藤崎了一「metaball」
20/7/25(土)~20/9/12(土)
KANA KAWANISHI GALLERY
藤崎了一は、「素材」への深い知識と好奇心に「身体性」を掛け合わせ、「現象」という要素を絡めさせることで、身近に慣れ親しんできた素材を既知のものから一気に飛躍させた表現へと昇華させる作品を、様々なシリーズを通し展開してきた。
映像作品 〈metaball〉 は、アーティストの身の回りにある様々な液体が物理的に干渉し合う様子を、映像としてマクロ撮影したものである。シリーズ名に冠されている「メタボール」は、複数のオブジェクト同士が接近し融合し、1つのオブジェクトとなる過程を描くn次元の有機的なオブジェクトを表すコンピュータグラフィックス用語だが、正にこの言葉の示すように、身近な素材である液体同士が接近や融合を繰り返す様相は、有機的なうごめきにも感じられる。
また、同展で初めて公開される新作 《Metaball_Plasma Membrane》 (2020年)は、「細胞膜(プラスマメンブレン)」がタイトルに起用されている。生物の細胞の内外を隔てる生体膜である細胞膜は、イオンや有機化合物に対する「選択的透過性」によって細胞や細胞小器官への物質の出入りを制御する役割を担っているが、ひたすらに無心で素材と対峙する藤崎は、自分自身を半透膜へと転換させ、素材の呈する現象を介して自身の身体を表象化しているのかも知れない。