加藤翼 縄張りと島
21/7/17(土)~21/9/20(月)
東京オペラシティ アートギャラリー

加藤翼(1984- )は、複数の参加者による協働作業が生み出す行為を映像、写真などの作品として発表しつづけている。数多くのリサーチやプロジェクトをグローバルに展開し、高く評価される日本人現代美術家の一人だ。
そこに集まった人々が知恵を出し合い、ロープと人力だけで巨大な構造体を引き倒したり、引き起こす〈Pull and Raise〉シリーズは、加藤翼の代表作の一つ。3.11を逆にした11.3(文化の日)に行われた《The Lighthouses – 11.3 PROJECT》は、東日本大震災後の福島県いわき市に集まった約500人の人々が、津波で壊された家々の瓦礫によって、灯台のイメージに組みあげられた構造体をロープで引き起こすもので、このプロジェクトの構想が契機になり、震災からの復興を目指す地区の祭事の開催へと発展した。
このほか、《Listen to the Same Wall》(2015)、《Underground Orchestra》(2017)、《Woodstock 2017》(2017)、《2679》(2019)、《Superstring Secrets: Tokyo》(2020)など、代表作、話題作を網羅する、2007年以降の映像作品26点および写真、模型などで構成し、加藤翼のこれまでの歩みと全貌をご紹介する。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックという今日の状況下において、また、国家や国民の二極化が世界的に危惧されるなか、加藤の作品は、分断や対立を超えた協働作業や連帯による可能性をあらためて気づかせてくれるだろう。