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現代日本を泳ぐ気鋭のクリエイターに聞く「現代クリムト講座」

ウィーンのカフェ文化とクリムトは、てりやきバーガーになる

特集

第6回

ウィーンを代表するカフェのひとつ、カフェ・ザッハ

現代クリムト講座の第6回は、番外編としてウィーンのカフェ文化について考察します。
19世紀末ウィーンで盛んだったカフェ文化は、人のコミュニティにどういった影響を与えたのでしょうか。また、それらにクリムトはどう向き合ったのでしょうか。

文=田尾圭一郎(ライター)

マクドナルドのてりやきバーガーは日本にしかないらしい。同じクラスのませた友人が、兄から聞いたことを(当時の印象としては)まことしやかに話してきたときのことを、いまでも覚えている。レタスの上のマヨネーズが甘辛いてりやきソースと混ざってバンズに染み込む、ニクいハンバーガー。あの人気メニューが海外では売られていないなんて考えられない、と小学生だったぼくは非常に驚いた。

それから大人になって各国を俯瞰して見ると、マクドナルドがグローバル・ブランドでありながら各国でローカライズ対応を柔軟に行なっており、そのなかで極東の島国・日本では「てりやきバーガー」が具体的な施策メニューとして成功を収めていることを知った。それ以来、海外旅行をするときにマクドナルドのオリジナル・メニューが何かを確認することは、ぼくのなかでその国の食文化を知るひとつの指標になっている。

さて、ウィーンはどうだろうか。さすがはカフェ文化の街・ウィーン。マクドナルド自体は少ないのだが、そのサブ・ブランドであるマックカフェが多い。伝統的で重厚なカフェが多い街で、若者も気軽に安価で楽しめるカフェとして立ち位置(ポジショニング)を確立しようとしていることがうかがえ、豊富なコーヒー・バリエーションに加え、ケーキやマカロンをメニューに揃え、ハンバーガー・ショップとしての矜持など邪魔だと言わんばかりに、腰の低いローカライズを実現させている。その姿勢は、各国・各都市で、自治区かのように高く同質のクオリティとパフォーマンスを発揮する中華街とは好対照だ(ウィーンに中華街はなく、思い返せばブランドの堅持を重視するスターバックス・コーヒーも少なかったように思われる)。