ウィーン・スタイル ビーダーマイヤーと世紀末 生活のデザイン、ウィーン・劇場都市便り
25/10/4(土)~25/12/17(水)
パナソニック汐留美術館

19世紀前半のビーダーマイヤーと世紀転換期という、ウィーンの生活文化における二つの輝かしい時代を取り上げ、銀器、陶磁器、ガラス、ジュエリー、ドレス、家具など、多彩な作品を紹介する。両時代の工芸やデザインに通底するのは、生活に根ざした実用性と快適さ、誠実で節度ある装飾、そして自然への眼差しと詩的な遊び心だ。これら両時代に共通する美意識を、相互比較や空間構成によって体感することができる。
ウィーンは19世紀から20世紀初頭にかけて、独自のモダン・スタイルを築いた。オットー・ヴァーグナーが実用性と合理性を重視する「実用様式」を提唱し、その思想に共鳴した弟子ヨーゼフ・ホフマンらが推進したウィーン世紀末のデザインは、幾何学的で建築的な造形を特徴とし、実用性と快適さを実現する機能美が備わっていたといえるだろう。一方で、1920年頃には幻想的で装飾性豊かな作品も生まれ、一元的な様式にとどまらない多様な造形が広がる。
この世紀末のデザイン革新の背景には、19世紀前半のビーダーマイヤー様式への回帰がある。手工業の質の高さ、模倣ではない主体的なデザイン、自然モチーフへの親しみは、世紀末のデザイナーたちにとって「近代的な住文化の出発点」として賞賛された。過去の遺産を意識的に継承し、造形の基盤として参照しながら、より時代に即した造形に発展させることで独自の「ウィーン・スタイル」を獲得したのだ。
本展は、こうした「ウィーン・スタイル」のありようを、両時代のデザインや工芸作品はもちろん、グスタフ・クリムトの繊細な素描作品や、当時際立った存在であった女性パトロンや文化人の活動、また女性デザイナーたちの仕事にも注目することで、多面的に紹介する。さらに最終章では、世紀末ウィーンを越えてなお継承されるそのスタイルについて検証する。
NUNOが本展のためにデザインした織物を作品の展示面に使用した、特別な鑑賞空間が皆さんを待っている。
※会期中一部展示替えを行う。
前期 10月4日〜11月11日
後期 11月13日〜12月17日