三島喜美代―未来への記憶
24/5/19(日)~24/7/7(日)
練馬区立美術館
三島喜美代(1932-)は、絵画を出発点に現代美術家としての活動を1950年代にスタートさせた。60年代には新聞や雑誌などの印刷物をコラージュした作品やシルクスクリーンを用いた平面作品を制作していたが、70年代に入ると表現媒体を一転、シルクスクリーンで印刷物を陶に転写して焼成する立体作品「割れる印刷物」を手掛け、大きな注目を集める。日々発行され、膨大な情報をあふれさせる印刷物と、硬く安定しているかに見えながら、割れやすく脆い陶という素材を組み合わせることで、氾濫する情報に埋没する恐怖感や不安感が表現された。しかし、大量の新聞や雑誌がすぐに消費されてゴミとなるように、情報からゴミへと三島の問題意識も次第に移っていき、空き缶や段ボールなど身近なゴミを題材に陶で再現した作品、産業廃棄物を高温で処理した溶融スラグを素材とする作品を発表した。近年は、自ら集めた鉄くずや廃材を取り込んだ作品制作も行っている。
本展覧会は、70年にわたる三島の創作の軌跡を、主要作品を通して概観するもの。大量消費社会や情報化社会へ厳しい視線を投げかけつつも、情報やゴミを異化作用を通して造形表現へと転化させた三島作品は、日々の暮らしの中から遊び心をもって生み出されてきた。会場では、初期のコラージュ作品から、「割れる印刷物」のオブジェの数々、環境に配慮した素材による近作などが並ぶなか、ハイライトとして三島の代表作であり、最大規模のインスタレーション作品≪20世紀の記憶≫を展示する。ぎっしりと床に敷き詰められた大量の耐火レンガ・ブロックから成るこの作品は、各レンガの表面に三島が20世紀の100年間から抜き出した新聞記事が転写され、文字通り20世紀の記憶の断片を視覚化するとともに、その時代に向き合った彼女自身の記憶が刻まれているように思われる。三島が作品に刻印した20世紀の記憶を、来るべき未来への記憶として改めて受け止める機会となれば幸いである。
三島作品は、国内外の多くの美術館に収蔵されているが、特に2020年以降に受賞や展覧会が相次ぎ、国内はもとより海外からの評価も近年急上昇している。本展は、そうした流れのなかでの、東京の美術館における初の個展となる。展覧会を通して、三島が社会の現実を見つめながら、情報とゴミの問題をテーマに一貫して追い求めてきた作品世界の全貌を明らかにし、その魅力と実像に迫る。
開催情報
- ジャンル
- 美術館
10:00~18:00
月曜日休館
※入館は閉館の30分前まで
料金
一般1,000円
高校・大学生および65~74歳800円
中学生以下および75歳以上無料
障害者(一般)500円、障害者(高校・大学生)400円
団体(一般)800円、団体(高校・大学生)700円
ぐるっとパスご利用の方500円(年齢などによる割引の適用外になります)
【リピーター割引】一度観覧された方は初回のチケット半券を受付に提示すると300円割引。
※一般以外のチケットをお買い求めの際は、証明できるものをご提示ください。
(健康保険証・運転免許証・障害者手帳など)
※障害がある方の付き添いでお越しの場合、1名様までは障害者料金でご観覧いただけます。
※団体料金は、20名様以上の観覧で適用となります。
※事前予約制ではありません。当日、チケットカウンターでチケットをお求めください。