小野祐次 Luminescence
21/4/24(土)~21/6/19(土)
シュウゴアーツ
小野祐次, Luminescence 12, 2002 gelatin silver print, image: 116.4×89.1cm, ed.3
シュウゴアーツでは2021年4月24日(土)から6月19日(土)の会期で小野祐次の個展『Luminescence』(ルミネソンス)を開催。シュウゴアーツでの個展は2018年12月以来約3年ぶり2回目となる。
80年代よりパリを拠点に活動を続ける小野は、長い海外生活の中、様々な美術館や建造物を幾度となく訪れては体感的に幅広い美術史の様式や歴史的背景の該博な知識を構築してきた。それら古今東西の芸術と写真を照らし合わせ、光で描かれた二次元の像である写真でしか成し得ない表現とは何か、という命題のもとに制作を続ける。前回の個展で発表した「タブロー」シリーズは、16世紀から印象派までの有名無名の絵画を自然光の元もとで作品の反射光を生かして撮影することで、主題、色彩、構成などの要素を後退させる一方、絵画そのものを光へ還元するという逆説的な考えによって導き出された。
本展の「ルミネソンス」のシリーズでは、ヴェルサイユ宮殿やシャンティー城、またパリの礼拝堂などに吊り下がるシャンデリアを対象に、自然光ではなく人工的な光を用いて撮影。薄暗い時間帯に光源からの光を受け、闇のなかで燦然と発光するこれらクリスタルの塊に対して、大判カメラを持った小野は光の採集者となり、人間の視覚的なピントでは捉えらない三次元的な光の細部までをフィルムに焼き付ける。パリのアトリエで自ら手焼きした大判のプリントは、きめ細かい粒子による滑らかな地肌の上に豊かな陰影のトーンを現し、光の現象そのものが写真の役割を果たしていることを証明すると同時に作品の成立要件であるという小野の写真哲学を見事に反映している。
今展においては2006年パリ市立写真美術館での個展以来となる、「ルミネソンス」シリーズだけで構成された展示を行う。モチーフとなったシャンデリアは時に歴史的な瞬間を照らした光であり、また時に祈りを捧げる民衆を庇護する光でもあった。光のもとでは全ては対等な存在たり得るという信念のもとに写真の本質に迫る作品群をぜひお見逃しないようご高覧いただきたい。