特別陳列 日本の伝統文化を知る 刀と撥鏤(ばちる)
26/4/18(土)~26/6/14(日)
奈良県立美術館
奈良県立美術館では、令和6年度から“日本の伝統文化を知る”展覧会シリーズとして、所蔵作品を中心に奈良や日本の伝統文化を紹介し、その魅力を発信している。このシリーズの一環として、令和8年度春の特別陳列では刀と撥鏤という2つの分野を取り上げる。
刀の部では、「刀の表情にふれる―奈良県立美術館コレクションから―」と題して、同館所蔵・寄託の刀剣やその文化に関連した作品を中心に展示する。古代からの都であり、数多くの社寺が存在した奈良では、貴族や社寺の需要に応えるために刀剣が作られ、奉納されてきた歴史がある。一方、現代まで伝わった刀剣の保存のほか、刀匠をはじめ、研師などさまざまな人々が刀剣文化を残すための活動を続けている。奈良における刀剣の歴史や作品の魅力を通して、古代から現代まで息づく刀剣の文化を紹介する機会とする。
撥鏤の部では、「天平から宇宙へ―人間国宝・吉田文之の撥鏤―」と題して、撥鏤技法を追究し、創作活動を展開した、撥鏤分野で唯一の人間国宝(重要無形文化財保持者)・吉田文之(1915―2004)を紹介する。撥鏤とは、象牙を赤や紺などに染め、そこに細やかな模様を彫り表す技法のこと。本展では令和6年度に同館に寄贈された吉田文之の作品2点を公開するとともに、館外に所在する作品を展示し、文化財模造から創作までこなした幅広い仕事ぶりを紹介する。染めた象牙に模様を彫り表す撥鏤技法ならではの、繊細な表現を楽しんでほしい。また漆工・木工を中心に彼と近い時代に活躍した奈良の工芸家にも触れ、近現代の奈良の伝統工芸について紹介する。
あわせて、現代での保存の取り組みを専門家により紹介するイベントや、学芸員による美術講座など、さまざまな関連プログラムの開催を通して、現代の生活とは少し距離感のあるように感じる伝統文化が、今もどのように守られ、伝わっているかについて学び、その魅力を改めて感じる機会とする。
伝統文化に広く共通することだが、かつて盛んだった文化や技術を、現代でどう評価し、守り伝えていくかは、未来へ貴重な文化的財産を伝えていく美術館にとっても重要な課題だ。本展では、刀と撥鏤という、奈良で歴史を紡いできたという共通点を持つ2つの分野が、現代にどう息づいているかを通して、地域に根ざした文化の魅力を感じ、その価値が未来へと繋がっていくことを目指す。

