特集展示「来訪神、姿とかたち-福の神も疫神も異界から-」
23/1/17(火)~23/5/14(日)
国立歴史民俗博物館

追儺の図 近世 国立歴史民俗博物館蔵
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、未だ完全には収束せず、日本だけでなく世界の人々の生活に甚大な影響を与えている。疫病は人類の歴史とともにあり、科学の進んだ現代医学・疫学によっても、その克服は困難であることを、コロナウイルスの流行によって、実感された。
前近代には、疫病は“鬼”に代表される恐ろしい存在が、外界から集落や家に訪れて、病気をもたらすと信仰された。と同時に、外界からは、幸福をもたらす神霊も訪れると信仰されてきた。そうした、異界から訪れる神霊のイメージは、地域によってさまざまだ。日本各地の、そうした神霊への信仰が反映された、鬼や神々のイメージを、仮面を通じて伝えるのが、本展示の趣旨だ。
個々の人びとや地域社会において、幸福にしても不幸にしても、人の力や人智の及ばない事象について、何らかの神霊やその仕業によるものと長い時代にわたって信仰されてきた。幸福をもたらす福の神は翁姿で、病苦や災害をもたらす神霊は、おそろしい形相の鬼の姿で表現されることが多くある。しかしながら実際には、地域や時代により神霊の姿は多様。またその姿は、日本人にとっては、古代に中国から伝えられた外来の宗教である仏教からの大きな影響を受けている。
幸福、あるいは疫病や災害等の災い、いずれにしても異界から訪れる神霊がもたらすものと信仰されてきたが、仏教等の外来文化の影響も考えつつ、琉球地域を含む日本諸地域の神霊の姿、イメージと信仰の諸相をテーマとして、館蔵の民俗仮面を中心に、以下の構成により展示する。
Ⅰ.冬から春の神楽と仮面
Ⅱ.鬼は外の起源、古代宮中の追儺から寺院の行事の追儺、その民俗化
Ⅲ.琉球地方、海上彼方の異郷から訪れる来訪神
Ⅳ.東アジアに広がる追儺の文化:貴州省トン族(侗族)追儺の文化