ステージぴあExtra ~フリーマガジン「ステージぴあ」連動企画~

海宝直人×岡宮来夢、時空を超えてパリで出会う──世界初演ミュージカルへの挑戦

第10回

現代に生きる海人(海宝直人)と、日本を代表する俳人となる若き日の小林一茶(岡宮来夢)。ふたりの青年が時空を超えてパリで出会い、それぞれの未来を切り拓いていく……。そんなファンタジックな人間ドラマが、モーリー・イェストンの原案・作詞・作曲、高橋知伽江の脚本・訳詞、藤田俊太郎の演出で新たに立ち上がる。11月に行われた制作発表会見には海宝と岡宮、共演の潤花、豊原江理佳、演出の藤田が登壇し、キャスト陣が先駆けて楽曲を披露。制作発表後の取材で、海宝と岡宮が、世界初演となるオリジナルミュージカルに向けて熱き決意を語り合った。

たった17文字に込められた世界観を大切に

── まずは、新作舞台の制作発表を終えた今の心境からお伺いします。

海宝 ちょっとホッとしています。まだ本格的な稽古が始まっていない段階で、ちゃんとこの作品の魅力、楽曲の魅力を短い時間で伝えなければならない、その使命があるのが制作発表ですから。ミュージカルの制作発表では毎回、歌うことに緊張しますね。

岡宮 僕も凄く緊張していたんですけど、僕ら三人(潤花、豊原江理佳)は「最後は海宝さんが締めてくれるから、安心して挑もうね」って話していました(笑)。無事に終わって良かったです。

── 現段階での脚本から、作品の感触やご自身の役柄についてお話しいただけますか?

海宝 脚本は昨日第八稿が上がってきて、今日の制作発表のために昨夜ざっと読んだという感じで、まだまだ進化途中ですね。ミュージカルの主人公って何か強いモチベーションがあったり、エネルギーに満ちたキャラクターが多いと思うんですけど、僕が演じる海人は、自分とも家族とも向き合うことが出来ずにいる人物なんですよね。母親が小林一茶について探求していて、海人自身はある意味、俳句というものにコンプレックスを抱いている。その中で母の死をきっかけに、小林一茶という人物に母が託したものは何なのか、海人も探り始めて、母からのメッセージと向き合い、成長していく……と考えると、その旅路の中で一茶がどう海人に影響を与えていくのか、そこが大事になってくる作品だなと。

岡宮 一茶のほうは、海人とは逆にエネルギーにあふれていて、さまざまなものに心を動かしながら、自分の人生を変えてやるぞ!という気持ちでいろんなことに飛び込んでいくんですね。演出の藤田俊太郎さんとも「エネルギー満ち満ちでいたい」といった話をしています。“小林一茶がパリに行った”という展開は僕自身もすごく楽しみですけど、やっぱり一茶についての史実や俳句を大切に、そのたった17文字に込めた優しさと、スケールの大きい世界観を大事にしながら、この作品ならではの一茶を表現できたらいいなと思っています。

お互いの印象は?「真っ直ぐで誠実で、素敵な表現者」(海宝)「憧れであり、目標」(岡宮)

── お話のように俳句が重要な要素となっている作品ですが、俳句への関心は?

岡宮 僕は小林一茶と同じ長野県の出身で、長野には“小林一茶かるた”というものがあって幼少期によくそれで遊んでいたんですよ。なので、今回の出演が決まって、母が実家から持って来てくれたので今、家にあります。一茶の句とその絵柄で出来ていて、懐かしいな〜って思いました(笑)。世間のみなさんは俳句というと松尾芭蕉のほうが印象が強いかもしれませんが、長野の人は……いや、分からない、僕だけかもしれませんが(笑)、俳句といえば小林一茶が先に来るくらい身近な存在ですね。

海宝 そうなんだ、縁があるんだね。僕はこれまではそれほど俳句に関心はありませんでしたが、この作品と出会って、あらためて日本語に向き合う時間になるだろうなと感じています。日本語はある意味、余白をたくさん持っている言葉だと思うんです。だからこそ翻訳する時が難しいのだけど、日本語ならではの言葉の広さや奥行きが、意外とミュージカルを作るうえで武器になるのではないかなと。五、七、五という限られた音の中に入れた言葉のニュアンスを、読んだ人それぞれが膨らませていく。一茶の句にしても、読む人によって「これは一茶のこういうパーソナリティを表現している」と言う人もいれば「ちょっとセクシャルな意味合いが入っている」と言う人もいたりして、そんなふうに解釈の幅があるのは凄く魅力だなと思います。本作の原案・作詞・作曲のモーリー・イェストンさんもそこに惹かれたのではないかなと思うんですよ。

── 岡宮さんは、幼少の頃にかるたで遊んだりしながら、自分でも俳句を作ってみようとは……。

岡宮 全然思わなかったです(笑)。学校で「俳句を作ってみよう」という授業があった時も、17文字で、季語もなきゃいけないし、どうしよう〜!って。季語がなくても、例えば「気をつけて横断歩道を渡ろうね」みたいな……。

海宝 標語とかね(笑)。

岡宮 17文字でどうにか答えを出そうとしていたな、というのは大人になって気づいたことですね。それこそ今回の作品に出て来る一茶の句、「露の世は露の世ながらさりながら」でいうと「さりながら」で終わることで受け取り手に考えさせる、そういう想像力の世界なんだなと。俳句って面白いなとあらためて思いました。

── おふたりに、お互いに表現者としての魅力をどのように感じているのか、お伺いしたいと思います。

海宝 本当に素敵な表現者だなというのは、岡宮君に初めて出会った時から感じていました。真っ直ぐで誠実で、自分自身のスキルを上げることでいいものをお客様に届けたい!という純粋な向上心が感じられて、なんてキラキラしているんだろうなと。それがしっかりと結実して、素晴らしい作品や役を射止めて評価されていっている。前向きに何かを捉えようとする今回の一茶にぴったりで、そのエネルギー感を確実に捉えて表現されるのだろうなと思っています。

岡宮 ありがとうございます。僕にとって海宝さんは憧れであり、目標でもあります。「こう歌いたい」という理想像なんですよね。今日の制作発表でも自分が歌い終わってハケた後、微動だにせず海宝さんの歌を聴いていました。歌のテクニックや作品への向き合い方など、今回間近で見られるのが本当に嬉しくて貴重な機会だなと思います。僕、凄く上手い人を見ると落ち込む癖もあるので、そういう意味では一番しんどい可能性もあるけど(笑)、こんなに身になる場所はないと思うので、少しでも何か盗んで(笑)自分を高めていきたいです。

完全オリジナル作品の世界初演「すごい戦いになるだろうなと思います」

── 創作ミュージカルの世界初演メンバーであることに、特別な意識はあるのでしょうか。

海宝 そうですね。作品にコミットする労力はこれまでとあまり変わらないですけど、今回は原作もなく、本当にゼロからのスタートなんですよね。チャレンジングな企画だな、とは思います。僕らが参加するずっと前から構想があり、ここまで辿り着くのにも紆余曲折がありました。稽古が始まるのは普段よりひと月くらい早いですけど、あっという間に稽古って終わっちゃうんですよね(笑)。完全オリジナル作品で脚本をどんどんブラッシュアップしながら、並行して演出をつけながら、キャラクターもそれぞれに深めながら作り上げていく、これはすごい戦いになるだろうなと。みんなが大きなプレッシャーを抱えながら、出来るだけいいものを作ろうと奮闘していくのだろうと思います。

岡宮 世界初演のミュージカルに携わらせていただくというのは自分の目標のひとつでもあったので、本当にワクワクした楽しみな気持ちが強いです。でも確かに、作品に対する向き合い方はどの作品も変わらないかなって思います。作品で一番伝えたいこと、その軸を見つけて、そこを中心にしっかり作品をまとめてお客様にお届けすることが何より大事だなと。自分に与えられた役割が何なのかをしっかり噛み砕いて、作品の根幹を担えるように頑張りたいです。

── 我々観客も、ゼロから立ち上がる劇空間と、そこに生きるみなさんの奮闘を初めて目撃するチャンスですね。楽しみです!

岡宮 小林一茶がパリに行く、それがどんなドラマを生むのか。そしてそれが海宝さん演じる海人とどう共鳴し合い、どう影響を残していくのか、ぜひ楽しみにしていてほしいです。「俳句のミュージカルってどんなものなんだろう!?」と思われている方は多いと思いますが、絶対に面白いものを作る!と僕たちは気合い十分なので、ワクワクして待っていただけたらなと思います。

海宝 オリジナルを作るうえで素晴らしいスタッフ、キャストが集まっていることを先日全体が集まった時にあらためて感じました。振付のジュリア・チェンさんはトニー賞やローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされる超一流の世界的な振付家で、チェンさんのワークショップに参加した時に、これは本当に想像もつかないような、何か新しいものが生み出されるんだろうなっていう予感がしましたね。今まで観たことのない作品になると思いますから、ぜひ期待していただきたいです。

取材・文:上野紀子 撮影:興梠真帆

ぴあアプリでは海宝直人さんと岡宮来夢さんのアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。

公演情報

ミュージカル『ISSA in Paris』

原案・作詞・作曲:モーリー・イェストン
脚本・訳詞:高橋知伽江
演出:藤田俊太郎
振付:ジュリア・チェン

出演:
海宝直人 岡宮来夢
潤花 豊原江理佳
中河内雅貴・染谷洸太(Wキャスト)
彩吹真央・藤咲みどり(Wキャスト)
内田未来 阿部裕 他

【東京公演】
2026年1月10日(土)~30日(金)
会場:日生劇場

【大阪公演】
2026年2月7日(土)~15日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール

【愛知公演】
2026年2月21日(土)~25日(水)
会場:御園座

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/issa-in-paris/

公式サイト:
https://www.umegei.com/issa2026/

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