特集 せんぱん 前川千帆の版画
19/9/10(火)~19/10/20(日)
和歌山県立近代美術館
大正・昭和期に活躍した版画家・漫画家前川千帆(まえかわせんぱん)(1888〜1960)の生誕130年を記念して、同館コレクションを中心にその版画作品を紹介する。
1888(明治21)年、京都市に生まれた千帆(本名・石田重三郎)は、1907(明治40)年、関西美術院に入り、浅井忠や鹿子木孟郎に洋画を学ぶ。1911(明治44)年には上京して、翌年、東京パック社や読売新聞社などに勤め、ジャーナリズムの世界で活躍した。特に、1931(昭和6)年から1933(昭和8)年まで『読売新聞』の「読売サンデー漫画」に連載した「あわてものの熊さん」で一世を風靡し、漫画家として知られることとなる。
一方、1912(大正元)年に南薫造の作品に感化を受けて版画制作にも着手する。1919(大正8)年には、日本創作版画協会の第1回展に出品し、この頃から本格的に版画家としての活動をスタートさせた。以後、日本創作版画協会の後身である日本版画協会や、帝国美術院展覧会(帝展)などの官展、春陽会展等での発表を続け、版画界における重要人物のひとりとして、日本の近代版画の発展に貢献した。
本人は自らの地位を「虚名」と謙遜するが、謙虚な人柄そのままに表現された素朴な作風や、市井に生きる人々などを温かいまなざしで捉えた作品は、広く愛された。戦下の非常時でも、その屈託のなさは変わることなく、彼は展覧会の挨拶の中でも、「何かとたゞ事でない今日此頃、さし迫つた心もちの中に、一脈の和(やわ)らかさをおくみとり願へれば望外の幸であります」と語っている。
千帆については、1977(昭和52)年に「前川千帆名作展」(リッカー美術館)がなされたものの、その後大きく取り上げられることはなかった。本展覧会で改めて紹介する約70点の作品と関連資料によって、版画家・前川千帆の「和らか」な魅力をぜひご覧いただきたいと思う。
同時開催:コレクション展2019-秋/特集展示 みやこの洗練 明治の京都画壇
開催情報
- ジャンル
- 美術館
9:30〜17:00、月曜日休館(9月16日(月)、9月23日(月)、10月14日(月)は開館し、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)休館)
※入館は閉館の30分前まで
料金
一般340(270)円、大学生230(180)円
※消費税率変更に伴い10月1日より、一般350(270)円、大学生240(180)円
※( )内は20名以上の団体料金
※「コレクション展2019-秋/特集展示 みやこの洗練 明治の京都画壇」と共通
※高校生以下、65歳以上の方、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料
※9月28日(毎月第4土曜日)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料