『フォルトゥナの瞳』特集
三木孝浩監督インタビュー「映画全部じゃなくても、どこか一部でも記憶に残ってくれればいいんです」
第6回
特集最終回は、三木孝浩監督のインタビューをお届け。『アオハライド』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』など、青春映画の名匠としても知られる三木監督が、本作の撮影の裏側や込めた想いをたっぷり語る!
─── 大ヒット公開中ですので、映画をご覧になった方も楽しめる内容にしたいと思います。まず、監督は坂口理子さんと共同で脚本を手がけられていますが、脚本作りはどのように進んでいったのでしょうか。
葵のバックグラウンドなどは、改稿を重ねる上で追加していった部分ですね。“運命のふたり”に見えたらいいなと、プラスオンしていきました。
─── 慎一郎からだけの視点ではなく“ふたりの物語”にしたかったと。
同じ事柄でも視点を変えれば……というかたちが好きなんですよね。ひとつのシーンも角度を変えれば「あ、実はこのとき、こんなふうに思ってたんだ」となるわけで。ある意味、映画が“2度楽しめる”。そういう仕掛けの面白さは『ぼく明日』(『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』)のときも感じていました。今回は“ふたりの物語”だからできる仕掛けにチャレンジしたいと思っていました。
─── 2回観ることでさらに深まる映画ですよね。三木監督の作品はそういうところがある気がします。“2度楽しめる”くらいの奥行きを持っている。
ひとりの視点だけじゃない。どうも、それが好きみたいです(笑)。(クエンティン・タランティーノ監督の)『ジャッキー・ブラウン』のように、同じ事件、出来事も、違う視点から見たときに「裏ではそういうことが起こっていたんだ」と知ったり。映画は強制的に時間が流れていくので、作り手側が時間をコントロールできる。それが作っていて面白いですよね。