デミタスカップの愉しみ
21/4/17(土)~21/6/27(日)
群馬県立近代美術館

本展ではデミタスカップ・コレクター村上和美のコレクションから精選したデミタスの逸品約380点を紹介する。16世紀から17世紀にかけて東洋から西洋にもたらされた喫茶の習慣と上質な陶磁器は、その後のテーブルウェアの成立や、装飾芸術の発展に貢献した。江戸初期の伊万里焼や柿右衛門など日本の磁器も、優れた色絵の技術や異国的な文様で人気を博している。そして東洋陶磁器に魅せられた王族や大貴族がそれらに匹敵する磁器生産の試みを後押ししていった。
ヨーロッパのテーブルウェアの様式は19世紀に確立するが、そのなかで異色な存在として現れたのが、濃いコーヒーを飲むための小さなコーヒーカップ、デミタス(Demitasse)だった。中産階級が台頭したヨーロッパではコーヒー文化が浸透するとともにデミタスも広まっていったのだ。
19世紀の半ば以降には、日本的なモチーフや構図を発展させたジャポニスム様式が異彩を放ち、欧州の名窯がその国ならではの特徴あるデザインを提示し、さらに世紀末にはジャポニスムの影響を受けたアール・ヌーヴォー様式が発展、そして1920年代からはアール・デコ様式のデミタスが登場する。また日本がヨーロッパ向けに生産した作品も加わる。 生活の場面を彩り、時代の感性を映し出すデザインの変遷を味わいつつ、掌に載るサイズに大胆な、また繊細華麗な技巧を凝縮したアンティーク・デミタスの豊かな世界をお楽しみいただきたい。