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加藤翼「Superstring Secrets」

20/10/1(木)~20/10/31(土)

無人島プロダクション

加藤翼は今年2月から5月までの約3カ月、大館當代美術館での展覧会参加のため香港に滞在していた。
世界中に拡大した新型コロナウイルスの影響で、展覧会は開幕延期となり、なかなか帰国もできない状況の中、加藤は人と極力交わらないプロジェクトを香港でスタートさせた。それが本プロジェクト「Superstring Secrets」である。
折しも香港は、中国本土に容疑者の身柄引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模なデモから1年近く経った頃で、多くの逮捕者が出たほか、新型コロナウイルスを理由とした集会の禁止、そして政権転覆を禁じる「国家安全法」の可決直前の時期でもあった。
加藤は、香港の街中にある地下歩行者トンネルに投書箱を設置し、そこを通る人々に
・あなたの秘密を告白してください。
・あなたが属するグループ、国や街、職場、学校への本音を打ち明けてください。
・誰かの秘密を暴露してください。
という質問を投げかけ、そうした秘密を紙に書いて投函してもらった。
加藤は、秘密が書かれた大量の紙をシュレッダーにかけてバラバラにし、細長くなった紙を束ね、太いロープにするというパフォーマンスを行った。そして帰国後、加藤は、今年の開幕が延期となった東京オリンピック会場近くの各所に投書箱を設置し、同じように人々の秘密を集めてロープを編み上げた。
古今東西、秘密というものは個人のなかで抱えるものもあれば、家族、会社、国家単位におけるものも存在し、閉鎖的に共有されているものだろう。一方で、現在の私たちはインターネットや投票などで自分の考えや意見を匿名で表出する場も持っている。
メディアの発達により、さまざまな情報を閲覧・取得できるようになったいま、逆に私たちは「何かが隠されている/いた」ことも知るようになった。そして21世紀は、「(その時々の権力者たちに)何か隠されているのではないか」という疑いの視線を獲得した時代であるともいえるだろう。
秘密は個人のものにせよ、大きな組織のものにせよ、その時代ごとの社会状況と常に密接に絡み合っている。その秘密の歴史も物語もなかなか表に出ることはないが、地下水脈のようにつながりもつれ、引っ張り合ったりして、その複雑でねじれた構造だけが表面に浮かび上がったりもしている。
同プロジェクトでは、個の秘密に焦点をあて、各々の秘密によってできてしまった「心理的な距離」、そして2020年の新型コロナウイルスとの闘いのなかでできた「ソーシャルディスタンス」という「物理的な距離」を、個人/公の秘密を「結び、つなぎ合わせ、たばね、編み上げる」というプロセスでできた一つのロープという集合体として提示することで、加藤は秘密の歴史や人間関係の分断などの問題を可視化させた。
会場ではシュレッダーロープに加え、パフォーマンスの記録などを映像や写真で展示し、おおがかりなインスタレーションを作り上げる。
また、会場には投書コーナーを設け、映像を「ソーシャルディスタンス」で鑑賞できるような仕組みも作る。来場者が展覧会におのずと参加するような、もしくは巻き込まれるような体験ができることだろう。
「Superstring Secrets」は進行中のプロジェクトである。今後このプロジェクトは世界のさまざまな場所で続けていく予定だが(現在、シンガポール、台湾でもプロジェクトを進行中)、初のお披露目となる香港と東京、2つの都市の物語を楽しめる。

開催情報

ジャンル
ギャラリー

13:00~19:00(土・日は12:00~18:00)
月・火・祝休み

料金

無料

出品作家

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