雨宮庸介展|まだ溶けてないほうのワタリウム美術館
24/12/21(土)~25/3/30(日)
ワタリウム美術館
この展覧会は、アーティスト雨宮庸介の活動の初期から現在までを見通せる展覧会。2000年初頭の作品から始まり、「溶けたりんごの彫刻」や「石巻13分」の記録映像、「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」のペーパーなどを含み、さらに最新作として今回の設営期間にワタリウム美術館で撮影するVRが展示され、それは「話す、語りかける」「イメージを絵の具で描く」「歌や楽器やダンス的要素」など新たなアート体験を提供する。さらに会期中の毎週土曜日夕方、「人生最終作のための公開練習」が行われ、観客が雨宮の制作現場に立合うことが出来る。
今回の展覧会タイトル「まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」は「溶ける以前の状態が継続している」という、実はデュシャン以降のアートをアートたらしめている「過去完了」をそっと召喚しようと試みます。同時にこれは、平和にみえる無関心な日常さえも実は「まだ戦争が起きていないほうの静寂」でもあることを顕在化せんとするものです。
本来「ここではないどこか」に自身をカジュアルに転送するために設計されているはずのVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使用しつつ、むしろ「どこかではないここ」に丁寧に連れ戻し、この世界そのものについて肯定を試み、仮に祝福にまでこぎつけると「この世界」と「この世界」が秘密裡に並走しはじめる。
そんな仮説を今読んでいるあなたにそっと耳打ちすること、それこそが僕なりのアートの実践であり本展覧会で試みられることです。
2024年10月 雨宮庸介