食のグラフィックデザイン
20/10/17(土)~20/12/19(土)
京都dddギャラリー
食事は生物の根幹をなす活動であり、自分という存在を作り上げる基盤となるものだ。近年、食に対する人々の関心は以前にもまして高まっているようだ。大きな災害が毎年のように発生し、これまで当然と思われた生活が根底から覆るような事態になることも珍しいことではない。それゆえ人々に生活の基本を見直す意識が芽生え、自らの身体を作るものとして食への関心が深まっているのだろう。その関心の対象は美食やグルメといった味の良し悪しにとどまらない。栄養価や安全性はもとより、生産地や生産者、フェア・トレードやフード・マイレージといった食品の取引や流通など多岐に及んでいる。またグローバル化、情報化により、異なる食文化への理解も進みはじめている。
日本では地域ごとに、土地の歴史とも密接にかかわる多彩な食材が受け継がれ、豊かな食文化を築いてきた。しかし高齢化や人口の減少などにより、農業や漁業といった食を支える一次産業の担い手が減少している事実が、食の未来に影を落としている。食の現状には、地域コミュニティの変化や異文化交流、格差社会、テクノロジー化、グローバル社会や経済など、現在社会を取り巻くさまざまな状況がかかわっている。食の問題はこれからの人々の生活や社会の未来を探るうえで、欠かせないものといえるだろう。
ポスターをはじめとするグラフィックデザインには、時代を反映した多くの食の表象を見ることができる。戦後間もないころのチョコレートのポスターからは、甘いお菓子に対するあこがれや喜びを感じられる。野菜や果物そのものが美しく表現された作品には、大地への感謝や畏敬の念が含まれているかのようだ。また食をモチーフとして社会への問題提起をおこなうポスターからは、身近なものだからこそ心に刺さる表現が生まれる。人々の生活や社会と不可分の存在であるグラフィックデザインだからこそ、食、ひいては生活全般に対する人々のイメージが色濃く反映されるのだろう。
デザイナーたちが食の力を伝えるべく思い思いに腕をふるったポスターや雑誌などを展示し、そこに見られる表現を通して、現代の食と人間との関係性を探る。