コレクション展 小企画 水谷勇夫と舞踏
20/6/25(木)~20/9/6(日)
愛知県美術館
本展は名古屋を拠点に活動した画家・水谷勇夫(1922-2005)が制作した、大野一雄(1906-2010)の舞踏公演『蟲びらき』(1988年、スタジオ200・東京/1990年、七ツ寺共同スタジオ・名古屋)の舞台装置を再現するもの。
水谷は、舞台芸術の分野とも深く関わった画家。「舞踏」(暗黒舞踏)の創始者とされる土方巽(ひじかたたつみ)(1928-1986)の初めてのリサイタル公演「土方巽DANCE EXPERIENCEの会」(1960年、第一生命ホール・東京)で舞台装置を手がけたのは、水谷だった。
水谷は「装置は俳優なんだ、俳優は装置なんだ」と語っている。そこからは、舞台装置がダンスや演劇の場面を説明したり、雰囲気を盛り上げるといった補佐的な役割にとどまらず、舞台美術もパフォーマンスと対等に主張すべきだ、という思想が読み取れる。
『蟲びらき』は、1986年に亡くなった土方の追悼を意図する公演だった。1960年の舞台装置は、ソーセージ状に丸めた新聞紙に胡粉、墨汁を撒き散らしたものだった、と伝えられている。『蟲びらき』でそれは、舞台のみならず客席側の壁面もアクション・ペインティングを想起させる筆致で埋め尽くすという、より踏み込んだ展開となっている(今回は舞台とその側面を主に、約半分の空間を再現)。
天井から吊るされた大道具の《かれい》は、公演終盤に客席上方から登場し、大野一雄とダンスするかのように、激しくからみ合う。さらに観客には小道具《カマキリの杖》を手渡した。彼らも、ただ舞台を見るだけではない、ともに空間を作り出す存在となったのだ。
今回の再現展示で、水谷が意図したであろう、それぞれの装置が有機的に関係することで生まれる、舞台空間の躍動感やダイナミズムを体感していただければ幸いである。
※展示の内容は、2020年度第1期コレクション展と同一