日本の素朴絵 ― ゆるい、かわいい、たのしい美術 ―
19/7/6(土)~19/9/1(日)
三井記念美術館
つきしま絵巻 2巻 室町時代・16世紀 日本民藝館蔵
日本では昔から、様々な形式の作品に緩やかなタッチでおおらかに描かれた絵が残っている。それらは「うまい・へた」の物差しでははかることのできない、なんとも不思議な味わいを持っており、見る人を虜にする。
本展覧会では、ゆるくとぼけた味わいのある表現で描かれたこのような絵画を「素朴絵(そぼくえ)」と表現。しかし、西洋絵画の「素朴派」とは異なり、「リアリズムを目指す表現の人為的・技巧主義的なものを超越した」という意味を含んでいる。 素朴絵は生活の中で様々なものに登場。絵巻、絵本、掛軸や屏風、時には嗜好品として親しまれ、時には庶民が手の届かない「うまい」作品の代替として、季節行事に使う道具に用いられ、仏画として信仰の対象にもなってきた。また、禅僧などの高名な人物によって描かれた素朴絵も注目される。
このように過程をたどると、素朴絵は知識人や富裕層だけでなく、どの時代でも「庶民」が主体となって描き継がれ、残されてきた芸術といえる。
本展覧会では、これまで本格的に取り上げられることのなかった、様々な時代・形式の素朴絵を紹介することで、名人の技巧や由緒ある伝来に唸るだけではない、新しい美術の楽しみ方を提供。また、仏像や神像などの彫刻にも素朴なものがあり、これらも交えて素朴な美の広がりもうかがうことができる。