富田 正宣 なぞるノロマ
18/10/21(日)~18/11/18(日)
KAYOKOYUKI

富田 正宣 MASANORI TOMITA なぞるノロマ, 2018, oil on canvas, 72.7 x 60.6 cm
10月21日よりKAYOKOYUKIでは2回目となる、富田正宣による個展「なぞるノロマ」を開催する。一見抽象絵画のように見える富田の絵画は、身の回りの些細なモチーフや、風景を描いたスケッチを出発点にしている。富田はそれらを絵の具で描写していく中で、その都度の感覚を画面に重ねていく。例えば、制作の過程で頻繁に行われる白い塗りつぶしは、ある瞬間に意識から抜け落ちたブランク=空白のようなものであると富田は話す。それは具体的な図像を描いていなかったとしても、それぞれの描画が富田の「知覚」をなぞるものであることを示している。 こうして、釉薬のような色彩をもつ、鉱脈のような画面が姿を現す。まとまりを失った、細部に対する知覚だけが画面に満ちているかのようである。 絵の具がこびり付き凝固した画面は、同時に蜃気楼のようにゆらめき、一つの像を結ぶことは無い。何かが現れては閃光となり、よろめく枝、大地の裂け目、水面を波たてる風となって震えている。アトリエでルービックスネーク(*1)を動かしながら、それはゆらめき、別の像へと移り変わり、ヨレヨレと消えていく知覚に似ていると富田は言った。凝視することでまとまりがバラバラに解けていってしまうこと。知覚がひとりでに歩きだすその様を絵画として描き留めること。それはある瞬間を引き伸ばした、スローモーション=鈍間(ノロマ)の出来事に他ならない。
※24個の直角二等辺三角柱の形をしたピースが連なった玩具。手で捻り回すことで、直線、ヘビ、犬、カプセル、長方形のような形にすることができる。