MARK RYDEN YAKALINA 9

MARK RYDEN Yakalina (Blood), 2022 Bronze with patina 105 × 43 × 33 cm | 41 5/16 × 16 15/16 × 1 3/16 inch Base : 34 × 33 cm | 13 3/8 × 13 inch Unique (from a series of nine unique works - produced in nine different colors) Location: Japan

ペロタンとカスミンはこのたび、米国人アーティスト、マーク・ライデン（1963年米国生まれ）による新作の展覧会を共催する。謎に包まれた存在であるYakalina（ヤカリーナ）のブロンズ彫刻とドローイングの新シリーズを含む本展は、5月にペロタンパリにて開催予定の展覧会「Animal Secrets」を構成する要素として着想された。
マーク・ライデンの想像力に富んだ芸術的行為は、意味や含蓄を幾層にも重ねながら体現されている。その優美な絵的表現から豪華に装飾された額に至るまで、ライデンの創造は技巧と洗練された物質性への頌歌なのだ。また同時に、ライデンは目に見えない、宇宙の秘められた秩序を深く考察し、霊的な真髄に満ちた存在を解釈している。ライデンの作品は、その隠喩的な景色に息づく要素の象徴的な意味を探求しながら、神秘的でときに不可思議な世界への畏怖の念を呼び起こすものだ。
「Yakalina 9」では、ライデンの近作である神秘的な動物の彫刻とドローイングが展示される。ヤカリーナの体は細長い円すい形で、顔を除く全身は毛皮で覆われ、愛らしくも不気味な姿をしている。このように両腕を広げた人間や神の姿は崇拝や敬神を象徴する表現で、青銅時代から永続する伝統的な図像だ。初期キリスト教徒によって取り入れられたオランス（祈る人）のポーズは、ローマ・カタコンベのフレスコ画にみられる祈る人々の姿から、「しるしの聖母」としてビザンチン美術のイコン（聖像画）やモザイク画に描かれた聖母マリアに至るまで、さまざまな古典的宗教美術に繰り返し登場している。
このシンプルでありながら力強い表象は、物理的な形状の限界を超え、崇高な事象を表している。ライデンは、そのプラクティスでたびたび扱われる題材「Anima Animals」（アニマ・アニマルズ）と崇拝のイコノグラフィーを結びつけ、自身の芸術的表現を通して再考している。これらの像がきっかけとなり、鑑賞者を未知なる世界へと導き入れ、創造的な精神を引き出すとともに、私たちと自然や神性との繋がりを再発見させる。ライデンは「あなたが望むなら、アニマル・スピリットはあなたの元を訪れます。目を閉じ、心の内側に目を向け、あなたを導く動物に呼びかけたら、目を開け、来訪を待つのです」と語る。
今回、彫刻と並んで展示されるのはヤカリーナのドローイングで、そのビジュアルは錬金術の古写本を思わせる。作品にみられる、シンボル、錬金術記号、構造、数字などを駆使した知性的な行為は、手ほどきを受けざる者には近づくことのできない、秘めた秩序を示している。ヘルメス文書のごとく、ライデンによる一連の作品の本質は不明瞭だ。しかし、必ずしも解読する必要のない芸術的な試みを熟考する瞬間こそ、物理的な形状から浮かび上がる無形の現実に遭遇する驚嘆の感覚を呼び起こすのだ。