『ウエスト・サイド・ストーリー Season2』特集
森崎ウィン「ミャンマー出身の僕だから演じられるトニーがある」
全5回
第3回
ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」Season2特集第3弾に登場するのは、トニー役の森崎ウィン。アーティストとしてその歌唱力を高く評価されてきた森崎が、満を持してミュージカルに初主演。IHIステージアラウンド東京という大舞台で、どんな歌声を聴かせてくれるだろうか。
僕自身も「人種差別」を受けたことはあるのかもしれない
── キャストのみなさんにお話を聞いていると、今回はテーブルワークにすごく力を入れているそうで。作品についてじっくりみんなでディスカッションしていく中で気づきや学びになったことはありますか?
これだけ人種差別について大きく扱った作品って、当時としては非常に新しかったみたいで。初演を観たお客さんは席を立てないぐらいの衝撃を受けたそうなんです。その話を聞いて、僕自身、ミャンマー出身ということで、いろんな国に行ったときにパスポートを見せただけで対応を変えてくる人もいたなとか、そういう経験を思い出したし、みんなにシェアするために話したりしましたね。
── ウィンさん自身もそういった差別を経験したことがあるんですね。
当時に比べればずっと守られているとは思いますけどね。日本で生まれ育つと、人種差別というものにふれる機会ってあまりない。それはすごく恵まれていることで、改めて平和な環境で生活ができるありがたさを知るきっかけにもなりました。
── この作品って単なるギャングの抗争ではないんですよね。でも当時の情勢を知らないと、なかなか作品の根底に横たわっているものを味わいきれない。
おっしゃる通りで。まさにそれこそが、この作品が誕生してから63年経った今、若い僕たち世代が上演する意義。今まで「ウエスト・サイド・ストーリー」を演じてきた人たちの気持ちを引き継いで、今度は僕たちが伝えていく番なのかなって思っています。トニーとマリアのラブストーリーではあるんだけど、その向こう側にあるものをちゃんと観ている人に伝えたいです。
── ウィンさんは小学4年生のときに日本に来ました。その当時、人種差別というものを感じたことはありましたか?
日本に来た当初はいじめられたりしましたね。人間って異物に対して反発するもの。特に子どもはとても素直にその反応が出るので。それを「いじめ」という言葉で表現していますけど、やられていたことは「差別」だったのかもしれないです。
ただ、当時の自分は「差別」っていう言葉をすごく重く感じていて。だから自分が「差別」されているとは感じていなかったし、今までもあまり「差別」されてきましたとも言ってこなかった。最終的に、自分はとても人に恵まれた環境だったんで乗り越えられましたけど。それはある種すごくラッキーだったんだなって今になって思いますね。
── じゃあ、人種差別の中で暴力に身を任せ非行に走るしかなかったトニーたちの気持ちもわかるところが?