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ステージぴあExtra ~フリーマガジン「ステージぴあ」連動企画~

柚香光「“人ならざるもの”を演じることが好き」 劇団☆新感線『紅鬼物語』で 新境地に挑む

第3回

劇団☆新感線の今夏の新作舞台は、青木豪の書き下ろしによる“鬼”をモチーフとした物語。何よりの話題は、昨年5月に宝塚歌劇団を退団し、今作が退団後初の演劇舞台となる柚香光の初参加だ。舞台となるのは鬼が棲まう平安の世。柚香は、貴族である源蒼(鈴木拡樹)の妻であり、娘(樋口日奈)を持つ母でありながら、鬼を内包している摩訶不思議な女性、紅子として登場する。劇団主宰・演出のいのうえひでのりが柚香扮する紅子に求めるのは、母性。精悍な男役の衣を脱ぎ、いかなる変身を遂げるのか!? 絶賛稽古中の今、新境地に挑む覚悟、そして“鬼”に惹かれる役者魂を熱く語った。

紅子として踊るのはすごく嬉しい
「エンジンがブインブインかかる感じです」

──まずは稽古に入っての、今の手応えはいかがですか?

立ち稽古が進んでいる毎日で、笑いが絶えず、活気があって、稽古場に来るのが楽しみな日々です。私が演じる“紅子”も、(演出の)いのうえさんの求めていらっしゃる姿が少しずつ見えてきました。自分もいろいろと課題を見つけながら取り組んでいます。

──宝塚時代のお稽古のやり方と比べて、驚いたことなどはありましたか?

たとえば殺陣や振付の稽古は稽古場の鏡を使いますが、芝居の稽古ではカーテンで覆って、鏡のない状態で稽古をするんですね。宝塚の場合はつねに鏡を使うので、そこはすごく新鮮です。鏡がないことによって、芝居にギュッと集中している感じがします。どっちが良い、悪いということではなく、その違いは面白いですね。

──先ほどおっしゃった、ご自身が取り組んでいる課題とは?

記者会見の時も申し上げましたが、やっぱり女性としての所作などは引き続き課題です。妻であり、母であるキャラクターの役作りは、自分としては新しい一歩なので、そんな紅子を、そして、彼女の娘時代を、いかに説得力を持って演じるか、が課題ですね。

──今日は柚香さん演じる紅子の夫、源蒼役の鈴木拡樹さんとのシーンの稽古が行われたそうですね。

はい。まさしくザ・夫婦という大事な場面で、お客様は初めてご覧になる私のシルエットじゃないかなと(笑)。そこがお客様の目に優しく、温かく映るほど、切なさやいろんな感情が伝わると思うので、鈴木さんと一緒にそうした関係をしっかり作っていけたらいいなと思いました。

──ご自身では紅子をどのように捉え、どう表現していきたいと考えていますか?

紅子は鬼でいながらも本当に人間らしい部分をたくさん持ち合わせていて、可愛らしいところもあり、優しくて繊細で、愛情深い人です。でも内面からは寂しさ、苦しさ、葛藤などが見えてくるんですね。紅子という女性を所作などの外見だけでなく、芯から丁寧に作っていきたいと思っています。

2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』キービジュアル

──稽古の中で、演出のいのうえひでのりさんから受けた印象に残る言葉などは?

会見でも話しましたが、やっぱり「立ち方が凛々しい。戦い出しそう」と言われたのは印象的でしたけど(笑)。それ以降は、何かワードをいただいたというより、「この台詞はこういう声色で、こういうトーンで言ってほしい」といったオーダーから、紅子という人を知ることが多いです。いのうえさんの「こういうふうに言ってほしい」という言葉によって、紅子が抱えて来た思い……切実な訴えであったり、願いなどがそこにワッと表れるように感じます。

──宝塚の男役として踊っていた時とは当然ながら違う感覚だと思いますが、踊りやアクションについてはどのような意識で臨んでいますか?

紅子として踊るのはすごく嬉しくて、やるぞ!とエンジンがブインブインかかる感じです(笑)。アクションシーンは、紅子がどんなふうにその場面で息づくのか、私もワクワクドキドキしているところです。皆様にとってインパクトのある場面になるのは間違いないと思いますので、楽しみにしていただきたいですね。稽古場でアクションシーンがどんどん付いていくところを凝視していますが、すごく楽しくて、やっぱり迫力がすごいです。自分もどんな戦い方をするだろう!?って期待しながら、アキレス腱を伸ばしています(笑)。

「自分にしか出来ない鬼を絶対に作り上げたい」

──劇団☆新感線の今回の新作は“新感線流お伽噺”という切り口で、また新しい劇世界が作られようとしています。以前から新感線のファンとおっしゃっている柚香さんが今、稽古場で感じている劇団の空気感、その進化といったものはいかがでしょうか。

そうですね。立ち稽古で、台本を確認しながら段取りを作っていって……といった段階でありながら、劇団員の方々がすでに風味豊かな台詞の掛け合いをされていて、その空気感が素敵だな!と。たとえば、台詞のイントネーションがちょっと個性的になった時に、そこに役としてツッコミが入ったり(笑)。プロとして、ちょっとお芝居で遊び合う、といった感じで、すごく自然で、軽やかで、楽しくて、面白いです。

──お伽噺というと幻想的な世界をイメージしますが、劇団☆新感線といったらやはり笑いは不可欠かと。

笑い、ありますよ! 私は役として“笑い担当”ではないですが、皆さんのやり取りはものすごく笑えます。

──演技中、つられて笑ってしまうようなことは?

そうしないように、私は私の道を行こうと思います(笑)。紅子じゃない時は、存分に笑っています。

──以前の取材で「鬼を演じられるのが嬉しい。なぜ鬼を演じたいのかは役を作る中でわかるのでは」とおっしゃっていたのが印象に残っているのですが、稽古に入った今、その答えが分かりかけているのでしょうか。

いえ、今もまだ探している、学んでいるところですが、鬼というものにはより強く惹かれています。考えれば考えるほど、学べば学ぶほど、自分の知らないことや課題がいっぱい見えてきて。“人ならざるもの”を演じることが、私は好きなんです。これまでも獣だったり、妖精や死神、はたまた花や風や鳥など、いろいろな人間じゃないものを演じてきました。鬼は、人間が作り出した存在、架空でありながら、小さい頃から物語で触れて、年に一回節分に現れて皆に恐れられる、そういった私たちには身近な存在ですよね。そんな鬼を自分はどう演じるんだろう、自分にしか出来ない鬼を絶対に作り上げたい……と考えるほど、憧れにも近いような気持ちになるんです。

──いのうえさんが「紅子は母性を要求される役」と。柚香さんも母性というものを内包されていると思いますが、そんなご自身の母性に気づく瞬間とは?

幼少期から周りに乳幼児や小さなお子さんがいっぱいいたので、一緒に遊んだり、オムツ替えなどの面倒を見るのが好きでしたね。それは母性を育む時間だったのかなと思います。また、宝塚歌劇団でトップスターとして80人近くの組の皆さんと一緒にいる中で、母性なのか父性なのかはわかりませんが(笑)、皆の笑顔を守りたい、皆が居やすい空間を作りたいとつねに考えていたことも、そういった感情と離れていないのではないかなと。あとはいろんなお役をいただいて学ぶ中にも母性は存在していたと思うので、それらを今思い返しながら、紅子としての母性とは何なのかを考え、学び、作っていこうと思っています。

──いのうえさんが柚香さんについて「バカがつくくらい真面目」と話されていたのも印象強いです(笑)。

どうなんでしょう、ふざけるのも好きなので、そのうち真面目じゃない面もバレていくかもしれませんけど(笑)。自分としては、もっともっと成長していける人間になるために、自分の欠点を改善し続けていく強さをもちたいと思っています。

人との出会い、作品との出会いに感謝

──ご自身の努力はもちろんのこと、これまでたくさんのいい作品、いい人との出会いがあってご活躍が続いているのだと思われますが、そのようなチャンスを自ら掴み取って来たという実感はありますか?

難しいな〜(笑)。宝塚に入団してすぐの時に、上級生の方が「自分が頑張り時と思った時に、本当に頑張りなさい」という言葉を、ご自身もそう聞いてきたと教えてくださったことがあって。その言葉は私の中に強く残っていますね。でも、「私はチャンスを掴み取ってきた!」と言えるほど、自分がつねに正しく研鑽を積み続けて来たかといったら、もっと出来たのかもしれないと思うところもあります。もっと明確にビジョンを持って、あの時に回り道をするのではなく、もっと根本的なことに自分が気づけて向かっていけていたら……といった反省はいっぱいあるんです。なので、やはり自分が掴んだというよりも、いろんな方に助けていただき、教えていただいた、それがすべてですね。もちろんその時その時で必死にやってきましたし、舞台に向かって真っ直ぐに、青春を全部捧げてやってきたとハッキリ言えるんですけど。でもやっぱり私は人との出会い、作品との出会いに恵まれていたなと、とても感謝しています。

──“回り道”という言葉にびっくりしましたが、そういうことを感じた瞬間もあったと。

ありますあります、たくさんありますよ(笑)!

──お話を伺うほどに、表現に掛ける真摯な眼差し、その人間力に惹きつけられます。ステージぴあ、ぴあアプリの読者の皆さんも柚香さんの“紅子”が息づく瞬間を心待ちにされていると思います。

ぴあさんには宝塚歌劇団の在団時から貸切公演をしていただいたり、本当にぴあの会員の皆様にはたくさん応援していただいて、とても感謝しています。ぴあの会員の皆様はきっとお芝居、舞台といったものを身近に感じ、大切にしていらっしゃる方々だと思います。皆様の心にスンと刺さるような『紅鬼物語』にしようと日々、稽古していますので、ご期待いただければなと思っております。

──柚香さんを応援して来られたファンの方々がびっくりするような姿も見られますでしょうか!?

見られると思います。アッと驚く新鮮な場面もあると思いますよ!

取材・文:上野紀子 撮影:源賀津己
スタイリスト:大園蓮珠

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ぴあアプリでは柚香光さんのアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。

公演情報

2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演
いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』

作:青木豪
演出:いのうえひでのり

出演:
柚香光/早乙女友貴 喜矢武豊 一ノ瀬颯 樋口日奈/
粟根まこと 千葉哲也/鈴木拡樹

右近健一 河野まさと 村木よし子 インディ高橋
山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ
村木仁 川原正嗣 武田浩二 ほか

【大阪公演】※SkyシアターMBSオープニングシリーズ
2025年5月13日(火)~6月1日(日)
会場:SkyシアターMBS

【東京公演】
2025年6月24日(火)~7月17日(木)
会場:シアターH

チケット情報
https://w.pia.jp/t/akaoni/

公式サイト
http://www.vi-shinkansen.co.jp/akaoni/

「ステージぴあ」(フリーペーパー)
配布場所等の詳細は下記よりご確認いただけます。
https://t.pia.jp/pia/events/stagepia