なつやすみの美術館15　美術の歴史と歴史の美術

美術と歴史——ともに学校教育における科目や分野の名前だ。これらに共通する部分があると感じたことはあるだろうか？
美術作品にはそれが生み出された時代や社会、また人間の心のありようが映し出されている。私たちのまわりで起こる具体的な出来事が、美術作品が生み出されるきっかけとなることもある。美術作品を見ることは、それらを深く知ることにつながる。
一方で美術作品のあり方は、作り手一人ひとりのなかで、あるいは作り手同士の関係を通じて、時代を追って変化していく。それを私たちは「美術の歴史」、つまり人間が作り出した造形のあゆみとして見つめることで、過去を知る手がかりとしたり、また現在やこの先を見つめる糧にしたりできる。美術と歴史は、はじめから切り離せない関係にあるのだ。
和歌山県立近代美術館はその名前にあるように、近代以降、つまり日本における明治から今日（こんにち）までの美術を収集の対象としている。近代のはじまりは世界の各地域によって異なりますが、それぞれの国が外国との関わりを強く意識することになった時代だった。日本にとっては西洋との関わりから、現代につながる美術という価値観が広がっていく。
その間150年あまり、この国は大きな世界戦争を直接に経験し、その後ますます世界と大きく関わって、現在の私たちの社会を作り上げてきた。今の世界はひと昔前とどのように違うのか、また今の私たちがこの先どのような世界を作り出すのか、昭和という時代から数えて100年目、また戦後80年という節目のこの夏、開館55周年を迎えた和歌山の美術館としての目線で考えてみたいと思う。