藤堂「筑豊ボタ」
20/6/19(金)~20/7/26(日)
アートフロントギャラリー

藤堂は1969年生まれ。自ら歩いて集めた欧米や日本の石を切断し、その切断面にガラスを埋め込み磨き上げた作品でよく知られる藤堂は、一貫して「場所の固有性」をテーマに制作活動を続けている。
世界各国、様々な場所で採取した素材(石・石炭・建築物の破片・家具・本など)を使って制作される作品のその素材はそれらが存在した場所の固有の情報とエネルギーが蓄積されているDNAのようなものだと考え創造されている。特に地球上で一番古い素材である石にはその場所全ての歴史が記憶されていると言えるだろう。
前回、2016年のアートフロントギャラリーでの個展では、人々が作り出した歴史を物語る作品として瓦礫のシリーズを発表。先人の遺産を今を生きるアーティストとして磨き直した。
そして今回、5月に開催するアートフロントギャラリーの個展では九州の筑豊地域で採取したボタ(石炭として価値がない捨てられた石)を使った新作を発表する。過去にもデュッセルドルフ近郊のルール地方の石炭を素材に制作していた藤堂が、年月を経て改めて日本の石炭に挑む原点回帰の展覧会となる。
日本の近代化を支えた石炭。その不要な残骸として積み上げられ現在も地域にそびえ立つボタ山。そのボタ山や地域の石垣として残っているボタを採取し、美術品として新たな切り口を与えることで、日本の近代化、繁栄と衰退、自然と向き合った人々の歴史というDNAを改めて現代に魅せる展覧会となる。ボタとボタの間に挟まれた透明な積層ガラスを通して藤堂は人々の心に何を訴え掛けるのだろうか。
これまで、地球の歴史のDNAを持った「石」と、人間の歴史を持った「瓦礫」や「本」を素材としてきた藤堂。今回地球上の鉱物と人間の歴史、その間に位置する素材「ボタ」と対峙した時、藤堂が魅せる新たなる輝きに期待したい。