【開催中止】企画展 彩られた紙―料紙装飾の世界―
20/4/18(土)~20/5/24(日)
大倉集古館
料紙(りょうし)とは一般に書に用いる紙をいう。今回とりあげる「彩られた紙」は、美しく染めた色紙(いろがみ)や、下絵を描き金や銀を蒔(ま)くなど、華やかに装飾された紙のこと。
手漉き紙の場合、つくられたままの紙を生紙(きがみ)という。これに対し、加工された紙は熟紙(じゅくし)とよばれる。装飾を施すだけでなく、平滑にするために硬いもので叩いたり、白くする目的でデンプンなどの添加も行われた。
このように加工された料紙の表面は、立体的で見た目よりも変化に富んでいる。顕微鏡や斜光線などを用いて観察すると、繊維の形状や配向性、添加物の有無、紙の表面の情報などから、その特性や装飾の技法を明らかにすることができる。
たとえば国宝「古今和歌集序」の料紙は、竹の繊維を原料とし、表面に布目を付けた上に、さまざまな色の胡粉を塗り、雲母摺りや空摺りの技法で吉祥文様を表現している。さらに美しくみえるように色と文様の組み合わせを考えながら仕立てた巻子に本文を書いたもの。布目の上に書いた文字の線は途切れている箇所がたくさんある。平安時代の人々は、文字の書きにくさを楽しんでいたかのようだ。
本展では、奈良時代の写経から江戸時代の大津絵にいたるまでの料紙を、顕微鏡による拡大画像とともにごらんいただく。人々の願いや美意識が反映された各時代の料紙装飾に光をあて、託された祈りや夢、そして美の移り変わりを探る。