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杉浦邦恵 「境界と共存」

25/7/19(土)~25/8/23(土)

タカ・イシイギャラリー六本木

杉浦邦恵 「Fever」2021 年 ピグメントプリント、キャンバスにアクリル絵具 106.6 x 142.2 cm © Kunié Sugiura

タカ・イシイギャラリーは、7月19日(土)から8月23日(土)まで、杉浦邦恵の個展「境界と共存」を開催する
杉浦の制作は、複数のメディウムを自在に横断するメディアを横断する創作姿勢に特徴づけられている。彼女は、日本とアメリカ、自然と人工、絵画と写真といった二項対立的な要素を、対立させるのではなく、緊張感を保ちながら共存させることによって、二文化的なアイデンティティを繊細かつ力強く表現してきた。その根底には、写真を絵画や彫刻と同等の芸術表現として確立したいという確固たる意志がある。本展では、六本木と京橋の2会場を舞台に、杉浦の長年にわたる創作の軌跡をたどる。

六本木会場では、彼女がシカゴ美術館附属美術大学在学中に制作した《Cko》シリーズ(1966~1967年)を紹介する。この初期代表作は、彼女の芸術的探求の原点であり、異文化の中で感じた孤独や疎外感と向き合う中で生まれた。魚眼レンズを用いてヌードモデルを撮影し、カラーとモノクロのネガを重ねることで、被写体を歪め、再構成された像が生み出されている。ソラリゼーションやネガへの漂白剤の筆塗りなど、意図的操作と偶然性を融合させた実験的な手法も、このシリーズの大きな特徴だ。すでにここに、のちのフォトペインティングやフォトグラム、X線写真シリーズへとつながる、メディアの境界を越える姿勢が芽生えていることがうかがえる。「Untitled 3」(1970年)は、《フォトキャンバス》と呼ばれるシリーズ(1968〜1972年)で、作家自身が写真乳剤を塗布し、撮影したネガを暗室で露光し、現像したキャンバスにグラファイトで加筆した、写真・絵画が融合した表現が展開される。会場には新作として1990年代から2000年代にかけて取り組まれたX線写真シリーズと融合した、「Fever」(2021年)、「Nina’s Pelvis & Leg」(2024年)、そして「Oral」(2022年)を紹介する。医療用ネガを素材とし、異なる出自のキャンバスからなる構成になっている。これらの作品群は、視覚芸術と科学の境界を探求すると同時に、人体の内部構造を詩的かつ象徴的に表現し、生命の神秘や脆さを鮮やかに可視化している。

京橋会場では、1980年以降継続して取り組まれてきたフォトグラム作品に焦点を当てる。花や動物、小さな生物、そして人間のシルエット、本展で紹介する「The Kitten Papers」(1992年)では、夜中の子猫の生命の気配を宿らせている。光と影のコントラストによって引き出される存在感は、日本的なか弱さと儚さの美学とも共鳴し、東洋と西洋の文化が調和した、杉浦ならではの表現スタイルを物語る。初期のフォトグラムである「Attenuated Head」(1986年)では、砂をまいて細長い頭部を表現するなど、様々な材料で頭、身体を描き、1980年代初期は抽象のイメージと融合させた。1989年以来、花が多く主題に選ばれ、本展では並列して展示されているボタニカス、切花、スタックスなどのシリーズが生まれた。

杉浦はそのキャリアを通じて、写真、絵画、そして芸術そのものの慣習に対して、静かに、しかし一貫して挑戦してきた。彼女の作品は声高に主張することはないが、調和と緊張の深い内的なバランスを内包しており、彼女独自の芸術的なビジョンを形作っている。写真の表現の可能性を広げながら、彼女は視覚芸術における新たな領域を切り開いた。そこから生まれる作品は、光と影、存在と不在、そして科学と芸術の出会いといった本質的なテーマへと、私たちを静かに誘ってくれる。

開催情報

ジャンル
ギャラリー

12:00〜19:00
日・月・祝休廊
会場:タカ・イシイギャラリー 六本木、京橋(11:00~19:00)

※オープニング・レセプション:7月19日(土)17:00 – 19:00
 会場:タカ・イシイギャラリー 六本木

料金

無料

出品作家

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