ルーベンス展―バロックの誕生
18/10/16(火)~19/1/20(日)
国立西洋美術館
ペーテル・パウル・ルーベンスの名は、わが国では名作アニメ『フランダースの犬』によって知られている。そう、主人公ネロ少年が一目見たいと望み続け、最終回にはその前で愛犬パトラッシュとともにこと切れる、聖母大聖堂の祭壇画の作者だ。しかし本場西洋では、ルーベンスの方が圧倒的に有名である。バロックと呼ばれる壮麗華美な美術様式が栄えた17世紀ヨーロッパを代表する画家であり、後に「王の画家にして画家の王」と呼ばれたほどの存在なのだ。本展覧会はこのルーベンスを、イタリアとのかかわりに焦点を当てて紹介するもの。なぜイタリアなのか?イタリアは古代美術やルネサンス美術が栄えた地であり、バロック美術の中心地もローマであった。また、当時はローマがヨーロッパの政治の中心でもあった。フランドルのアントウェルペンで育ったルーベンスは、幼いころから古代文化に親しみ、イタリアに憧れを抱く。そして1600年、ついに彼はイタリアの土を踏み、08年まで滞在してこの地の美術を吸収することで、自らの芸術を大きく発展させたのだ。フランドルに帰郷後も彼はたえずイタリアの美術を参照し、また手紙を書くときはイタリア語を用いるなど、心のなかにイタリアを保ち続けた。一方で、若い頃からきわめて有能だったルーベンスは、イタリアの若い画家たちに多大な影響を与え、バロック美術の発展に拍車をかけたと考えられる。ジョヴァンニ・ランフランコやジャン・ロレンツォ・ベルニーニ、ピエトロ・ダ・コルトーナといった盛期バロックの立役者となった芸術家たちは、ルーベンス作品との出会いによって表現を羽ばたかせた可能性がある。また17世紀末のルカ・ジョルダーノらは、ルーベンスから多くの刺激を受けた。本展は、ルーベンスの作品を、古代彫刻や彼に先行する16世紀のイタリアの芸術家の作品、そして同時代以降のイタリア・バロックの芸術家たちの作品とともに展示。ルーベンスがイタリアから何を学んだのかを見せるとともに、彼とイタリア・バロック美術との関係を解きほぐし、明らかにすることを目指す。これまでわが国では何度かルーベンス展が開催されてきたが、この画家とイタリアとの双方向の影響関係に焦点を当てた展覧会は、初の試みとなる。ルーベンスとイタリア・バロック美術という、西洋美術のふたつのハイライトに対する新たな眼差しのあり方を、日本の観衆に与える最良の機会となるだろう。
開催情報
- ジャンル
- 美術館
9:30〜17:30(入館は閉館の30分前まで)、月曜日休館、(ただし12月24日、1月14日は開館、12月28日〜1月1日、1月15日は休館)
※金曜、土曜は20:00まで(ただし11月17日は17:30分まで)
料金
前売一般1400円、大学生1000円、高校生600円、当日一般1600円、大学生1200円、高校生800円
※中学生以下は無料