黒宮菜菜・田中奈津子「ポートレート モード」
19/11/30(土)~19/12/22(日)
2kw Gallery
黒宮は一貫して人物を描いてきた。近年は2枚重ねの和紙に染料を滲ませたり、小説に登場する人物をモチーフに描いた油絵にオイルを注いで揺らがせるなど独自の手法で夢幻的な人物像を生み出している。
田中は、近年は壷をモチーフにさまざまな制約を課した絵画を制作してきたが、今展では男女のモデルを描いたヌードクロッキーをもとに、線や形を抽出、結合した抽象的な「ANDROGYNOS」シリーズを出品する。2人の共通点とは何だろうか。それは、どちらも現実に依拠しながら想像=絵画上の「ポートレート」であることだ。その想像を形にするのは、描画材や描画法というテクノロジーだ。二人のポートレートモードによって捉えられた人物像には、写真画像では見えない可視と不可視、現実と虚構、存在と不在など、人を描くことの根源的な謎と問いが含まれているだろう。
新しいテクノロジーがポートレート写真や顔認証技術など人物認知を変えている現代。絵画もまた新たなモードによって、現代の人物画=絵画を描くことができるはずだ。いまポートレートモードによって描かれる「人物」とは何か。その成果は平坦な液晶画面ではなく、厚みや物質性のある絵画空間でこそ対峙したい。