Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド

ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2024年夏号】

年4回更新

第4回

6月16日(日本時間6月17日)に開催されたトニー賞授賞式をもって、ブロードウェイの2023-24シーズンが終了。今年のミュージカル部門は、ひとつの作品があらゆる賞を総取りするのではなく、何作品かで分け合う結果となった。そのため今のブロードウェイは、鑑賞者が物語を重視しているならコレ、音楽ならコレ、演出やビジュアルならコレ、キャストの名演を味わいたいならコレといった具合に、作品選びがしやすい状況にある。とはいえ、どれも重視する筆者としてはどの作品も気になっており、また続々と発表されている2024-25シーズンのラインナップの中にも気になる新作――日本でもお馴染みのアノ演出家が手掛けるアノ韓国作品など――が並んでいるため、結局のところやはり悩ましいのだが。というか、行ったらどれを観よう問題の前にまず、続く円安の中でどうしたら行けるだろう問題に悩んでいるのだが。

「コレ」「アノ」が何を指すかは後半のリストパートをご覧いただくとして、筆者が観てきた作品のミニレポートをお届けする前半では、そんなトニー賞に絡んだ3作をピックアップ。今年のブロードウェイ行脚はまだ新作が出揃う前の1月となったため、観た10作のうち半数はトニー賞にかすりもしなかったのだが、残り5作はノミネートを受け、そのうち『メリリー・ウィー・ロール・アロング』はリバイバル作品賞ほか4冠を達成している。

■キャストがとにかく凄かった『メリリー・ウィー・ロール・アロング』(7月7日まで)

2012年にロンドンで生まれ、2021年には日本でも上演されたマリア・フリードマン演出版だが、ブロードウェイ版の見どころは何と言ってもキャスト陣。若き日に同じ夢を抱いた男女3人がやがて袂を分かっていく様を、中年になったシーンから始まる“逆再生”で描く作品ゆえ、過去に観たバージョンでは寂しい読後感が残る印象があったのだが、ジョナサン・グロフ、ダニエル・ラドクリフ、リンゼイ・メンデスがそれを払拭。シーンが進むごとに本当に若返っていくようなエネルギッシュな演技で、最後にはグロフが希望に満ち満ちた表情を見せつけて終わるため、この3人ならば最初に描かれた中年シーンのあと、必ず仲直りして素晴らしい未来に向かうに違いないと思わされるのだ。ソンドハイムにもラドクリフにも特に思い入れがない身には高すぎるチケットだったが(直前割引でも4万円弱)、トニー賞に輝いたグロフとラドクリフの名演が観られたのでまあ、元は取れたと思おう。

■盛り上がるが惜しい『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

ほかの新作を何も観ぬうちから、これはドク役のロジャー・バートと装置がノミネートされて終わりだな、と思ったらその通りになった。脚本と音楽がどうにも弱く、せめて主人公マーティがもうちょっとドラマチックに成長してくれたなら(なぜかマーティの父の成長はドラマチックに描かれる)、せめて1曲でも心に迫るかすぐ覚えられるかする新曲があったなら、と思わずにはいられない。とはいえ装置と音響とイリュージョンで大いに盛り上がりはするので、原作映画きっかけで初めて劇場に足を運ぶ層にとっては満足度が高そうだ。

■一歩間違えれば狐につままれる『酒とバラの日々』(クローズ済)

アルコールに溺れたまま立ち直らない夫婦の物語という、歌で綴られたところで狐につままれた気持ちにしかならなそうな題材(原作は同名の白黒映画)を、おしゃれな楽曲とシックな演出と大人の魅力あふれる俳優二人が芸術性の高いミュージカルに仕立てた作品。主演したブライアン・ダーシー・ジェームズとケリー・オハラ(『王様と私』)、及びアダム・ゲッテル(『ライト・イン・ザ・ピアッツァ』)による音楽がノミネートを受けた。夫役を山口祐一郎が演じたら素敵に違いない、との日本版妄想が膨らむが、よほど高い芸術性を備えた演出家が手掛けないときっと狐につままれてしまうので要注意。

今シーズンの新作からロングラン作品まで! BW上演作品一覧


【2024-25シーズンの新作】

*情報は2024年6月28日時点のもの

『ワンス・アポン・ア・マットレス』2024年7月31日プレビュー開始予定
往年の名作にS・フォスターが主演したコンサート版が好評を博し、期間限定でBWへ。
https://onceuponamattress.com/

『メイビー・ハッピー・エンディング』2024年9月18日プレビュー開始予定
日本でも上演された韓国の人気作がM・アーデン演出、D・クリス主演でBW進出。
https://www.maybehappyending.com/

『サンセット大通り』2024年9月28日プレビュー開始予定
A・ロイド=ウェバーの名作。昨年ロンドンで上演されたN・シャージンガー主演版がBWへ。
https://sunsetblvdbroadway.com/

『A Wonderful World』2024年10月16日プレビュー開始予定
ジャズ界のレジェンド、ルイ・アームストロングをJ・M・アイグルハートが演じる話題作。
https://www.louisarmstrongmusical.com/

『タミー・フェイ』2024年10月19日プレビュー開始予定
実在したテレビ伝道師の妻の半生を描くロンドンのヒット作がBWへ。作曲はE・ジョン。
https://tammyfayebway.com/

『Swept Away』2024年10月29日プレビュー開始予定
アヴェット・ブラザーズの音楽に基づく新作。アメリカ各地での好評を引っ提げBWへ。
https://sweptawaymusical.com/

『ジプシー』2024年11月21日プレビュー開始予定
日本でもたびたび上演されている名作が名優A・マクドナルド主演でリバイバル。
https://gypsybway.com/

『Stephen Sondheim’s Old Friends』2025年3月25日プレビュー開始予定
B・ピータース、L・サロンガらがソンドハイムを讃えるロンドン発のレビューがBWへ。
https://www.manhattantheatreclub.com/shows/24-25-season/stephen-sondheims-old-friends/

『Floyd Collins』2025年3月27日プレビュー開始予定
1996年にオフで高い評価を得た作品。実際にあった洞窟探検家の閉じ込め事故を描く。

『BOOP!ザ・ベティ・ブープ・ミュージカル』2025年4月プレビュー開始予定
アニメ映画のキャラクターをJ・ミッチェルの演出・振付、D・フォスターの音楽で舞台化。
https://boopthemusical.com/

『ラスト・ファイブ・イヤーズ』2025年春プレビュー開始予定
日本でもたびたび上演されているオフ発、J・R・ブラウン作詞作曲の名作がオン初演へ。
https://thelastfiveyearsbroadway.com/


【2023-24シーズンの新作】

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
大ヒット映画の舞台化。2025年4月より劇団四季が上演。トニー賞2部門ノミネート。
https://www.backtothefuturemusical.com/new-york/

『キャバレー』
カンダー&エッブの名作のリバイバル。E・レッドメイン主演。トニー賞セット賞。
https://kitkat.club/cabaret-broadway/

『グレート・ギャツビー』
映画版や宝塚版でもよく知られる名作小説をJ・ハウランドの音楽で。トニー賞衣裳賞。
https://broadwaygatsby.com/

『Hell’s Kitchen』
アリシア・キーズのジュークボックス。演出は『RENT』のM・グライフ。トニー賞2冠。
https://www.hellskitchen.com/

『Illinoise』8月10日まで
米のフォーク歌手スフィアン・スティーヴンスの同名アルバムに基づく。トニー賞振付賞。
https://illinoiseonstage.com/

『メリリー・ウィー・ロール・アロング』7月7日まで
日本でも上演されたM・フリードマン演出版。D・ラドクリフの助演賞ほかトニー賞4冠。
https://merrilyonbroadway.com/

『きみに読む物語』
映画版もヒットしたベストセラー小説をM・グライフ演出で。トニー賞3部門ノミネート。
https://notebookmusical.com/

『アウトサイダー』
原作は同名小説および巨匠コッポラ監督による映画版。トニー賞作品&演出賞含む4冠。
https://outsidersmusical.com/

『Suffs』
参政権を求め闘った女性たちの物語。ヒラリー・クリントンら製作。トニー賞脚本&楽曲賞。
https://suffsmusical.com/

『サーカス象に水を』
同名ベストセラー小説をサーカスを取り入れて舞台化。トニー賞7部門ノミネートも無冠。
https://www.waterforelephantsthemusical.com/

『The Who’s Tommy』7月21日まで
日本でも上演歴のあるロックオペラ。トニー賞リバイバル作品賞ノミネート。
https://tommythemusical.com/

『ウィズ』
ブラックミュージックが炸裂する「オズの魔法使い」。トニー賞スルーにつき短命の予感。
https://wizmusical.com/


【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』
『オペラ座の怪人』の閉幕を受け、上演中の作品としては最長ロングランとなった名物作。
https://chicagothemusical.com/

『ライオンキング』
『シカゴ』に次ぐロングラン第2位を安定飛行中の大名作。相変わらず満席を誇る。
https://www.lionking.com/

『ムーラン・ルージュ!』
2021年のトニー賞受賞作。7月23日より初代クリスチャン、A・トヴェイトがカムバック。
https://moulinrougemusical.com/

『ウィキッド』
定期的に観たい傑作。昨10月に開幕20周年を迎えた。今秋には待望の映画版も公開予定。
https://wickedthemusical.com/

■日本未上演の作品

『&ジュリエット』
ロミジュリの後日譚をマックス・マーティンの大ヒット曲で綴るロンドン発の傑作。
https://andjulietbroadway.com/

『ブック・オブ・モルモン』
2011年のトニー賞を制した、もはや古典の領域の傑作。1周回って日本語版を妄想中。
https://bookofmormonbroadway.com/

『ヘイディズタウン』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/

『ハミルトン』
近年最大のモンスター級ヒット作。リン=マニュエル・ミランダの才能にひれ伏そう。
https://hamiltonmusical.com/

『MJ The Musical』
M・ジャクソンの伝記系ジュークボックス。各国で上演され始めており、日本でも…?
https://mjthemusical.com/

『SIX: The Musical』
ヘンリー8世の6人の妻がガールズパワーを炸裂させる痛快作!来年1月の来日が決定。
https://sixonbroadway.com/

プロフィール

町田麻子(まちだ・あさこ)
1980年ロンドン生まれ、横浜育ちのミュージカル文筆家。2002年早大一文演劇専修、2022年東京藝大楽理科卒。公演パンフレット、演劇誌、WEB等で主にミュージカルの解説文、インタビューやレポート記事を執筆。10代からブロードウェイ観劇旅行を毎年続けるミュージカルおたく。趣味は翻訳版の妄想キャスティング。

町田麻子ウェブサイト
https://www.rodsputs.com/