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逢田梨香子、小園 桃として舞台『かげきしょうじょ!!』のファイナルへ──「桃ちゃんも頑張ります!」

第7回

未来のスターを目指して舞台への情熱を燃やす、紅華歌劇音楽学校の“歌劇少女”たち。その内のひとり・奈良田愛がかつて所属していたのが、アイドルグループ「JPX48」。逢田梨香子は2021年放送のアニメと昨年の舞台第2章で、そのセンターである「小桃ちゃん」こと小園桃を演じた。そして今回、第3章 The Finalのスピンオフエピソード(11/4)と千穐楽のスペシャルレビューショーで再び桃を演じる。それを「本当に楽しみ」と語り、笑顔を見せた彼女の思いとは……。

再び、かわいくて芯の強い小桃ちゃんに

第2章に出演する際、逢田は原作者・斉木久美子とあらためて“小園桃はどんな女の子なのか” を話したという。

「先生とお話して、これまで以上に桃ちゃんの解像度が上がりました。これは私自身も思っていたことですけど、桃ちゃんは頭がよくて思慮深く、しかも愛嬌がある。そして、いい意味でしたたかな面もあって、野心も自分の考えもしっかりもったうえでアイドルをやっているんです。ただかわいいだけではない、とても芯の強い女の子です」

そして臨んだ、第2章のステージ。声優として活動する逢田にとって、朗読劇ではない舞台への出演は貴重な機会だ。その心境を、「新たな気持ちで飛び込む」気持ちだったと表現している。

「ほかの出演者の皆さんは舞台に慣れている方が多かったので、『ついて行かなきゃ』と必死でした。でも、すごく楽しかったですね。演出家さん(KPR/開幕ペナントレース・村井雄)も演出としての指示はありつつ、(役の)気持ちで動きたくなった時にはそれを認めてくださったので、のびのびやらせていただきました」

出番の関係で、稽古のスケジュールがほかの出演者と重なることは少なかったという逢田。皆との距離が縮まったのは劇場入りしてからだったそう。

「楽屋で席が隣だった三田美吹ちゃん(中山リサ役)と青山なぎさちゃん(野島聖役)と、ずっとおしゃべりしていました。あと、後ろの席に座ってらっしゃった初風緑さん(大木芳子先生役)とも、屋上にある三囲神社のお話をしていたんです。みんな毎日お参りしていたので、『今日行った?』『行きました』って」

ただ、主人公・渡辺さらさ役の志田音々と奈良田愛役の小越春花のふたりは、ほぼ舞台に出ずっぱりだったこともあってあまり話せなかったことが残念なのだとか。

そして小園桃としては、作中ではJPXのライブシーンとしてアニメの挿入歌である「ごめんねLOVE」を逢田が歌う場面が描かれた。

「衣裳もそのまま本物のアイドルの子が着ていそうな、本当にクオリティが高い物だったんです。振付もアイドルそのものみたいで、みんなで練習をしたこともすごく思い出深いですね。聖ちゃんとのかけ合いもあって、『かげきしょうじょ!!』の世界の中で声だけでなく体全体で桃ちゃんを表現できたことがすごく嬉しかったです」

“体全体での表現” は、声優としての活動をメインにしている逢田にとっては確かに機会も少ないだろう。声の演技と舞台の演技、それぞれの面白さと難しさをどのように感じているのだろうか。

「声優は映像に声をあてるので、タイム(尺)が決められています。決められた尺の中で表現する難しさと、だからこその楽しさがあると思いますが、舞台などでのお芝居の場合、もちろん演出家さんにご指示はいただきますけど、自分の感覚で間をとることができますよね。『これ以上間が伸びるとダレてしまう』とか、自分自身のセンスが問われる難しさがある。でも自分なりに、いろいろ考えながら演じることがとても楽しいんです」

今回、第3章の本編には小園桃は登場しないが、スピンオフ、そして千穐楽スペシャルレビューショーに登場するという形で出演が叶った。スピンオフでは「小園桃×奈良田愛編」として、ふたりのエピソードが描かれる。

「本編にも出たい気持ちはすごくあったけど、ストーリー展開を考えると出られるとは思っていませんでした。なので、こういった形でまた『かげきしょうじょ!!』に参加させていただけることが本当に嬉しい。桃ちゃんと奈良っちは、第2章で全然タイプの違うふたりの距離が少しずつ縮まっていくシーンが大好きでした。だからスピンオフで奈良っちとどういう話を紡げるのか、とても楽しみです」

小園桃と奈良田愛。ふたりはある意味、対照的なキャラクターであるように感じられる。それは逢田自身も、「ふたりの温度差」と言及。その温度差こそが好きなのだという。

「桃ちゃんは基本的に人懐っこくて、どちらかというと陽キャ。奈良っちは過去のトラウマなどもあって殻に閉じ込もっていた部分があるので、陰キャ。性格は真逆ですけど芯の部分ではどこか通じ合うものがあるので、桃ちゃんは奈良っちに近づいて心の扉を少し開けようとしているのだろうと思います」

千穐楽のレビューも、『かげきしょうじょ!!』らしい明るく華やかなものになるのだろう。

「またJPX48の衣裳を着て、みんなで『ごめんねLOVE』を歌えたら嬉しいです」

自然と応援したくなるキャラクターたちに魅せられて

第3章は、第2章に続いて日本橋三越本店にある三越劇場での公演。デパートの中にある劇場は、独特の空気感に満ちている。このロケーションも、逢田にとっては楽しみのひとつだったのだとか。

「第2章の時に、劇場に入るまでの最短経路とか、地下階に入っている食べ物屋さんとか、三越の中には結構詳しくなりました。ここで軽食を買ってから劇場階に上がるとか、自分なりのルーティンもありましたね。それに、日本橋っていう場所そのものがなんだか気持ちよくて、大好き。今回は2日間だけですけど、三越劇場に行けるのが楽しみです」

公演前にあまり食べてしまうと体が動かなくなるからと、あえて軽食だけにとどめていたという。身体、特に喉が資本である彼女にとって、コンディションを整えるために欠かせないことは何だろう。

「睡眠ですね。普段はそこまできっちり決めてはいませんけど、公演中は1日2公演で結構ハードだったので、家に帰ったら12時前には布団に入るようにしていました。絶対に8時間寝るようにしていたら、すごく調子良かったです。今回も、ほかの出演者の皆さんの方が圧倒的に大変だと思いますけど、私もしっかり寝てコンディションを保とうと。あと、喉によい『念慈菴』っていう台湾の飴をなめたり、免疫力を整えるためにお風呂にゆっくりつかるようにもしています」

入念に支度をして臨む、第3章。あらためて、逢田にとって『かげきしょうじょ!!』の魅力はどこにあるのか。

「女の子たちがひたむきに頑張る姿を見ていると、すごく元気をもらえます。歌劇団を目指す女の子を描いた作品は意外とないし、その唯一無二な感じもよいですよね。 私はこれまで宝塚歌劇団の公演を観たことはなかったけれど、『かげきしょうじょ!!』という作品を通して本家である宝塚にも興味がわいてきました。さらさはあんなにかわいらしい見た目でキャピキャピしているのに、オスカル様を目指しているっていうギャップも面白いですし。自然と応援したくなる、個性的なキャラクターたちもこの作品の魅力ですね。漫画やアニメと舞台との親和性もとても高い、本当に素敵な作品だなと思います」

さらさをはじめ、数多く登場するキャラクターの中でも、逢田は「聖ちゃんが好き」と一言。

「すごい美少女なのに、根っから悪い子ではないけどちょいちょい毒舌なのがかわいくて。アニメでは花澤香菜さんが演じてらっしゃったので、あの素敵な声で意地悪なことを言うのがすごくいいキャラクターだと思っていました。舞台で聖を演じている青山なぎさちゃんも、すごくぴったり。声質もすごく研究されたんでしょうね、アニメから本当に飛び出てきたような聖ちゃんでびっくりしました」

ちなみに、「もし『かげきしょうじょ!!』で桃ちゃん以外の役を演じるなら誰?」と聞いてみたところ、やはり「聖ちゃん」という答えが返ってきた。

「やりがいしかないキャラクターじゃないですか。作品の中でだけは、意地悪なことをたくさん言って周りの人を困らせてみたい(笑)」

そして、今回の第3章は「The Final」と銘打った舞台の完結編でもある。

「『終わってしまうんだ』っていう寂しさはあります。でも第3章までしっかり舞台上で描いてもらえることも、本来メインストーリーにからんでこない桃ちゃんをこういう形で登場させていただけることも、すごくありがたいと思っています。今回は本編に加えて毎回スピンオフ作品があって、内容も盛りだくさん。泣いても笑っても今回でファイナルなので、ぜひ舞台の上で舞い踊るかげきしょうじょたちを見届けていただけたら嬉しいです。桃ちゃんも頑張りますので、よろしくお願いします」

取材・文:金井まゆみ 撮影:藤田亜弓

ぴあアプリでは逢田梨香子さんのアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。

公演情報

舞台『かげきしょうじょ!!』第3章 The Final

原作:斉木久美子「かげきしょうじょ!!」
脚本・演出:村井 雄(KPR/開幕ペナントレース)

出演:志田音々 小越春花 佐々木琴子 新谷姫加 佐々木李子 中川梨花 岩田陽菜
青山なぎさ 三田美吹 小山内花凜
逢田梨香子(スピンオフ出演:11/4(火)スピンオフエピソード、11/5(水)千穐楽スペシャルレビューのみ出演)
鷲尾 昇 佐野瑞樹 初風 緑
(アンサンブル:永瀬千裕、馬渕香那)

【回替わりスピンオフエピソード】
①11/1(土)12:00 撮影会 編
②11/1(土)17:00 杉本紗和 × 山田彩子 編
③11/2(日)12:00 星野 薫 × 沢田千夏 × 沢田千秋 編
④11/2(日)17:00 野島 聖 × 中山リサ × 竹井朋美 編
⑤11/3(月)12:00 野島 聖 × 中山リサ × 竹井朋美 編
⑥11/4(火)13:00 小園 桃 × 奈良田 愛 編
⑦11/4(火)18:30 小園 桃 × 奈良田 愛 編
⑧11/5(水)13:00 スペシャルレビューショー

2025年11月1日(土)~5日(水)
会場:東京・三越劇場

チケット情報
https://w.pia.jp/t/kageki-stage/

公式サイト:
https://kageki-stage.com/

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