特別展 小川晴暘と飛鳥園 100年の旅
24/4/20(土)~24/6/23(日)
奈良県立美術館
小川晴暘 左《新薬師寺金堂 十二神将 伐折羅大将像》右《東大寺法華堂 伝月光菩薩像 部分》飛鳥園蔵 ©Askaen.inc
奈良を中心に各地の仏像を撮った写真家・小川晴暘(おがわ・せいよう 1894-1960)。彼が創立した仏像撮影専門の写真館・「飛鳥園」は2022年に創立100年を迎えた。
兵庫県姫路市に生まれた小川晴暘は、画家を志して上京するが、奈良で仏像などの文化遺産に感銘を受けたのを機に写真に傾注するようになる。1922年、美術史家・書家・歌人として知られる會津八一の勧めで奈良に「飛鳥園」を創業し、奈良の仏像や寺院を中心に文化財・文化遺産の撮影に精力を傾けた。撮影だけでなく東洋美術の研究にも熱中し、奈良に居を移した志賀直哉や京都大学総長も務めた浜田青陵をはじめ、文化人・知識人との交流も深めた。さらに日本のみならず、中国の雲崗石窟、韓国の石窟庵、仏国寺、インドネシアのボロブドゥール遺跡、カンボジアのアンコール・ワットなど、アジアの文化遺産の調査・撮影も積極的に行った。小川晴暘の写真は、常識を覆す大胆な発想と画才にも恵まれたことでも分かる美への強いこだわりと感性によって、仏像を主題に神秘的な写真空間を生み出すことに成功し、文化財の記録・資料という枠を超えて、仏像写真を芸術の域にまで昇華させた画期的なものだった。小川晴暘は1960年に逝去するが、写真館飛鳥園の活動は小川光三、小川光太郎へと引き継がれ、その活動は現在も奈良の地で続いている。
本展は、小川晴暘・光三親子の写真作品を中心に、文化財保護活動を支えると同時に仏像写真を芸術の域に高めた飛鳥園の活動を振り返る。