ギンザ・グラフィック・ギャラリー第415回企画展 ダフィ・クーネ:ポスターを構築する ―形をつくる、版をつくる、表現をつくる―
26/7/14(火)~26/8/26(水)
ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
Designed and Letterpress Printed by Dafi Kühne in Switzerland
デジタル、AI隆盛の現代において、15世紀にグーテンベルクにより発明された活版印刷術という、アナログでシンプルな構造をした印刷方法は、デジタルへのカウンターとして、モノを作る人々の間ではここ数年、ポピュラーなポジションを占めつつある。特に欧米諸国をはじめ日本でも、いまだ稼働している活版印刷機は数多く存在する。それらのほとんどは小規模ながら、活版印刷がいまでも多くの人々の心を動かしていることは間違いないようだ。
しかしながら、その活版印刷を使って作る、日本のB全サイズに近い70 x 100cmや、スイス特有サイズの89.5 x 128cmといった、大判ポスターにこだわり続けるのは、世界広しといえど、スイスのダフィ・クーネしかいないのではないだろうか。グラフィックデザイナーであると同時に活版印刷職人でもあるクーネは、スイスアルプスの麓にある自身のスタジオに、総重量40トンにもなる印刷機や活字のほか様々な設備を備え、それらを駆使して、文字通り手を使い、身体を使って、実に複雑で手間のかかる工程を経てポスターを作る。金属活字、木活字、手彫りのリノリウム版といった古くからある素材や技術を使いながら、また時に自分で活字まで鋳造しながら、そこに新しいものも取り入れて進化させることで、クーネ独自の印刷の版を構築していく。さらに、用紙にイメージを定着させる工程にもこだわり、既存の道具をそのまま使うにとどまらず、自分専用の道具を組み立てたり、印刷機に手を加えたりして、従来のものに現代の装置を融合させて、一枚一枚手作業でポスターを刷りあげる。
すなわち、ダフィ・クーネはデザインをする人であるだけではなく、そのデザインが印刷物として仕上がるまでの全工程を構築する設計者でもあるのだ。「Constructing Posters=ポスターを構築する」と銘打った本展は、まさにこのアプローチを追いかけるもの。最終形のポスターはもちろん、その制作のプロセスを手わざによって構築するなかで生成された痕跡も展覧する。そこには匂いと感触と、重量感と軽やかさと、私たちの本来持つはずのさまざまな感覚に溢れた空間が出現する。クーネの作品作りをみていると、人の手による表現の可能性は無限大であると感じることができるのである。

