鮫島 ゆい『境界のミチカケ』
20/10/3(土)~20/10/25(日)
2kw Gallery
鮫島ゆいの絵は、眼前の事物や風景をそのまま再現したものではなく、ある種、抽象と言えるだろう。とはいえ生々しい筆あとをたどれば葉っぱや顔のようなものも見え隠れして、画面の中の世界が見る人の側にも否応なくはみ出し関わってくる。同時にシャープなベタ面やグラデーションはあくまでも2次元であることを主張し、イメージがぺったりと脳裏に貼りつくかのような触覚的印象をも残す。
近作の継ぎはぎのような画面は、まずは木片や造花など卑近な事物を組み合わせて立体物をつくり、描くことから始まるという。さらに実在しないイメージをも組み合わせ、またばらすことによって、画面は構成されてゆく。
きっかけとなる立体物を鮫島は依り代と呼ぶ。つまり、そもそも彼女が出発点とするモノは、現に目の前にありつつ、見えないむこう側にも関わっている。具象と抽象、実体とイメージ、日常と非日常、この岸とむこう岸。それぞれに境界の満ち欠けは違えども、そのどちらでもあるような断片を継ぐことで、画面は不確かなままに安定する。西洋絵画の王道の、観者と対峙し圧倒するような強さとはまた異なる、奇妙な強度がそこには生じている。