ピーター・ソール / エリック・パーカー
19/6/1(土)~19/7/6(土)
NANZUKA
Peter Saulの初の個展は、1961年にシュールレアリストのマッタ(Roberto Matta)の紹介で、シカゴのAllan FrumkinGallery にて開催された。現在Saulは、1958年にMAD誌を参考に描いたドナルドダックやミッキーマウスを引用した漫画的なスタイルの作品の再発見によって、最初期のポップアート運動に関係するアーティストとして認識されているが、そのカラフルで独特の作風は個人的な関心と強迫観念に忠実であることから生まれた。Saulは、しばしば歴史的な名画のサンプリングや政治家の肖像、美術史にまつわる逸話などを題材とした作品を制作している。その作品は、多くの場合、アーティスト個人のアイロニカルなユーモア、グロテスクとされて卑下されているものへの愛情から生まれた産物であり、その半世紀以上に及ぶ創作活動において、自身は美術の主義や潮流、権威からは一貫して距離を取り続けてきた。近年、Saulの作品の重要性が再認識されるに至り、2010年に、ようやくアメリカ芸術芸術アカデミーに選出された。また、その作品は、シカゴ美術館、ポンピドー美術館、パリ、ディ・ローザ、ロサンゼルス郡美術館、メトロポリタン美術館、ストックホルム美術館、ルートヴィヒ美術館、ケルン美術館、ニューヨーク近代美術館、ステデリック美術館、ホイットニー美術館、エール大学美術館、カーネギー美術館といった世界中の主要な公共コレクションに収蔵されている。
Peter Saulは、本展のために完成させた新作のペインティング「“Van Gogh Cuts Off His Ear」について、ユーモアを込めて次のように語っている。
「ついに、ゴッホの耳が私の作品の主題として降臨したことを、私はとても嬉しく思っている。モナリザに次いで美術史で最も有名な出来事であるにも関わらず、85歳になるまでそれは起こらなかった。もし運が良ければ、もう何度かこの主題について取り組むことができるかもしれない、と考えている。なぜなら、彼は、私の想像の中で ”再生”したばかりだから。」 “I was also very pleased thatVan Gogh’s ear finally occurred to me as a subject - it’s the second most famous thing in art,right after the Mona Lisa and still didn’t occur to me until almost age 85 . If I’m lucky I caneventually do the subject a couple more times . He’s just got to “regrow” in my imagination.”
エリック・パーカーは1968年ドイツのシュトゥットガルトで生まれ、現在ニューヨークを拠点に活動している作家である。パーカーは、自身の作品のルーツとして、例えばMAD magazineなどのアンダーグラウンドコミック、風刺イラスト、グラフィティなどへの関心を語っているが、その最も重要な影響はテキサス大学オースティン校で教えを受けていたPeter Saulの存在にある。Parkerの作品にある、自然と計算された鮮やかな色彩と多様なモチーフの混沌とした組み合わせからなる独特で幻想的な肖像画や風景画が生み出された背景には、ルールや潮流に縛られる事なく、自身の内面を鋭く深く考察することで生まれる創造性に忠実であろうとするSaulの教えが読み取れる。