていう感じでした。

── 自分で曲を作ってみようっていうのは、そうやってギターの練習をしながら自然と芽生えてきたものだったのですか?

そうですね。自然な欲求だったと思います。譜面を読めるようになった時、ピアノの単音で簡単なメロディラインだけ書いてみたり、それとは別に、メロディをつけるつもりもなく詞だけ書いてみようと思って書いたり、別々にやっていたんです。で、ギターを弾けるようになるとコードで作りやすかったので、そこで初めて曲と詞を合わせてやってみようって思いました。それが中学3年生くらいの時ですね。そこから徐々に曲を増やしていって、最初はもちろん誰に聴かせるともなくっていう感じだったんですけど、高校生の時に、音楽投稿アプリに遊びのつもりで作った曲を上げてみたりしました。そうすると、「いい曲だね」っていうようなコメントが少しずつもらえるようになって、自信になっていきました。

── 言葉(詞)でいうと、一番影響を受けたものは何からになるんですか? これも音楽からですか?

言葉は、本からの影響を一番受けていますね。図書委員をやってて、ずっと本を読んでいたっていうのもあったので。特に吉本ばななさんとか柔らかい文体のものが好きで、そういうものからすごい影響は受けていますね。

── 最初はメロディと言葉は別々のものとしてあったということですが、今は創作において、そのふたつはどのような関係にあるんですか?

まず歌詞があって、そこから浮かぶメロディという感じで作っています。

── 音楽を前提として歌詞を考えるのではなく、まずは言葉として歌詞があるという感じですか?

メロディも大事なんですけど、一番伝えたいのが歌詞で、(その言葉を)歌ってて気持ちいいかどうかっていうのは全然考えずに、ただただ伝えたいことを文にして、メロディはギターを弾きながら後から乗せていくんですけど、何百回も違うメロディを歌ってみてしっくりきたものを採用するっていう感じなんですよ。

── 言葉に何度もメロディを乗せていく過程の中で、言葉が変容する場合もあるし、メロディも変わっていくし、ふたつが溶け合う瞬間があって、そこを探っているという感じなんですかね。

あ、そうですね。だから全然想定してた歌詞じゃなくなったりする場合もあるんですよ。もちろん伝えたいことの軸は変わらずにちゃんとあるんですけど、言い回しや言葉自体を変えて音楽になっていく、そんな感じですね。柔らかくいたいなと思っていて、歌をつくる時のスタンスとして。そこは大切にしているところですね。最終的に伝えたいことが伝わって楽しくできたら音楽をやってる目的というか、意義というか、そういうものが達成できるというか。結果的にそっちの方がかっこいいかなって思います。

── 創作ってそういうものなんでしょうね。つまり、最初から想定していたものの範囲で終わったら、それは自己を超えていかないから、他者の心を揺さぶるものにはならない、という。

はい。頭で考えてなかったものが最終的に出てきたりするので、面白いなと思います。

歌うことは、考える前に叫ぶ……吠えるっていうか、野性的で本能的な行為だと思っていて

── 今回SONAR TRAXになっている「潮風」は、おっしゃったように予期せぬ形で自己を超えるような瞬間を閉じ込めた楽曲になりましたか?

そうですね。この曲は海の街にずっといたっていう自分のルーツとも関わるんですけど、最初は海のことを歌いたいっていうよりは、お別れのことを歌いたいっていう気持ちだったんです。でも書いていくうちに、その舞台そのもの――海辺の情景とかの方が鮮明に浮かんできて。海とか月とか、強い気持ちが動いている時に見ている景色っていうのがバーっと出てきたんです。

── その風景が前面にあるからだと思うんですけど、この曲は昨年10月にリリースした「夏の速度」の逆側視点なのではないかなと感じたんです。「夏の速度」は男性視点で描かれていて、逆に「潮風」は女性側から描かれている。このふたりは同じ場所にいて、同じ海や月をそれぞれの心情で見ていたのではないかと。

ああ、面白い。なんだろう、そういうことって結構あって。自分ではそんなつもりはなくても、結果的にアンサーソングみたいになってたりとか、別視点で描いた曲になってるっていうことが多くて。うん、だから、これもそう。「夏の速度」は、結構美化された感じの情景と心情だったんですけど、「潮風」はドロドロした気持ちを書いてて、別れに対するそれぞれの感情の出方の違いとかもあって、でも風景というか、そこにあるものは一緒なんですよね。感情の歌詞への入れ込み方が、その時によって別人くらい自分の中で違ってて、だから、その時そう思ってたんだなっていうのを今の自分が分析して、へー、みたいなのも結構あるんですよね。

── 歌詞の中で一番驚かされたのが、〈いつかはきっと元に戻る〉っていう1行だったんですけど、ふたりの仲が〈いつかはきっと元に戻る〉っていう解釈よりも、ここでの〈いつかはきっと元に戻る〉というのは、ふたりが別れた状態でそのまま周りの風景とか時の流れとかが何事もなかったように閉じてしまう、つまりは、お互いにお互いのことを忘れられるということを簡潔に言い表しているのではないかと思って、ちょっとゾッとしました(笑)。

デモの段階では〈いつかはきっと元に戻る〉の後に(と思ってた)ってつけてたんですけど、元の仲良しに戻れるかもしれないっていう希望と、今仲直りできたとしても、いつかきっとまたこの険悪な状態に戻るっていうのと、別れた後に心が平穏な状態に戻るっていう、どの捉え方もできたらいいなって思って、その( )の部分を消したんです。

── 僕は、3つ目の捉え方をしたということですね。

できるだけ、聴く人によっていろいろな捉え方ができる歌詞を書きたいと思っていて。それはひとりの人の中でもそうで、前はこんなふうに聴こえたけど、今聴いたら違うふうに捉えられたっていうものでありたいんですよね。私もそういう音楽が好きですし。

── そしてアレンジに関してですけど、チェロが入っていることで曲の雰囲気がガラリと変わりますよね。

チェロ、入れてよかった(笑)。暗い海の深さとか、ちょっと怖い感じを出したいなと思って入れました。

── あと、聴きようによっては、チェロの響きに男性の存在を感じる人もいるかもしれませんね。

確かにそうですね。

── しかもサビに男声のコーラスが入りますからね。

そこは絶対に男声を1オクターブ下のユニゾンで入れたくて。あのコーラスがあってこの曲が完成するっていうイメージでいたので、男の人がいることによってこの曲で描かれているものが想像しやすいかなと思いました。

── この曲は、今まで浦さんが書いてきた曲の中でも、より一段深いところまで表現できたという実感はありますか?

そうですね。今までバンドでやってきたので、バンドサウンド──ギター、ベース、ドラムだけのイメージで曲を作ってたんですけど、この曲はいろんな音が入ったので、今後作っていく曲でもまた様々なイメージが膨らむきっかけになる曲だと思います。曲の背景とか思いとかを最大限まで表現できた曲ですね。

── 人に何かを伝えたいっていうその中身には、例えばメッセージを伝えたいっていうように、その表現を媒介にして伝えたいことを伝えるという側面がありますよね。または一方で、表現そのものを伝えたいっていう側面もあると思うんです。浦さんは、後者だと思うのですが、いかがですか?

完全にそうですね。結構内側に籠もってきた人生だったので、今まで。人に向けて、外側に対して何かを伝えたいみたいなことは難しくて、考えるのが。その代わりに、自分の中にあるものとか、見てきた風景とかを取り込んでぐちゃぐちゃして出す、みたいなところで外の世界と繋がれたら、私でも人と仲良くやれるかなとか。

── 表現って究極は自分のためだと思うんですけど、でもそれが外に向かわないと表現ではないというところもあるじゃないですか。バンドの表現とは別のシンガーソングライター・浦小雪として自身の表現を深めれば深めるほど外との繋がりは濃く確かなものになっていくのかなという気がします。

なんだろう……友達がほしいのかもしれないです。自分のことをわかってもらうことで、それを好きになってもらって友達になってくれたらいいなっていう気持ちがあるかもしれないです。

── それが音楽でできるっていうのが浦さんにとって一番の幸せなのかもしれないですね。

はい。

── ところで、歌うと変わるんですか?(笑)。

よく言われます(笑)。歌うことは、考える前に叫ぶ……吠えるっていうか、野性的で本能的な行為だと思っていて。喋る時って頭を回転させて話さなきゃいけないじゃないですか。その動きが私は遅いんですけど(笑)。でも、歌うことだけに集中できる時って、もう無我夢中というか、野性に戻って歌ってるイメージです。

── ライブが楽しみです。

はい。ありがとうございます。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

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リリース情報

デジタルシングル「潮風」
配信中:https://lnk.to/urakoyuki_shiokaze

プロフィール

浦小雪(うらこゆき)
2000年生まれ、長崎県出身のシンガーソングライター。2020年に長崎大学でSundae May Clubを結成。2022年に大学卒業を機にソロ活動を開始。 太く強く真っ直ぐに伸びてくる歌声と、自身の内側に秘めた感情を解き放つような歌詞表現、情景を鮮明に浮かばせる楽曲は聴く者の心に深く刻まれる。 学生時代にバンドとして自主制作した1st EPは<タワレコメン>に選出、スタディサプリの卒業生Movie「18の問い」にも起用される。地元長崎でのNHK参院選2022テーマソングを担当。2023年にはアシックスのブランドムービーに「ステラ」が起用され、6月にはJ-WAVEが今聴くべきネクストカマーの最新楽曲を紹介する『SONAR TRAX』に「潮風」が選出されるなど、今後の活躍が注目されるアーティスト。

関連リンク

litlink:https://lit.link/urakoyuki

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW