BOYSぴあSelection 第19回 清水尋也・板垣瑞生・間宮祥太朗
清水尋也・板垣瑞生・間宮祥太朗「『ホットギミック』は負った傷と向き合っていくための“女の子の背中を押す”映画」
全1回
特集

強烈な映像美が話題となり、口コミで大ヒットした『溺れるナイフ』(2016年)の山戸結希監督の待望の新作『ホットギミック ガールミーツボーイ』が全国公開中だ。本作は3人のタイプが違う魅力的な男性が1人の少女に恋をする、販売部数累計450万部を超える伝説的人気コミックの映像化である。恋をするからこそ、自分自身と向き合うことになる、恋愛の真髄を圧倒的な映像美とスケールで描く注目作。主役に山戸監督が選んだのは、乃木坂46の次世代エース・堀未央奈だ。ぴあ編集部では、恋に翻弄されるみずみずしい少女、初(はつみ)にそれぞれ恋する3人の男性キャストに話を訊いた。
初の弱みを握る同級生・橘亮輝役の清水尋也、転校し、数年ぶりに帰ってきた幼なじみ・小田切梓 役の板垣瑞生、初の3個上の兄・成田凌 役の間宮祥太朗、3人が感じた『ホットギミック ガールミーツボーイ』の世界とは ──。
山戸監督が自分のために作った映画でもあるんだと思う
─── 山戸監督の新作ということと、大ヒットコミックの映画化ということでとても注目されている『ホットギミック』ですが、それぞれ、脚本とご自身の役柄への感想を教えてください。
板垣瑞生(以下、板垣) まずお話をいただいてから、原作を読んだんですけど、僕、普段はほとんど少女マンガを読まないので、少女マンガの世界観をつかむところから始めました。「女性ってこういうものが好きなんだな」というところから知っていったので、衝撃的だなと思う部分がたくさんありました。少女マンガの世界って、男性からするとフィクションに感じちゃう方が多いと思うんです。それを映像化にするということで、どう演じようかなと考えました。映画もフィクションではあるんですけど、山戸さんはリアルな映像を撮られる方なので、自然に見えるようにしたいなと思いました。実際、撮影に入ってからは、「生々しさ」を意識してお芝居させていただきました。ずっと山戸さんからは「色気を出してください」という指示をいただいていたので、セクシャルな感じを出すようにしました。「男らしさ」というよりは「色気」という感じを意識しました。
清水尋也(以下、清水) 僕は少女マンガはけっこう好きで読むので、原作をまず楽しんで読ませていただきました。原作はポップでコメディっぽいシーンやセリフが多いので、読みやすい作品でしたね。それをいざ映像化するとなると、二次元から三次元なので、漫画どおりにはいかないですし、何かアップデートしないといけない、というのが俳優としての僕たちの義務なので、責任感を感じていました。漫画と違う良さや映画ならではの部分というのが確実に伴わないといけないと思ったので、漫画のことはいい意味でいったん忘れて、映画は映画として、山戸さんが原作のここは残したい、ここは新しくしたい、というところをうかがって役づくりを考えました。結果、漫画とはけっこう違うな、というものになりました。映画の完成版をご覧になった原作者の相原先生からも「よかったです」と言っていただけたときは、とても嬉しかったですし、安心しました。 自分の橘亮輝については、原作ではいじらしくて可愛いやつ、という印象が強かったんです。つんけんしてるけど、どこか弱くて、寂しがりやで脆くて、女の子を引っ張っているように見えて、実は追いかけている側だったり。思春期をわかりやすくこじらせている、というキャラクターだと思いました。それが映画になると、雰囲気がわりとじめっとした感じになっていて。澄んだものだけを表現した恋愛映画もありますけど、実際の人間の恋愛って、性的なものも伴ってくると思うので、そこの含みの度合いは映画のほうが大きいなと思って。そこは意識して演じました。なので、映画の亮輝のほうがミステリアスな感じも強いし、生々しさもあって、印象は変わったと思います。
間宮祥太郎(以下、間宮) 俺が出てくるシーンって、めっちゃ照明が暗いんですよ。俺、幽霊じゃねえか、って思うくらい暗いのにびっくりして(笑)あと、山戸さんの演出だったんですけど、凌はすごく小さい声でしゃべるんですけど、俺、いままでお芝居でこんな小さい声でしゃべったことないんです。わりとパキパキしゃべるお芝居が多かったので、「今なんて言った?」て思うくらい小さい声でしゃべる凌役は新しい経験でした。映画自体も、漫画のポップさがほぼなくて危うい印象なので、演じていて新鮮でした。
清水 梓に凌が「殺すかもしれない」って言うシーン、祥太朗くんが言うとほんとに殺しそうだよね(笑)今まで演じてきた役を思い出しても、このあと血みどろの展開が?って。
間宮 (笑)けっこうエグみの強い成田凌になりましたね。僕も少女マンガのロマンチックさを理解する感覚をあまり持っていないので、自分の解釈抜きで、山戸さんに言われたことを忠実に演じたという感じです。完成形を観て、すごいねっとりしてるなと思って驚きました。
─── 山戸監督の演出での撮影は、どのような感じでしたか?
間宮 大変じゃない撮影というのはないので、毎日魂をけずりながらやる、というのはありましたけど、充実した撮影でした。
板垣 楽しかったですよね。映画撮ってるなあ、という感じ!
間宮 待ち時間が長くて、長めの漫画を1セット読破しました。シーズン2まである漫画を読み終わって。待ち時間はリラックスしていたので、本番は集中できました。
板垣 僕は、オンオフの切り替えがあまり上手ではないので、待ち時間はずっと歩き回っていました(笑)。ずっと集中していましたけど、ただただ楽しかったです。
清水 あと、台本が毎日変わりましたね。セリフ量も多くて、覚えるのにすごく頭を使ったので、撮影が終わったあとは、毎回お腹がすごく減ってました(笑)朝も昼もちゃんと食べたのに、15時くらいにはもうお腹が減っていたので、頭を使うと人ってこんなに体力を使うものなんだなと実感しました。
─── セリフのテンポ、間合いはすごく独特でしたね。
板垣 早くして、ってよく指示をもらいました。でも早くしゃべろうとすればするほど、セリフが出てこなくなって(笑)
間宮 俺とのシーン、かみまくってたよね。あ、すいません(涙)って言って、またかんで(笑)
板垣 最後のひとセリフが出てこなくてかんじゃうんですよ。
清水 一回思考がおかしくなっちゃうと出てこなくなるよね。
板垣 ほんとすみません。
間宮 ぜんぜん、俺は楽しかったよ。かみまくってるの見てて。俺のセリフはテンポが遅くて、山戸さんからは「ためて話して」って逆に言われてました。
清水 確かにねっとりしてたね。間宮くんとふたりのシーン、チューさせられるんじゃないかってくらい顔が近いシーンあったよね。
間宮 あったあった。でも使われなかったよね。山戸監督の演出は、完成した映像を観ないとどうなるかわからないシーンが多くて、観て、おお!こうなるのか、って思いながら完成版を観ました。ハマって抜け出せなくなる女の子たちが続出するのがわかる映像なんですよね。
清水 たとえば、亮輝の「悲劇だよ、悲劇」っていうシーンも、山戸さんから「言いながら足で悲劇を描いてください」とか言われるんです。僕らはいくら抽象的なことを言われても、言われたことを感じたまま演ってみる、という感じでした。山戸さんの演出って言語化できないし、かみくだけないんです。かみくだけるものなら、かみくだいてハナから言ってくれると思うんです。そうじゃない時点で、それ以上でも以下でもないんです。 もちろん、足で「ひげき」って描いたわけじゃないですよ(笑)。
間宮 それやったらバカだよね(笑)もうちょっと…ってなる。で、亮輝が「悲劇」って描いたのを、凌は兄として初を守りたいから、消していってくださいと。
─── 堀未央奈さんはこの作品が初主演となりますが、どんな演技をされていましたか?
板垣 演技がというよりも、彼女自身が初でした。そこに初がいる、と思いました。やりやすいとか、やりにくいじゃなくて、そこに初がいるから、それに向かってただ自分たちは、役割を全うしていくだけだなって思うくらい、どっしり構えて演じてくれました。これが初なんだ、というのがたたずまいから伝わりましたね。
清水 演技経験があまりないからこそ、到達できるゾーンですよね。僕もまだ未熟ですけど、どこかでお芝居というものは、ハッタリであって、決してリアルではない、ということを認識した上でお芝居しているんです。それを認識した上で、いかにリアルというものに近づけていけるかの作業なんです。
間宮 それぞれロジックがあって、それぞれのやりかたがあるんですけど、未央奈ちゃんはそれがない状態だったってことだよね。
清水 だからこそ、スッと作品の世界に入れるんですよね。山戸さんとの解釈、女の子として生きて行くことへの価値観がすごく意思疎通できているんですよ。かなり深く。だからこそ、堀さんからしたら、自分の全部を投影させて、初になっていたんですよ。あれは僕たちにはできない表現だったと思います。
間宮 僕は、堀未央奈という名前は知っていたけど、あまりどんな方かは存じあげなくて。名前を知っていたのも(友人の)矢本悠馬がゴリゴリの乃木坂ファンなので、知っていたという(笑)悠馬からバンバン、乃木坂さんの名前が出てくる中に、「未央奈が、未央奈が」って出てきていたので。「お前別に知り合いじゃないだろ?」って(笑)俺もカラオケで悠馬が歌うから、乃木坂さんの曲は覚えてしまっていたりしていて、ドキュメンタリーを観たりもしました。ドキュメンタリー、すごいいいんですよ。泣けるんですけど。 でも、認識として、未央奈のことはそれくらいだったので、現場に行ったときに、現場の誰々さんという認識ではなく、「初」にしか見えなかったんです。 だけど、初は、自分(凌)としゃべっているときは、感情の動きが、他の2人といるときとは違うから、完成した映画を観て、自分の知らない初がいる、と思いました。僕の前で見せる姿とは違う姿を見せていたので。だからいまだに、未央奈のことは、「初」として見てしまうんですよね。
板垣 僕たち男からしたら、そういう態度の違いみたいなものって、わからないんですよね。自分が見てる側面しか知らないから。
─── 女の子のそういう、それぞれの男の子に対する態度の差、みたいなものはとてもリアルだと思いました。
間宮 そうそう、あれはわざとじゃないんですよね。
─── 逆に男の子は、女の子に対する恋愛感情や、執着心を隠さずにぶつけるところがあると思うんですけど、それぞれ、初に対しての感情をどう解釈されましたか?
間宮 確かに、所有欲みたいなもの、ありますよね。あまり僕は女の子を独占したい、みたいな感情はあまりないので、わからないんですけど。「いいやつ」とつきあいたいです。「いい女」っていうよりも、シンプルに「いいやつ」。
板垣 それ、すごいわかります。
間宮 いい人、とかはつまんないからどうでもいいし、「いい女」とかも信用ならないので。初もそうだけど、意識的にしろ無意識的にしろ、意中の男性の前でだけ態度が変わるのは信用ならないから、あまり参考にしていないんです。
板垣 そうですよね。僕も誰に対しても同じ態度の子がいいな。暗いんならずっと暗くてもいいし、態度が変わるのは信用ならないかも。
間宮 僕は恋に恋するタイプじゃないので。ドライなわけでもないんだけど、その相手によって表情が変わる人間を信用していない。それは異性でも同性でも。そこは見てますね。昔からそうだったかな。
清水 初はちょっと心配にはなりますよね。亮輝に対しては拒絶したりするけど、梓とか凌の前だとへなっとしてるでしょ。そういうのを見ちゃうと、ああ、どっかで他の男に持っていかれちゃうかも、とは思います。友達とかならいいけど、そういう子を恋愛対象にするとなったらですけど。付き合うとなったら、そういう部分はマイナスに作用しちゃうかもしれない。
─── では、みなさんの初恋はいつですか?
板垣 僕は、正直、恋愛について、無頓着だと思うんです。人間として不器用だから、恋愛っていうのがあまりよくわからなくて。でも、好きだなって感情を知ったのは、小2かな? ただ、一方的にいい人だな、って思うのはまた違いますよね。
間宮 俺も小学校のころ初恋はあったかな。好きだった子から、バレンタインをもらって、ホワイトデーにお返しをして、まわりは盛り上がったけど、付き合う付き合わないの話になるわけでもなくて。
清水 僕は初恋って、「一番最初にした恋」ではないと思っていて。たとえば幼稚園のときでさえも、「何々ちゃんのこと好き」とかあったけど、じゃあそれは恋か?と思うと違うし。それよりも、もっとちゃんとした初恋って、その人のためなら自分の何かを削って、与えられるとか、思えた人間のことなんじゃないかなって思うんです。そういった人には、まだ出会えていないのかなあ…って思います。初めて人を好きになったのは、幼稚園のときです。それは今でも覚えているのが、好きになった理由が「ひとりでお米をとげるから」。料理をする授業の中で、その子がひとりでお米をといでいる姿を見て、キュンとしたんです。だから、今でも僕は家庭的な女性が好きです。
─── では最後に、この作品の見どころを教えてください!
清水 この作品は、女の子のための映画で、山戸監督の自分のための映画でもあると思うんです。そこに堀さんが主演して、女の子を救ってあげるための映画になったのかなと思います。恋愛に傷ついたり、叶わない恋をしたことがある、何かしら傷やトラウマを抱えている女の子のための映画です。しかも非現実的な世界を観て、キュンキュンする、一時的に浸る映画ではなくて、その傷と向き合って生きていくための映画だと思うんです。だから、思い出したくないことを思い出したりするかもしれないけど、確実に女の子の背中を押してくれる映画です。そこは僕たちの演技を信じてほしいし、そういう気持ちで作ったので、力のある作品になっていると思います。
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撮影/高橋那月、取材・文/藤坂美樹