ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ

本展は、芸術からデザインそして児童教育に至るまで独創的な活動を繰り広げたブルーノ・ムナーリ（1907-1998）の、はてしない活動を体験するための展覧会。ムナーリは、幼少期から美術やデザインに関心を持ち、19歳の時に当時のイタリアを席巻していた前衛美術運動の未来派に参画し、大きな影響を受けた。一方で雑誌の編集や挿絵などの仕事を通じて、デザインへの関心と造詣も大いに深めていく。第二次世界大戦後のムナーリはそうした経験を活かし、折りたたんで持ち運び可能な彫刻《旅行のための彫刻》や、コピー機を使いながらもオリジナルの平面作品《オリジナルのゼログラフィーア》といったかつてない美術作品、そして極めてシンプルであると同時に用の美を備えた照明や家具などを多数発表し、国内外で高く評価された。くわえて、ムナーリは子ども向けの造形教育にも大いに興味を示し、遊具をはじめ、沢山のしかけが込められた絵本などを発表している。さらには子どものためのワークショップも考案し、それらは身の回りの慣れ親しんだ素材から創造力を飛躍させる創作活動として、今日でも全く色褪せることがない。本展は、1985年にこどもの城（渋谷）における回顧展の際に実演されたワークショップを「ムナーリを読み解く鍵」として、画家、彫刻家、グラフィック・デザイナー、インダストリアル・デザイナー、発明家、著述家、子どもといっしょに遊ぶ人――あらゆる肩書きを持つ稀代の表現者ブルーノ・ムナーリの、全生涯にわたる作品約320点を紹介する日本最大の回顧展。約150点は日本初公開となる作品で、未来派に関わっていた時代の作品、そして晩年の絵本原画など、これまで日本であまり知られてこなかったムナーリの一面を教えてくれるだろう。また会期中は、ムナーリの絵本や遊具を手に取ることができる場を設け、ムナーリ自身が考案したワークショップを開催することで、言葉を超えるムナーリの表現や思想に触れることができる機会も。