アーロン・ ガーバー=マイコフスカ Cushion of Air
22/3/19(土)~22/5/7(土)
BLUM & POE

Aaron Garber-Maikovska, City Bridge, 2021 Ink and oil on fluted poly 31 3/8 x 48 5/8 x 1 3/4 inches framed Photo: Marten Elder
Blum & Poe (東京) では、ロサンゼルスを拠点とする作家、アーロン・ ガーバー=マイコフスカによる当ギャラリーで二度目となる個展「Cushion of Air」を開催する。
「Cushion of Air (空気のクッション)」と名づけられた本展では、波状のポリプロピレン製のシートの上に、インクや手製のオイルパステルによって作家の身ぶりを記録し、捉えた絵画作品群を紹介する。パフォーマティブな動きを示唆的に表したこのような身ぶりを通じて、ガーバー=マイコフスカは、「人間の条件」についても言及している。さらに、その作品群は、コミュニケーション、対人間のつながり、都市のスプロール化、身体といった要素を掘り下げていくことで、作家が初期から取り組んできたタイムベーストなパフォーマンスの動きの符号を残しながらもそのキャリアの中で着実に発展させてきた視覚言語についてのメモ書き、あるいは物理的記録であるとも言えるだろう。ガーバー=マイコフスカは、「掘り起こす」あるいは「明らかにする」という言葉を用い、自らが進行者として関わる、完成形のコンポジションに向かってペイティングを成し遂げていくプロセスについて説明している。その制作の起点となるのは、自らの外部に存在する場所だ。その一方で、人間の深層に存在する集合的無意識によって可能になるペインティングのアクションを用いることで、自身の身体の内部に存在する「文化的瞬間」を投影する行為もまた試みている。その作品群は、例えば、未開発の自然の領域に浸食していくような境界的な場に存在するチェーン・レストラン「パンダ・エクスプレス」の駐車場で我々が体験するような、自然と資本主義の対比に言及している。作品の根幹に存在するこういった緊張関係は、ガーバー=マイコフスカのペインティングやパフォーマンスに多大な影響を与えている。
その実践には潜在能的な要素が用いられる一方で、身体について深く観察してきたガーバー=マイコフスカは、科学的制御の機能が生み出したような特定の状況を意識的に発展させてきた。全てのペインティングは、同じプロセスから始まる。まず、半透明状のシートの基盤の裏面を白く塗り、インクを満たした黒のマーカーを用いて表面にドローイングを施す。そこで引かれた黒い線が、作品の主題を設定する。形式的に画中に表現された空間は、時には、書き言葉、あるいは横顔像のような表象的役割を持つこともある。このように描かれた空間の上から、絵具を満たしたコーキングガン、 3Dプリントした絵具チューブの曲線模様のキャップ、手製のオイルパステルのブロックを使って様々にマーキングしていく。機能的には、モールス信号の点や線のように、ポリプロピレンの支持体上に絵具の「道」が描かれていく。
色彩の応用や相互関係は、下部のパネルのレイヤーを暴くためにピグメントを引っ掻く行為と同様の重要性を持つ。ガーバー=マイコフスカは、オイルパステルの透明度を慎重に調整し、コンポジションの内部を露出し、組み立てていく。さらには、形式上のコントラストと同時に、それぞれの作品における素材が明らかになる瞬間を生み出すために、丁寧に塗られた絵具束を削りとる、自身が「ムービングスルー」と呼ぶ動きをたびたび行う。作品が持つ物質性への着目を示唆するようなこの行為は、その制作プロセスとも呼応し、それは、作家の実践のパフォーマンスを軸とする性質をさらに強調している。本展では、ガーバー=マイコフスカのペインティング的実践が持つメディウムの特性が、作家の劇場的なパフォーマンスワーク、非伝統的な素材、ポストモダンにおける社会的関心事と同期的に発生しているのだ。