飯田善國展―色は光、光はことば―
24/11/16(土)~24/12/26(木)
足利市立美術館

飯田善國(1923 -2006)は足利出身の彫刻家だ。飯田の作品が生まれる背景として見落としてはならないのは詩的な発想とその実践だ。
飯田は二十歳で学徒出陣し戦地に駆り出された。 戦争は彼の内面を深く傷つけた。虚無に傾く心情を救ったのは芸術だった。「無に到ってはじめて完璧な美が成就する」という西脇順三郎の詩論が彼を支えた。飯田にとって「無」とは 永遠・無限であり、自由だった。
ヨーロッパから戻った飯田は、西脇順三郎の詩を視覚化した詩画集《クロマトポイエマ》を手がける。これは「色がつまるところ一番物質の中で光に近い」という考えのもとアルファベットを色に置き換え生まれたもの。これを彫刻に応用し、異なる言葉や素材を色のついたナイロンロープで繋げた。ここに言葉を色(光)に変換する系が生まれます。色彩を介して「ことば」を「もの」の世界に組み入れる飯田の意図が見うけられる。 逆に「もの」の側から見れば「ことば」という物質ではない要素が組み込まれたことになる。これを発展させると「見えない彫刻」という概念が生まれる。ここには飯田の詩集 『円盤の五月』などに見られる、詩の分野でなければ不可能な内的時空の創造が大きく関与している。これは物質宇宙に対する異議申し立てであり、そこからいかに自由になるかという願いが込められている。
本展は、通奏低音のように飯田の初期から晩年を貫く詩的な発想とその現れである詩作を軸にし、そこから彫刻や絵画がいかに展開したのかを観るものである。