平木コレクション 木版画で旅するにっぽんの風景 ―吉田博と川瀬巴水を中心に―
19/7/13(土)~19/9/8(日)
小杉放菴記念日光美術館
吉田博《陽明門》 平木コレクション
雄大な山々、果てしない海、澄んだ川や湖、そして自然と調和する寺社。日本の美しい風景は、今もなお人々を魅了している。
古くから愛された日本の風景だが、大正から昭和初期にかけて、日本人の風景観は大きく変わった。まず、これまで「信仰」の対象であった山は、西洋から登山文化が移入されたことにより、「美」の対象となったほか、1927(昭和2)年には、「日本新八景」が投票によって選出されるなど、新しい時代にふさわしい風景美が人々に求められた。また、1923(大正12)年の関東大震災から復興した東京には、新たにコンクリート建築が建ち並び、街並みは大きく変わった。
さらにこの時期、衰退の危機に瀕した木版画界に、二つの新たな動きが起こる。まず、版元・渡邊庄三郎は、伝統的な浮世絵版画の技術を活かしつつも、絵師に気鋭の画家を起用することにより、現代的エッセンスを加えた「新版画」を生み出した。吉田博と川瀬巴水は渡邊のもとで絵師を務め、優れた風景版画を世に送り出した。もう一つ挙げられるのは、「創作版画」だ。下絵・彫り・摺りを全て一人の画家が行うのが特徴で、画家の個性が存分に表われている。
本展は、平木浮世絵財団が所蔵する吉田博と川瀬巴水の新版画を中心に、多くの画家たちが手がけた創作版画を一堂に会し、「山・水・寺社・東京」の四つの視点から、日本の風景美と大正から昭和初期にかけての木版画の新たな動きを追う。