1950年代の写真――アメリカ、ヨーロッパ、アジアの街
24/4/2(火)~24/9/1(日)
世田谷美術館分館 清川泰次記念ギャラリー

対象のかたちを写し取ることに捉われない独自の抽象表現を追求した画家・清川泰次(1919-2000)。日本で画家として活動しはじめた清川は、1951年、「本当の絵画とは何か?」を探求すべくアメリカへ渡る。約3年間シカゴに滞在し、当時ニューヨークを中心に盛んであった抽象表現主義をはじめ、新たな美術潮流に触れた。その後、1954年の3月から5月にかけて、ヨーロッパやアジアの各国を旅してまわり帰国する。
訪れた先々で、清川はその街並みを写真に残した。学生時代、写真部に所属しカメラの性能や撮影技法の勉強に打ち込んだ清川は、海外の街で、建物や広場、水辺、土地の人々などを端正に写している。これらの撮影には、2つのレンズで立体写真を写す「ステレオ・リアリスト」というカメラや、カラーフィルムが用いられた。海外で撮られたカラー写真は当時の日本では希少で、子ども向けの学習誌などに清川の写真が使われることもあった。雑誌『アサヒカメラ』1955年2月号では、清川がパリで撮影した、藤田嗣治(1886-1968)のアトリエ内部の写真が表紙となっている。
本展では、1951年から1954年に清川が撮影したカラーフィルムによる海外の写真を、同時期に描いた絵画と併せてご紹介する。鮮やかな色彩で、時代や場所の様子を伝える資料としても貴重な街の記録をご覧いただきたい。