全8回

須田景凪、気鋭のSSWの素顔とは?

2019年、須田景凪の躍進は音楽シーンの事件だった。7月、中野サンプラザホールでの追加公演となったワンマンライブ『須田景凪 TOUR 2019 "teeter"』の成功。これが大きなターニングポイントとなった。透過する紗幕スクリーンに投影した魔法めいた映像演出。バンドスタイルで解き放つソリッドかつグルーヴィーなプレイ。中でも注目は映画『二ノ国』主題歌となった「MOIL」だ。心を鷲掴みするせつないメロディーに、コンテンポラリーなR&Bテイストを取り入れた着実に進化を感じられる中毒性の高いポップミュージック。若い世代を中心にスタンダード化している、ボカロP=バルーン名義でのヒット曲「シャルル」人気で知られる須田だが、ボーカロイド文化から新たなカルチャーは芽吹き、自身で歌唱することで唯一無二となる開かれたアーティスト性の獲得を証明したのだ。疾走するビートセンスに絡み合う歌えるメロディー。片時も心を離すことない、中毒性の高い研ぎ澄まされたサウンド・プロダクション。そして、胸を突き刺す抒情的なコトバのチカラ。この連載では、須田景凪のこれまでを振り返ってみよう。